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2017年12月3日日曜日

FAIRLYSOCIALPRESS presents [BOYS DON`T CRY 5]@初台WALL

たまにあることだけど12月2日(土)のライブイベントのかぶり方と行ったら豪華という水準を高く通り越し、もはや残酷だった。スケートパークで轟音に浸るというのも一興だし、killieの凄まじいライブをもう一度みたいというのもある。しかし自分は何回かライブを見たSaigan Terrorというバンドがよく消化できなかったのでその音源欲しさに初台に行くことにした。この日はSaigan TerrorとFight It Outのスプリット7インチのレコ発なのだ。日本のヒップホップのアーティストも名を連ねているので、ヒップホップのライブも見てみたいな、という気持ちもあったので。
ライブハウスにつくとすでにもうかなりの客が入っていてかなりキュウキュウだった。WALLは入り口に「〇〇(多分バンドなのだろう)の☓☓とヴィジュアル系出入り禁止」みたいな張り紙がしてあり、私はどうみてもヴィジュアル系ではないがなんというかハードコアな雰囲気がしてちょっと怖いと思う。(実際怖めの人が多かったし、私のようなオタクっぽい人がいなくてさらに怖いというのがあります。)
ステージの前が不気味に人がいなくて不穏であり、これを見るとハードコアのライブに来てしまった…という感じがする。

Super Structure
一発目はSuper Structure。私は何回か見ているけど見るたびに好きになる、このバンドに関しては。この日もかなりとんがった音を出していた。後のFriendship、Fight It Outはとにかくパワーと音量がでかい。Super Structureも音はでかいのだが曲の方はもっとカオティックだ。別にプログレッシヴだ、カオティック・ハードコアだというのではないが、もっと混沌としている。変な言い方だがどの楽器もフルスピードで鳴らしまくった音が重なると奇跡的に曲に聞こえる、みたいな雰囲気がある。この日共演するバンドと比べると音はもっとざらつき、音の数は多い。パワーバイオレンスといっても流行とは一線を画す内容でもっとラフだ。例えば地獄のようなスラッジパートがあるわけでもない。甲高い、と評しても良いボーカルが激しく細かく忙しないバンドアンサンブルにさらにカオス感を注入している。バンド名は(あとから知ったのだけど)USのニュースクール・ハードコアバンドFall Silentの2ndアルバムからとっていることもあり、ルーツとなっているのがそういった音楽なので、パワーバイオレンスたろうとするパワーバイオレンスバンドとは明確に違う音に仕上がっているのではなかろうか。まさしく鉄砲玉、それも恐ろしく命中率が悪く乱射しまくるような凶悪なバンドで、ラストにやった「Despair」(だと思う。唯一気軽に聴けるこのバンドの音源でもある。)には中盤にギターの高音を響かせる地獄のようなモッシュパートがある。非常に格好いいのだ。私がお金持ちだったら最高の環境で音源を録音してもらうのにな、といつも思う。(音源出してほしいです。)

Friendship
続いてはFriendship。今年アルバムが出てからはみたっけな?結構見る回数が多いのは色んなイベントに招かれているからだろう。全くフレンドリーではないが、普通の意味とは違うキャッチーさがあって、それがわかりやすく”ハードコア”なので少しジャンルをまたぐようなイベントに引っ張りだこになるのかな、と思う。
Super Structureの直後ということもあって両者の違いが明確になる。こちらも非常にやかましいが音の数はぐっと減る。数というか密度だろうか。とにかくキチンと音を抜くことで重苦しいのに閉塞感から適度に脱しており、過密のコントロールが上手いのか、その結果ある意味ハードコアの枠組みだけ残したみたいな音楽になるのだが、それが非常に頑強で非常に暴れられる。初めてFriendshipを見た人でも絶対すぐに「のれ」ると思う。相変わらず一切MCはなく、ボーカルはほぼフロアに降りて歌う。毎回すごいと思うのは一切一体感は演出しない。シンガロングパートはもちろんないし、フロアに降りるボーカルも急に回りの客に向けてタックルを仕掛けてくる。みんなで楽しくモッシュ!って感じでもない。曲もそうだし、こういった姿勢の作り方というのも非常によく考えられている。「策士だね〜」というのではなくて、茨の道を我が物顔で進むな〜という感心の気持ちのほうが勝ってきた。若手、というのだけでなく、例えば私のような門外漢にとってのハードコアのゲートウェイになっていてそういった意味でもすごいバンドだ。

CENJU from DMC
続いては日本は東京のラッパー。実はヒップホップのライブを見るのは初めてかな?結構楽しみにしていた。CENJUはがっしりとした高身長と体躯に恵まれた大男でかなり迫力がある。低音のラップパートを同期させてそこにラップを被せていくように進む。これは合唱で言う下のパートってことだろうか。ヒップホップのライブは(他のラッパーは違うかもだけど)こうなんだな!と面白かった。強面なのは外見だけでなく、かなりハードな内容を噛み砕いた言葉でリリックにしたためるアーティストらしく、(ストリートのなんたるかを知らない私が言うのもちょっとおかしいのだけど)”ストリート感”のあるラップを披露する。つまりリアルでアンダーグラウンドな世界観である。悪いのだ。音の洪水を通り越し、もはや壁(WALLというライブハウスの名前は非常に格好いいと思う。)になっているハードコアとは全然ちがう音の数だ。とにかくシンプルに限界まで削ぎ落としたトラックが鋭い。そして鋭いだけでなく、煙たい、ダルいを表現する。これが良い。よくヒップホップのラップでは「スキル」という言葉が浮き彫りになるが、一人でステージに立つ(そうでない場合も多いが基本的にラップをするときは一人だ。)ラッパーは露骨にその出来にごまかしが効かない。タフな役回りだ。(それ故かっこいい。)CENJUは韻を踏みつつ結構フリーに煽ってくるタイプで客席を大いに沸かせていた。見た目に反して声は少し甘い感じがあるのが個人的には良かった。

Fight It Out
危ないことになるから後ろに下がったんだけど結局ダメでした…。
続いては横浜シティのパワーバイオレンスバンドFight it Out。この日の主役の片方でもある。バイオレンスを音にしたらこうなりました、というバンドで今年発売された3rdアルバムは私のようなオタクも聞いていると何か自分が強くなったように錯覚するようなブルータルなアルバムだった。ライブはモッシュ天国(普通の基準で考えればなぜ金を払ってそんなことを?と思わずにはいられない地獄)になるのは何回か見てことがあるので私は後ろに下がった 。WALLは後ろに長いライブハウスなのだが結果から言うとこの長さを活かした縦長のピットができて、だいたいほぼほぼ安全地帯がなし。全員が当事者に。
音の作り方はFriendshipと似ているモダンで金属的で良い感じに音の数を落としたものだが、こちらはもうモッシュに特化していると言っても良いかもしれない音で、Friendshipのような黒いヴェールのようなものもない粗野な音像。激速と激遅(げきおそ)を行ったり来たりするくせに神経症的な痙攣という病的な感じではなく、暴力性の発露のような運動性が特徴。そういった意味では健康的なのだろうか。あっという間にフロアにヘイトが感染して凶悪なモッシュパートが出来上がる。ボーカルの人はほぼフロアにいたのはFriendshipと同様だが、こちらはシンプルながらシンガロングできるパートがあったりしてモッシュピットに一定の法則、というよりは一つの指向性があったように思えた。腕を振り回す人、足を振り回す人、タックルをかます人、マイクを取りに(一緒に歌おうとしてね)行く人、サーフする人(カオスなのであまり長く上に居続けられない)、もみくちゃで後ろの方にもピットの動きが人を通して伝わってくる。ライブと音源の違い、というの一つのテーマに対する回答を明確にFight It Outが示し、そしてライブ(ともするとライブのみ)がリアルである、というのもうべなるかな、という状況でした。

ILL-TEE
つづいてはILL-TEE。DJの他にもう一人ラッパー、多分MASS-HOLEという人かな?がステージに立つ三人体制。トラックの内外とわず自由にやるCENJUに比べるとこの二人のラッパーはかなりかっちりタイトにトラックにリリックをはめ込んでくる。小節頭に言葉の喋りだしが噛み合ってこれはこれで非常に格好いい。やはりリアルな感じのするリリックだったと思うけど(固くて低い声質もあってCENJUに比べるとやや聞き取りにくい場面もあった。)、もう少し言葉遊びと陰陽の陽にあたるようなリリックもあってヒップホップの楽しさ、というのがわかりやすくそして最大限に発表されるようなステージングだった。ある意味淡々と韻を踏んでいくスタイルではじめは聞き惚れるような感じなのだけど、トラックとのかみ合わせが非常に良くてどんどん気持ちよくなってくる。フックのようなものもあってわかりやすい。ハードコアという明確に違うフィールドで徐々にヒップホップの楽しさ、というのがじわじわ浸透してくるようなライブでやはりもう最終的にはかなり前の方は盛り上がっていた。トラックがシンプルでビートが強いので実は乗りやすい、というのはあると思う。真面目と言っていいほどしっかりしていて格好良かった。

Saigan Terror
続いては東京高円寺のハードコアバンドで結成は1997年(素晴らしいインタビューより)。クロスオーバー、つまりこの場合はハードコアに刻みまくるスラッシュ・メタルをかけ合わせた音楽で私は何回かライブを見たかな?格好いいんだけど言語化するのが難しいな(音源もいまでは廃盤状態なので。)と思っていた。本日はスプリット発売の主役で堂々のトリ。
改めてライブを見るとこんなに重かったっけ?となったブラストビートが冴えまくり、ブラストビートに乗って突っ走るさまはもはやTerrorizerでは!?と思うくらい凄まじかった。よくよく聴いてみるとなるほど確かにグラインドコアというには音が良い感じに抜けていて、より疾走感が強調されているけどそれでも軽薄ということはまったくない。ブラストビートにすべてを掛ける、という音楽性でもなく、シンプルな2ビートが土台を作りそこに凝ってはいるが決してスピード感を減じさせない”刻み”のスラッシュリフが乗る。この日ドラムとともにすごいなと思ったのはベースで、おそらくエフェクターを噛ませて幾つかの音をコントロールしているのだが、かなり硬質で刻みのリフと相対するようなガーンとアタックしたあとミュートしない弾き方が、硬い地面に金属が跳ね返るような強烈さで非常に格好良かった。この日前の3つのバンドは共通点があってそれはとにかく突っ走るときは突っ走る、ということだったが、Saigan Terrorは速度はあってもミュートを用いたリフにはつんのめるような独特の粘りのあるコシが生まれているところが明確に異なる。つまり何が言いたいかというと他のバンドにはない「グルーヴィ」さが生まれていた。これはとにかくピットに反映されていて、Fight It Outの殺伐としてたピットと比べると同じことをやってい人はいるのだけど、もう少し多様性があり、ステップを踏む人やそれこそ女性の人もいた。そして沢山の人が笑顔だったのが一番印象的だった。危なくないわけではないけど、それを圧倒的に上回る楽しさ。ギタリストの方のキャラクターやMCもそんな雰囲気を作り出していくことに大いに寄与していると思う。 20年の貫禄がバチバチ発揮されていた唯一無二のサウンドだった。

もちろんスプリット音源(とZine)を購入してほうほうの体で帰宅。終始激しかったけど楽しかった。ライブを見に行く醍醐味に知らないバンドを知れる、というのがあると思うがそういった意味ではハードコアとヒップホップとクロスオーバーなイベントで知らないジャンルを垣間見れてよかった。

2017年7月8日土曜日

FRIENDSHIP/Hatred

日本は千葉のハードコア/パワーバイオレンスバンドの1stアルバム。
2017年にDaymare Recordingsからリリースされた。
「友情」という名のバンドだが、びっしりと刺青の入ったメンバー(おそらくまだとても若い)がタワーのように積み上げたオレンジのアンプから大音量で凶悪なハードコアを鳴らす。活動開始がいつなのかはわからないが、その音の凶悪さはかなり早い段階からSNSなどで話題になり、いくつかの音源も世界のいろんなレーベルからいろんな形でリリースされている。そんなバンドの今回満を辞しての1st。

真っ黒いハードコア。漆黒とは音の凶悪さ、重さ、デカさなどが挙げられるが実はハードコアで漆黒を演出するのは難しいのではと思う。激しい音楽だとなぜだか知らないが大抵暗くなるので、この手の界隈ハードコアだろうがメタルだろうが黒いバンドばかり。しかしハードコアで黒くなろうとすると余計な要素を増やしてしまうので、ピュアなハードコアからは遠くなってしまう。メタルならそれでも良いだろうが、なるべく飾らないことという一つの信条(誇り、ルール、美学、強制されていない分かっこよく説得力がある)があるハードコアでその精神を保ちつつ”黒く”なるということは難しいのではと思うわけだ。(この問題への一つの解決策としてノイズの要素を足すバンドが昨今一つの潮流になっている。)ところがこのバンドはどう聞いてもハードコアなのに確かに真っ黒である。
積み上げられたアンプの異様さに目を奪われるし、出している音は徹底的に低く、そして音量が大きい。しかしやっている曲は徹底的にぶっきらぼうでシンプル。シンガロングやメロディアスさは皆無。かと言ってわかりやすいストップ&ゴーがあるわけでもないし、踊れるモッシュパートが提示されているわけでもない。フィードバックノイズが強調されたハードコアはとにかく無愛想。非人間的と言っても良い。わかりやすい感情、共感が一切排除されている。攻撃力に全振りしたステータスはしかしピュアなハードコアでその魅力を遺憾無く発揮している。疾走するパートの突き抜けるような爽快感、それをミュートで強制的に停止させて、這い回るような低速パートに突入するカタルシス。ツボをきちんと押さえつつ、有り余る膂力(つまり音のデカさ)でハードコアの魅力は倍増している。
精力的にライブ活動を行い色々なイベントにその名を連ねている。私も何回か見たことがあるが、このバンドはドラムがすごい。シンプルなセットだがどのパーツも非常にでかい。これをでかい音で正確に叩く。色々なドラマーがあり、色々なプレイスタイルがあると思うし、すげーと思ったことは数多くある。FRIENDSHIPのドラムは派手に様々なフレーズを叩くわけではないし、むしろシンプルだがそれが異常に正確に続いていく。考えて見てほしいがもし絵を描くなら真円を描くのはすごい難しい。同様にドラムでは同じリズムで正確に叩き続けるのが一番難しいのでは(私はドラム叩けないから違うかもだけど…。)。それをでかい音で軽機関銃の掃射のように続けていくドラミングは本当かっこいい。この音源でもそんなドラムはきっちりその魅力を発揮しているので嬉しい。

思うにこのバンドのかっこよさの一つは寡黙さだ。饒舌な音楽をやっているがその凶悪な曲の中をのぞいてみると厳格にハードコアだ。余計なことは喋らない。MC一切しないし、SNSを見てもフレンドリーさはない。ただブランディングにもこだわりがあり、美学が遺憾なく発揮されたマーチャンダイズ(私もいくつか買っている。)一つとって見ても、結構きちんと考えてセルフプロデュースをしていると思う。結構したたかであると思う。もちろん中身が伴わないとハッタリになってしまうので、それを含めて高い注目度にバシッと叩きつけるのがこのアルバム。素晴らしい出来。激しい音が聞きたい人は是非どうぞ。おすすめ。

2017年7月1日土曜日

SUMAC Japan Tour 2017@小岩Bush Bash

アメリカとカナダの混成バンドSUMACが来日するという。
SUMACは元ISISでHydra Head Recordsを運営するAaron Tuner、BaptistsのNick Yacyshyn、Russian Circlesで元BotchのBrian Cookによるスラッジメタルバンド。輝かしい歴史を持ち、知名度の高い3人が結成したスーパーグループと言える。昨年リリースしたアルバム「What One Becomes」は日本でも非常に好調だったのではないだろうか。私が普段目にしているレビューサイトやtwitterでもその評価は概ね好調(というか絶賛)だった。私もおっとり刀で購入し、これはすげえなと思ったもの。ただ感想を書く際に思ったのは何かに似てそうで似てないから結構描きにくい。重量級のスラッジバンドなら珍しくもなかろう。もはや一つのやり方として確立すらされていると思うが、このバンドはなんかちょっとこう違和感があるな、と思っていた。いわばまだ掴みきれないな、という消化不良を抱えていたわけで、来日と聞いてこれをひょっとしたら解明できるかも、と。

ツアー初日は小岩。Bush Bashは小さめのライブハウスである。平日の小岩はすでに雨も上がっていた。私が会場に着いたのは20時過ぎ。この日はFriendshipと黒電話666が日本からは出演。特に一人ハーシュノイズユニット黒電話666に関しては今年リリースした音源が非常にカッコよかったのでお目当の一つだったのだが、会場に着くともう本当に終盤のところしか見れなかった。

黒電話666
複雑に絡み合った様々なノイズが一つの太く巨大な奔流を形作り、生き物のように蠢いている。先般の音源ではただ垂れ流されるのではなく、きちんと曲にメリハリをつけた展開が印象的だったが、この日もそれは健在でうるささの中にもテンションがあり、私が最後耳にした終盤では離陸前のジェット機のように轟音がその頭をもたげ、テンションはどんどん張り詰めていき、不穏さと音量は次第にその勢力を強めていっていた。クライマックスではガラリと音の様相を変え(これはノイズでやるのは相当困難なことだろうと思うが、バッチリはまっていた)、一層ハードで攻撃的なノイズ地獄に展開していた。金属質の暗黒の太陽のように集まった人々をそのギラギラした光で強烈に照らしてる。ため息の出るようなノイズ。
これはきちんと全部また見なければならない。

SUMAC
続いてもうとりのSUMACである。ちなみにこの時点でもうひとはぎゅうぎゅう詰め。上背のあるメンバー3人は寡黙な感じでステージへ。Bush Bashはステージとフロアが同じ高さである。(そのため背が低い人はフロアの後ろの方だとよく見えないってことにもなるんだけど。)迫力が半端ない。黙々とセッティングを始めるのだが、ほとんどこの時点では音を出さない。転換はとてもスムーズ。黒電話666がバンド編成でないこともあるだろうが、それにしても機材と音のチェックは本当にあまり時間をかけていなかった。来日しているバンドの方々はニコニコされていることも多いが、SUMACの場合はドラムのNickは終始柔和な表情だった(メガネもよく似合う人でとてもハードコアバンドのメンバーとは思えない、タトゥーはあるけど)のに対し、AaronとBrianは別に無愛想というわけではないが、表情は読み取りにくく淡々とした印象。さっさとセッティングを終えてネック(金属でできているみたいに見えた)を両手で抱えて静かに待つBrian Cookの姿はその体躯もあって印象的だった。これからえらいものが見れるぞ…とテンションが上がる。
SUMACというとどうしても轟音という考えで思考が塗りつぶされているのだが、まずこれは間違いだったと思う。ひたすら低音に特化してただただすりつぶしていくようなスラッジとは明らかに異なる。これだけは覚えていただきたい。(私の印象です。)確かにミニマムな編成で高音を出せるはずのギターはほとんどそれらの音を出さないが、実際はただ低音をずらずら引いているわけではない。最小限のバンドなので役割は決まっていて、Aaronは低音以外にも色々な音やリフを駆使している。伸びやかなリフ、キャラキャラした音、ワウ(といっていいのか)を異常に噛ませためちゃくちゃ分厚いソロなど。ボーカルの登場頻度は低く、これは楽器の一つに過ぎない。まずはこの多彩さに驚くが、次に驚くのが曲である。曲!これが曲者だったのだとわかった。(気がしている、今は。)SUMACの曲は異常に複雑なのだ。反復の要素があるのだが、リフを中心にした短い(といっても長尺のスラッジをやるのでそれなりにはある)パックを単位として、それを次々に転換していく。だから耳で聞いたものに頭が追いつかないのだ!記憶と予想で次はこれだな〜と乗るわけだけど、SUMACはもう次のフェーズに写って全く違うことをしているのだもの!!もちろんアルバムの曲を今聞いてもそうなのだけど、強烈にライブでこれが意識されて、私は一人で「うお〜〜〜」とめっちゃ変な感じにテンションが上がってしまっていた。
この日は曲をやる、インプロゼーションめいたセッション、そこからスムーズに次の曲へ、という流れでこれでSUMACというバンドが少しわかる。ここでこのバンドの変幻自在(つまり尋常ではない引き出しの多さ)が明らかになり、素晴らしくヘヴィーなフリージャズのような面が強調されていた。Aaronのキャラキャラしたギターは後期khanateのようだった。かと思えば多彩なエフェクトでほぼハーシュノイズのような音も出していた。
驚くのはNickのドラミングで、この人が一番へんで一番すごいかも。前述の通り展開が変わる中でもこの人はどんどん叩き方を変えてくる。最近ハードコアを聴いていてテンポチェンジがただ速度の変化だろ〜?とくらいにたかをくくっていたがとんでもない。この人何者なの。リズムが非常にかっちりとしているのに変わり過ぎてこちらがリズムを取れない!この人のドラムに注目しているとただただすごくてすごく楽しい。
SUMACはそういった意味だと非常にプログレッシブだが、サイケデリックはない。というのも反復の要素が非常に特徴的で少ないし、音が明確に正確すぎて恍惚としたサイケデリアが形成されないのだ。だって強靭な筋肉とそこから生まれる正確性で曲が形成されているのだもの。知っての通り筋肉は重く飛ぶどころか水にも浮かびにくい。いわば非常ん現実的であり、聞き手に夢を見ることを許さない非情な音楽なのだ。こう書くと頭でっかちな音楽に思われそうだが、実際には違う。複雑な拍にわざと穴を設けてメリハリをつけているし(これは拍を変えているのか、拍に穴を開けているかどっちか、あるいは両方?)、音楽の音(リフ)と構成という根源的な質の高さ、一転して激情を迸らせるAaron、対照的に淡々と職人のように刻んでくるBrian、Nickの超人的ドラムと、聞きどころと、さらにライブなら見所満載で楽しいことこの上ない。

MC一切なしのライブが終わると会場は鳴り止まない拍手で包まれた。
すごかったな〜。私的にはSUMACというすごいバンドのすごさがちょっとわかったかなと思って非常に楽しかった。
来日ツアーはこれからなので迷っている人は是非足を運んで見て下さい。

2017年6月5日月曜日

Granule Presents AURORA@渋谷Ruby Room

解散したBOMBORIのメンバーらによって結成された新バンドGranule。2017年に音源「AURORA」をリリース。それに合わせていくつかのライブを主催。その中の1日に行ってきた。音源が良かったGranuleを見たいというのもちろんだけどDooomboysが個人的にとても見たかったのが決め手。
場所は渋谷Ruby Room。最近よく聞くライブハウスだが行くのは初めて。渋谷の道玄坂の手前?らへん。ライブハウス(もうちょっとこうイベントスペースという雰囲気でもあった)にしては珍しく2階にある。扉を開けるとどちらかというと狭いくらいのライブハウスだと思うんだけど、奥の壁が斜めになって屋根裏感がある。薄暗い照明や凝った内装も秘密基地めいていて狭いことを逆手に取った良い雰囲気の場所。なんとなく女性のお客さんが多かったのは場所のせいだろうか?

Friendship
一番手は待望の1stフルがいよいよ発売間近のFriendship。フロアにアンプが積み上がっている。ライブハウスが狭いのでいつもより密度がびっしりでアンプのすぐ前がドラムセット。ちなみにこの時点でもう結構人が入っている。Sunn O)))を思わせる低音が売りのバンドなのだが、この日はヒュンヒュン不安定に飛び回る高音フィードバックノイズが強め。多分新作からの楽曲を中心にしたセットだと思うが、曲中にもフィードバックを活かしていてちょっとした新機軸ではなかろうか。強烈な低音をソリッドかつ正確なドラムがビシッと引き締めている。ドラミングについても新曲はフィルインが多めでミニマルで非常にモッシーな曲をドラムが車輪になって重量感をそのままに回している感じ。どのパートもかっこいいが個人的にはやはりドラムに目と耳が行きがち。ただこの日ボーカルも鬼気迫る勢いでかっこよかった。
この日アルバムを先行発売していたのだが、特典付きのを予約していたので泣く泣くスルー。はよ聞きたいものです。
アンプの壁を除けると奥にステージがあったのか〜とちょっとびっくりした。多分アンプが多すぎてステージに乗らないからステージでやったんだね。

HIMO
続いては北新宿ハードコア、HIMO。ここからバンドはステージに乗る。名前は知っているが見るのも聞くのも初めてなので楽しみだった。メンバー4人のうち3人が坊主頭で、ちょっと他にない見た目のインパクトがある。かなり強面なので一体どんな音なのだろうか、きっとめっちゃ無愛想な日本的なハードコアに違いないと思っていたのだが、果たして実際は全然違って良い意味で期待を裏切られた。低音に偏向しない、非常に生々しい音を主体にフリーキーな楽曲。パワーバイオレンスとは全く異なるストップアンドゴー、というよりは休符、休止を強烈に意識した(恐らく、というのも音源は聞いたことないので)短い曲。ボーカルは勢いがあるが、節をつけて歌うというよりは言葉を早口にどんどんまくし立て、吐き出していくのでラップに聞こえる。曲が短く、反復やわかりやすい王道な構造性も希薄なので掴み所がない。爪弾くように引くギターは突然ギターとは思えない強烈なエフェクトをかけて引きまくったりする。パッと思い浮かんだのは54-71だが、シャウトも入るし曲がフリーキーだからむしろへんな例えだが、あぶらだこがRage Against the Maschineをやったかのようだ。つまりめちゃかっこいい。唯一無二の音であること自体難しいと思うが、それがかっこいいというのは奇跡めいている。見た目に反して熱く、血の通ったバンドだった。いい意味で本当に期待が裏切られた。そんな熱量がストレートに表れているMCも良かった。(ちなみにこの日まともなMCをやったのはHIMOだけ。)
音源を買ったが、メンバーの方はとても人の良い方だった。

Dooomboys
続いてはDooomboys。この日一番異色のヒップホップユニット。Wrenchなどで活躍するドラマーMurochinさんと、Think TankのメンバーでもあるBkack SmokerのBabaさんの二人組。電子ドラムを追加したドラムキットに、恐らくサンプラーなどを配線しまくった電子機器をBabaさんが操作しながらラップする。
Murochinさんがドラムを叩き、その上に上物を乗せてラップをしていく。この上物はジャズやダブ、ノイズをサンプリングし、音を加工し、ドロドロに溶かしたものを即興で再構築していくような技で再生というよりは再構成、生成されていく。音源に入っている曲もやったが、やはり生で再現するともっと生々しく少し様子が違う。ラップはエコーがかけられてすでに煙たい。電子機器でドラム音も入れたりするから、生のドラムとダブルになってそういった意味ではかなりテクノっぽい要素もある。よくもまあこう言葉が淀みなく流れ出ていくものだと感心する。非常に特徴的な声質だが、ライブで聴くとなめらかでかっこよかった。目配せで曲を制御するその様は即興性が強く、ゆえに二人のメンバーの間にはバチバチ火花が散るよう。Murochinさんのドラムはとにかく正確でタイト。だからヒップホップのフォーマットにぴったりはまる。マシンぽいドラムというとともすると批判的な文脈になってしまうが、とんでもない。めちゃかっこいいぜ。ヒップホップにしてはビートがかなり複雑かつ多様なんだけどまさにそこが二人でやる由縁なのだろう。黒煙に巻かれて非常に気持ちよかった。また見たいし、音源も新しいのを出して欲しい!12インチとかで新曲とか!

Granule
トリは東京のGranule。こちらは音源を聴いているからだいたいどんな音かわかっている、と思ったけど生で見るとかなり印象と違って面白かった。上背のあるメンバーは挑発も多くてこの日一番アングラメタル感出てた。音源を聴いた印象は長尺の強烈なスラッジだが、ワウを効かせたソロなどサイケデリックで地獄感と同時に煌びやかさもある音という感じ。ところがライブだともっと肉体的でおぞましかった。オールドスクールなスラッジをもっとでかい音で、もっと音の数を減らし、もっと一つの音を伸ばす、そんな音像。一撃をこれでもかというくらい強調するあたりはフランスのMonarch!っぽくもある。窒息するような緊張感も似ているがあちらは魔術的なドゥームだが、こちらはもっとハードコアっぽいスラッジ。ボーカルもどんどん喉があったまったのか最終的には低音、高音どちらも迫力が出て怖かった。途中で暴れる場面もあって音源よりよっぽど剣呑だった。しかしかっちりあったアンサンブル、何より引きずりのたうちまわるようなフィードバックノイズにその美学が込められており、無心に頭を振るうちにも退廃的な美しさを感じられてよかった。

ライブに行くと音源を持っているバンドでもそうでないバンドでも、大抵こうだろうな〜と思っていたことが違うので面白い。この日は特にそんなことが多かった。あと結構通ぶって楽器の方がきになる風でいるんだけど、最近はボーカルがすげえな!と思うことが多い。主催のGranuleに比べるとFriendship以外のバンドは結構音楽性が異なるんだけど、その違いが結果的にとても楽しかった。
あとHIMOとDooomboysの間に女性のDJが曲をかけていたのだけど、かかる曲がハードなテクノばかりでどれも非常にかっこよかった。全部曲名教えてくれろ!という感じ。
週末の渋谷には色々な人がいる…と思いながら帰宅。

2017年5月22日月曜日

Rolling Stoned#8 VVORLD『Highway Shits』Release Party@新代田Fever

日本は東京吉祥寺のハードコアバンドVVORLDが2017年に2ndアルバム「Highway Shits」をリリース。リリースパーティをやるよ、というので行って来た。というのもVVORLD自体がかっこいいのに加えて出演陣がとても豪華なもので。全部で15のバンドが出演。ほとんどがハードコアという大きなジャンルで括られるバンドばかりだけど、中には大阪のスラッジBirushanahや同じく大阪のストーナー・ロックバンドSleepcityなどハードコア以外のバンドも名を連ねていてとても面白いメンツなのだ。
なるべく全部のバンドを見たい派なので私は開演前に行くことにした。会場はFeverでこの日は14時会場だったのだけど、ちょうど一番雨がひどかった時間帯かも。傘をさすけどなぜかいつもびしょ濡れになる男である私はこの日もびしょ濡れで会場に到着。フロアに入るとフロアの左にセットが設けられている。つまりこの日はステージとフロアの2ステージ制で交互にバンドが演奏する。こうすると転換の時間を節約してたくさんのバンドを消化できるというわけ。Feverは広くて綺麗なので物販もバンドぶん対応できていてよかった。
以下感想なんですけどバンドの出演順番間違っている気がしています…。記憶力がなさすぎて違ったら申し訳ないです。

①Self Deconstruction@ステージ
見るのは2回目かな?美少女ボーカル、美人ゴスロリギタリスト、細マッチョドラムとキャッチーかつ情報量が多い見た目と裏腹にステージングと音楽はハード。曲がかなり独特で耳と頭がおかしいので間違っているかもしれないが、あまり反復の要素がない。普通のバンドは激烈でも反復性があるから円を描いて走るんだけどこのバンドの場合は直線で走り抜ける。だから常に今がすごいスピードで過ぎ去って行く。通過している新幹線を呆然と眺めているみたい。グラインドコア/パワーバイオレンスと名乗っているだけあって、たまにくる低速パートがかっこよかった。

②Super Structure@フロア
こちらも2回目。元ネタのFall Silentも聞いたんだけどあまり共通項が見出せない。パワーバイオレンスバンドなのだが、ステージングが凶悪。ただ激しいというか怖い。「パワー”バイオレンス”なんだよ、ふざけんな」という覚悟が滲み出る凶暴性。目出し帽かぶったボーカルもさることながら他のメンバーの動きも切れている。ギター振り回して当たったら危ない、とハラハラするんだけどびっくりするくらいかっこいい。ただただ低速パートのみにフォーカスするようなバンドではなくきっちり速いパートもかっこいいという清く正しい(つまり濁っていて悪い)パワーバイオレンスバンド。

③Enslave@ステージ
見るのは初めて。男女混成ツインボーカルのハードコア/クラストコアバンド。ギタリストも二人なのでメンバーが多い。激しいハードコアを基調に叙情性を取り入れていて、またメッセージ性も強い。日本のハードコアバンドの系譜を感じさせる。男性ボーカルも強いのだが、どちらかというと女性ボーカルの方が鋭く、逆に男性ボーカルは激しい中にも丸みがあってそれが良い対比になっているなと思う。演奏は非常にかっちりしてまっすぐ。見え隠れするメロディラインが高揚感あってかっこよかった。

④Sleepcity@フロア
大阪のストーナーバンド。見るのも聞くのも初めてでドラマーはBirsuhanahでもドラムを担当している。立ち居振る舞いからハードコアとは一線を画す感じでワクワクする。音を出して見ると果たしてかっこいいオルタナティブ・ロックだった。もっと煙たくて怪しげなものかと思っていたのだけど、かなりかっちりしたロック。ファズなのかはわからないけどグシャとした中にもざらついた温かみのある中域が分厚いギターに歌が乗る。歌も歌うと叫ぶの中間で全体的にはかなりエネルギッシュで激しいのだが、どこか気だるい(音楽がとい意味ではないですよ)雰囲気があって、あの頃のオルタナティブを感じさせる。初めて聞いたのになんか胸を締め付けるようなノスタルジーを感じてしまう。モダンなアップデートでオリジナリティのある、単なるリバイバルにならないオルタナティブをプレイするという意味ではSunday Bloody Sundayに通じるものがあると思う。音源が欲しかったけどなかったみたい。

⑤Band of Accuse@ステージ
見るのも聞くのも初めて。福島の4人組のバンドでメッセージ性の強い音楽をやっているとのこと。音楽的にはハードコア/クラストコアという感じ。スラッシーナリフで組み立てられたシンプルながらも力強いコーラスがよく映える男らしい音楽をプレイ。飾らないシンプルなハードコアなんだけど演奏は非常にカッチしていてよかった。やはりソロも入れてくるギターがハードな曲にキャッチーさを付与していると思う。個人的にはドラマーの人がすごくてちょっと独自の癖があるのかわからないけど妙に耳に残る。ヅタヅタ刻むD-ビートも力強くかっこよかった。

⑥System Fucker@フロア
続いてはSystem Fuckerなんだけど個人的にはこのバンドが結構楽しみで。というのもいでたちがすごい。正しいクラストコア(パンク)という感じでボーカルの人は細くそして高いモヒカン頭である。他の人もなんともクラストないでたち。パンクというと一般的なイメージはこうなのかな?この日は異彩を放っていた。メタリックに武装したあくまでもクラストコアという音楽性で、D-ビートに生き急ぐような前のめりの演奏が乗っかる。思っていた通り華のあるボーカリストで、Dis系の男臭いがなり声とはちょっと違うんだけど、無愛想ながなりがかっこいい。この人がフロアを動き回る。上背があり、蹴り上げる踵の高さ!イメージとしてはサメみたい。突進したり、突き飛ばしたりと暴力的なんだけど陽性のエネルギーがあって、(怖いのは怖いけど)なんだか楽しい。フロアにいる人もきっとそう思っていたはず。とても盛り上がっていた。

⑦Fight it Out@ステージ
このバンドも見るのは2回目。今年リリースされた新作がとても良かったのでライブをまた見たかった。ストップ&ゴーを繰り返すショートな楽曲を繰り出すパワーバイオレンスバンドだが、HIp-Hopアーティストをアルバムのゲストに迎えたりと生々しいストリート感を演出した独特の楽曲をプレイする。この日おそらく一番フロアが湧いたバンドだったのではなかろうか。ボーカルの方がフロアに降りてきてからは特に危ないダンスフロアになっていた。ライブで聴く楽曲は改めて肉体的で速度を落とすタイミングが絶妙でみんなが暴れるわけだと思う。鬱屈しているというよりは、断然鬱憤を晴らすかのような爽快感がある。

⑧LAST@フロア
続いては岡山県から車で8時間かけてやってきたLAST。1時間ないステージのために16時間とさらに色々な準備の時間使うのだから本当にすごい。本当ならこっちから行かないと見れないんだもの。ありがたい。専任ボーカルにギター二人の5人組のバンド。日本の伝統を感じさせるメタリックなハードコアをやっている。コーラスワークを大胆に取り入れているという意味ではBand of Accuseに通じるところもあるのだけど、こちらのバンドはもっと曲を凝ったものにしている。装飾性はないのだけど、速度の変更や展開などがあって面白い。最終的にあくまでも肉体的なハードコアであり続けているところにかっこよさがある。ボーカルの人は暑くて前のめりなMCもそうだし、フロアを所狭しと動き回る。ジャンプ力がすごかった。ハードコアの持っている激しくもポジティブな部分が前面に出ていて強いなと思った。(ポジティブでいる方が難しいと思っているので。)

⑨Birushanah@ステージ
続いては大阪の和製トライバル・サイケデリック・スラッジ。Birushanahは大好きなのでこのイベントに名を連ねているのにびっくりしつつも嬉しい。音的には明らかにこの日一番異質でメタルの、それも相当独特なメタルを鳴らしている。この日も特に迎合することなく最新作を中心に毘盧遮那世界を展開していた。メタルパーカッションはさらに楽器が増えて要塞のようになっていた。このバンドは打楽器が二人にギター一人という一見するとアンバランスさなのだけど、ギターが鉄塊のような低音を担当する反面、様々な工業的な廃材で組み上げられたメタルパーカッションがキンキン響く高音でメロディというかその名残のようなフレーズを担当。おまけに最近はボーカルの歌の度合いが強いので見た目よりとっても聴きやすい。やはり最後にプレイした「鏡」にBirushanahの魅力が詰まっていると思う。現実に立脚するのがハードコアならメタルは異世界に連れて行く。この日も短い中でもトリップ感満載だった。
そしてすごいどうでもいいけどボーカル/ギターのIsoさんはとてもお痩せになったのではと思います。

⑩ELMO@フロア
続いて東京のハードコアバンドELMO。もうずっと前になぜか1枚だけCD「Still Remains...」を買って持っている。この日多分一番尖っていたのがこのバンド。低音に特化した極悪なハードコアを鳴らしている。テンポチェンジも多用しているが、基本的には速度は遅め。ボーカルの方はシュッとした人で高い声で絞り出すように叫ぶのが基本だが、たまに這いずり回るような低音も出してくる。この人はひょっとしたらラッパーもやっているのかも。ハードコアでは客に暴れろと煽るバンドは多いのでは。このバンドも煽るのだが、それが変わっていて普通は演者と客の間に共通の連帯感がある場合が多いのだけどこのバンドは観客すら敵くらいのヘイトをぶちまけてくる。非常にヒリついた空気で緊張感が半端ない。ほんのちょこっと見ただけなのでなんとも言えないのだが、そもそもライブってなんでしたっけ?という問題提起にも思えた。

⑪Saigan Terror@ステージ
続いては東京の高円寺のハードコア。見るのは2回目。年季を感じさせるいぶし銀のメタリックなオールドスクール・ハードコアをやっているのだが、とにかく怖い。ボーカルの方の見た目もあるだろうけど音の方も超いかつい。そういった意味では日本のハードコアらしい叙情性というのはそこまでなくて、代わりに攻撃性と速さと重さがある感じ。コーラスワークもシンプルで恐ろしげ。スラッシーなギターはかなり動きの激しいギターソロにも反映されているが、やはり刻みまくるリフがかっこいい。良い感じに音が抜けているのでメタルの重苦しさがほとんどない。どちらかというとロックンロール的だ。このバンドはそのままだと相当怖いのだけど、ギタリストの方のMCでバランスが取れている。よくもあんなに言葉がポンポン飛び出してきて、どれもが面白いものだな〜と思う。

⑫Shut Your Mouth@フロア
続いては昨年1stアルバムをリリースしたShut Your Mouth。こちらも見るのは2回目。こちらも現行型のハードコアを鳴らすバンドで、一気に速度を落とすパートを取り入れた楽曲はハードコア的な踊れるものなのだろうが、それだけではない深みのある独自のセンスがあると思う。叙情的というのは何も装飾的であることでも、わかりやすいメロディがあるわけでもない。このバンドはニュースクールっぽいなと思う。ニュースクールというと激しいハードコアにプラスオンで情報を追加するイメージなんだけど、そこを通過してきているイメージ。2本のギターがリフに加えて奥行きのある要素を曲に持ち込んでいるし、ちょっとFall Silentっぽくもある若さのあるボーカルはとてもエモーショナル。ラストの「Grey World」はかっこよかった!この日一番良かったかも。

⑬SLIGHT SLAPPERS@ステージ
続いてTokyo PowerViolenceスラスラ。今日ボーカリストの方はメガネではなくきらきらひかる眼帯をつけていた。(あとで外してお客さんに優しく(?)かけてあげていた。)前回見たときと同じく妙にポップな前半から後半一気に加速する曲でスタート。このバンドは今風の低速パートをほとんどやらない。音的にもギターは中域を分厚くしたハードコア〜パンクを感じさせるあえて肉抜きした生々しいもの。ショートカットな超特急で突き抜ける。そういった意味ではある種乗りやすいわけではないのだけど、そこをコーラスワークだったり、フリーキーなポップセンスだったりで速いだけでなく曲にフックをつけることで魅力的でステージで映えるもにしている。またボーカリストの人の動きやその他のメンバーのステージング(みんな楽しそう)で明るくて、楽しいものにしている。

⑭Friendship@フロア
フロアのトリはこの夏1stアルバムのリリースがアナウンスされているFriendship。期待値の高さと自分たちの大量の機材を使うことからとりなのだと思う。縦横に2✖️2に積まれたOrangeアンプからとんでもない轟音を鳴らすバンド。(豊富な物販でもSunn O)))のモチーフを拝借したりしている。)超高速と超低速を行き来する楽曲は現行のパワーバイオレンスに括られるバンドだと思う。ひたすら低音に特化した様はELMOに似ているが、あちらはざらついた低音だったのに対してこちらはもっと密度の濃い壁のような低音。また積極的に煽るELMOに対して、こちらはMCなしの楽曲没入型。(要するにもっと無愛想とも言える。)ひたすらブルータルな楽曲を繰り出していく。あえて楽曲に隙間を開けない、また開けても全開でフィードバックノイズを鳴らすやり方で客に拍手や歓声をあげる暇すら与えない無慈悲なストイックさ。ある意味客を置いてけぼりにするようなイメージで、客の方もただ圧倒されて首だけ降っているみたいな状況になっていた。個人的にはやっぱりこのバンドはドラムがすごい。シンプルなセットででかいドラムのパートをでかい音で”一定”のペースで鳴らし続けるのは結構異常事態ではと思う。そういったところも含めて潜行というか窒息感があってすごくかっこいい。

⑮VVORLD@ステージ
イベントのラストはもちろんVVORLD。ライブを見るのは初めて。今年新作された「Highway Shits」のリリースパーティな訳だけどその新作のかっこいいこと。期待度も非常に高かった。改めて生で楽曲を聴くとだいぶ独自の音を鳴らしている。根っこがハードコアだとしても、出ている音はメタルを通過したブルータルなもの。強くデス声めいたボーカルもそうだが、動きの激しいギターもそう。煙たく充満するフィードバックノイズもそうだし、高い音も使ったりしていて相当不穏である。ソリッドというよりはざらついた質感でハードコアのフォーマットでかなり先鋭的で独特な音を鳴らしている。メッセージ性もいわゆるストレートなハードコアのそれとは微妙に異なり毒気のある個性がある。ラストを飾る「Living Hemp」は長丁場のイベントの大団円ということで感動的ですらあった。

全15バンドというとでちょっとしたお祭り状態。ハードコアを基本にしながらも幅広いアーティストを全国津々浦々から一堂に集めるというのは贅沢で非常に楽しかった。こんな機会はそうそうない。まだ知らないかっこいい音楽に出会えたという意味でも非常に良い場所だった。
VVORLDのパーカーとFRIENSHIPのT-シャツを購入。もっと色々欲しかったな〜といつも帰宅してから思う不思議。ライブハウスの外に出てたら豪雨はとっくにやんでいた。雨上がりの濡れた道を気持ちよく帰った。

2016年9月18日日曜日

浅草エクストリーム37@Studio 蔵 9/17

夏の蒸し暑さがぶり返した9月17日。
この日はアメリカのパワーバイオレンスバンドACxDCことAntichrist Demoncoreの来日最終日。さらにイタリアのグラインドコアバンドCripple Bastardsの来日の一発目を重ねて来るというまさにエクストリームなイベントが開催された。もはや外タレのライブにしか行かないマンになってしまった私も蔵前を目指したのだった。
ACxDCは解散する事が決まっており前売りもいい感じにはけているとの事。16時スタートで普段だったら余裕の遅刻を決めていくところだが、私はどうしても日本のFriendshipのライブが見たかったので颯爽と(汗だくで)開始時刻に到着。
会場は蔵前「Studio 蔵」。「Kurawood」という名前だったが最近改名したらしい。結構広い四角形(どこにいてもステージがよく見える)の良いライブハウスでした。天井に提灯がつってあるのが下町らしくて良い。

Friendship
本日のトップバッターFriendship。私は彼らの「EP1」、「EP2」を持っているがその音楽はただ「暴虐」。異常にブーストされた暗黒ハードコアをならしている。音が極端にでかいノイズに接近したハードコアというと同じ日本のStruggle for Prideが思い浮かぶ。確かに異常なテンションのブルータルさは共通しているものの、Struggle for Prideハードコアを超越した(”結果的”にクラブシーンにも接近した)ポジティブな前進する力を持っているが、Friendshipはひたすら黒く、ハードコアの基本に忠実のように感じる。
メンバーは思っていたより若く見える、多分私より若いのだろう。しかし音の方は老若男女ぶちたおすハードコアだった。まずはドラムの音がデケエ。ようするに叩く音が非常に強いのだろうがちょっとビックリした。フランスのMonarch!位力一杯。ギター、ベースともに山と詰まれたOrangeアンプの鉄塔から低音がぶわーっとリミッター解除でぶちまけられる。冒頭2曲目位からボーカルがフロアに降りてくる。低音で咆哮する合間合間に客に向かって突っ込んでいく。オーディエンスがボーカルの周りに空間を作る。ここでピットが出来れば恐ろしくも楽しいハードコアのライブなのだが、だれもこのボーカルにぶつかっていく事が出来ない。なんかもう「コイツはヤバい」的な雰囲気が横溢。かかってこいとばかりに一歩も引かないボーカル。その姿たるやまさに孤高。尖りすぎるほどに尖り、私はただただ驚嘆の目を持って彼らを目撃したのだった。普通曲の合間に拍手が起こるもんだが、Friendshipはこの日、演奏が終わるまで拍手は出なかった。演奏とパフォーマンスは最高だった。ただここで拍手すると殺されそうな気がしたのだ(少なくとも私は)。そのくらい緊張感あるライブだった。すごい。上辺の共感すら拒絶する様な一切媚びない攻撃的なハードコア、滅茶苦茶かっこ良かった。このまま尖り続けてほしい。見れて良かった。

Tainted DickMen
続いてはACxDCのツアーの帯同者で福岡のバンドTainted DickMen。「きたないチンコ男達」というものすごいバンド名とチンコを模したギターが特徴。ふざけているのかと言われればふざけているのだろうが、その実力はtwitter界隈では非常に評判が良いので個人的にはどんなバンドなのか気になっていた。3人のメンバーが長髪の佇まいはまさにオールドスクールなメタルを感じさせる。始まってみれば終始テンションの高いスラッシーなグラインドコア。グラインドコアといってもとにかくリフが凝っており、ひょっとしたら異常に加速したスラッシュメタルなんじゃないかと思った。歪みつつもクリアな音質のギターがとにかく!高速で!リフを!刻みまくる!という聴いたら絶対盛り上がる事間違い無しの音楽。フロアのテンションもすごくあがっていた。何と言ってもちょっとしゃがれたわめき声スタイルの高音ボーカルが良かった。ふざけるにしても全力でふざけるのが彼らの流儀なのだろう。カッチリ決まった演奏は途方もない練習を感じさせるが、人当たりは非常に暖かく、そんな雰囲気がフロアにも伝わったのが終始非常にポジティブなライブだった。

Abigail
続いては東京のブラックメタル/スラッシュメタルAbigail。なにげに見るのは2回目か。こちらも長髪にキャップを被ったメタルスタイルで、ならす音はDickMenよりもっとピュアなもの。まさにオールドスクール。ぎゃうぎゃうわめくボーカルはブラックメタルだが、刻みまくるリフはプリミティブ以前のハイブリッドなメタルを感じさせるし、もっといえば非常にスラッシーだ。刻みまくる低音リフに伸びやかに弾きまくるソロのコントラストがシンプルに気持ちよい。アンダーグラウンドなのだが、誰でも乗れる曲が魅力的で結構女性のファンもいるのではないでしょうか。皆さん非常に楽しそうでした。
なんといっても曲を始める前にイーヴィルなボイスで曲名をコールするその美学が個人的にはカッコいい。前回見たときはMC無しだったように思うが、今回はほんのちょっとだけ「アルバムでたのでかってね」があってそこは普通の声になるのが何とも言えずかわいらしかった。

Coffins
続いて東京のデスメタルCoffins。こちらも見るのは何回目か。
低音で這い回るようなデスメタルを演奏するオールドスクール・デスメタルバンド。改めて思ったのはCorruptedの元ボーカルHeviさんに彷彿とさせる極低音ボーカルが歌いすぎないがかっこ良い。曲に緩急を付けるという意味で非常に効果的にかっこよさを煽っている。こうなるとバックの曲で聴かせないと行けない訳なのだけど、ギター、ベース、ドラム各一人というシンプルな構成をものともしない豊かな表現力で持って聴かせる。リフに印象的なテーマがあるのと、それだけではなくてバリエーションが豊富な事。それから曲に展開や速度の緩急を付けることなどで真っ黒い曲の中にも豊かな表情を持たせていると思う。個人的にはドラムがかっこ良くてとくにバスドラに耳を傾けていると、力強い反復的の中にもバリエーションがあってずっと聴いていると催眠をかけられたようにとろーんと気持ちよくなってくる。
このバンドも寡黙な印象があったが、この日はベースのあたけさんが解散するACxDCに対して非常に心のこもったMCを披露して当然フロアも湧く。

Cripple Bastards
続いてイタリアのグラインドコアバンドCripple Bastards。
私は「Your Lies In Check」、「Varinate Alla Morte」しか持ってないくらいのにわかファンで伊達男グラインドコアみせてもらいましょうか〜?位の気持ちで臨んだのだが…
メンバー全員上背があり、さらに体系もしゅっとしているため非常にステージ映えする。こういったバンドではメンバーはとかくアグレッシブに動くものなのだが、このバンドのボーカルGiulio the Bastardは動かない。かっと目を見開き、顔は無表情。そして微動だにしない。マイクを持った両手を顔の上辺りまで持ち上げた様はボクシングのファイティングスタイルのようだ。そういえば彼の髪型は剃り上げたクルーカットだ。思わず「ううう」となるくらい、怖い。
曲が始まってみるとなんかすごいぞ、なんだなんだ、となる。ですぐ分かるのだけどドラムが本当にすごい。こういうバンドは激しく、また速かったりするのでライブでは多少ラフになることもあるし、それも含めて楽しいものだが、このCripple Bastardsのドラム、全くずれていなくないでしょうか?(私が音楽的に素人なのでじっさいはちょっと和kら無いのですが)私の耳には滅茶苦茶正確に聴こえる。「うえええ?」と思って、音に集中すると他の楽器もその正確なドラムに合わせて非常にカッチリしている。機械の様な正確さというのは賞賛と他に、むしろ非人間的な批判として使われる事もあると思うけど、このCripple Bastardsのライブを見ればこの手のジャンルでの恐ろしいまでの正確性が非常にヤバいかっこよさを発生させている事が分かると思う。正確無比に加速減速するブラストビートを聴いてライブ中に鳥肌が立つ私。ここでGiulio the Bastardの動きの謎も解ける訳だ。侍だ!あれはまさに最上段に構えた刀であったのだ。「私の間合いに入れば斬る。」ということだ。勿論実際には刀は持っていないのだけど、このストイックさは本当日本人がはだしで逃げ出す侍ぶりだった。ハードコアの持つ精神的なストイックさが音に見事に表れているのだと思う。波紋波打つ抜き身の日本刀の様な鋭さ、格好良さ。
ちなみにGiulioはその後笑顔を見せる事もあり、ギャップもあって非常に魅力的だった。
来日はここからスタートだと思うので、迷っている人は是非足を運んでいただきたい。

ACxDC(Antichrist Demoncore)
とりは解散が決まっているカリフォルニアのパワーバイオレンスバンドのACxDC。フロアもぎっしり。パワーバイオレンスというのは結構マニアックなジャンルだと思うけど、日本でもこれだけの人が集まるというのはなんか嬉しい。
音楽は激烈だがボーカリストと特にギタリストは(兄弟ですよね?たしかアンコール前のMCでも「My Brother〜」といっていた様な気が。)英国紳士の様なジェントルな佇まいだなと思った。タトゥーはいっているけど。
バンド名にもAntichristと入れたり、アートワークにも山羊をモチーフにしたりとイーヴィルな成分も入っているバンドでブラックメタルの仰々しさは感じられないものの、ハードコアの中にコールタールのようなドス黒い感情をぶちまけており、爆速と停滞を中間無く行ったり来たりするその様はまさに嵐。やはりブラスとぶちかまして一点もの凄く強引にドン!!と落ち込む低速パートがカッコいい。無限に頭が振れる。ボーカルは高音と低音のパートを使い分け、Cripple Bastardsとは違って動きまくり、煽りまくる。「クルクルしろ!」とオーディエンスを煽っていく、必然的に盛り上がるフロアは運動会の様相。サーフも発生して盛り上がりはやはりこの日一番。一体全部で何曲やったのか分からない。
アンコールもえーと3回かな?やってくれた。これから解散という事で2003年に結成して活動し続けたバンドなので思うところは色々あるのだろうけど、湿っぽい雰囲気は皆無でひたすら楽しく、暴れまくるライブであった。色んな人も同じ気持ちだろうが、ただただこんなカッコいいバンドが解散というのは残念。

Cripple Bastardsの最新アルバムと日本公演限定のソノシートを購入して帰宅。
楽しかった。遠くから来日したバンドと招聘してくださった主催者の方々ありがとうございました。
繰り替えにしなるけどCripple Bastardsは軽くグラインドコアの意識を変えてくるくらいすごいので迷っている人は今回の一連の来日公演是非どうぞ。