2014年にGuruz Recordsからリリースされた。
GuruzはDJ Doppelgengerにより設立された東京のレーベル。主にベースミュージック、ダブのジャンルのレーベルらしい。タイトルの「Asylum」は収容所という意味、通常「アサイラム」と読むと思うがこのアルバムは「アシュラム」と読み仮名がついている。Guruzが主催しているライブイベントのタイトルから取ったものだと思う。
コンピレーションアルバムということで様々なアーティストが参加しているが、多分みんな日本の人ではなかろうか。沖縄の人と北海道の人が曲を提供しているまさに日本全国からのコンピ。
私は全くこのレーベルのことも知らなかったが、とあるライブでDJの方がかけている曲がカッコ良いのでShazam(みんな知っていると思うけど曲を聴かせると情報を教えてくれるアプリ)を使って調べて見たらこのコンピ収録の曲だったので買った次第。大抵ライブ行くとかっこいい音楽がかかっているので私はしょっちゅうShazamを起動しています。
さてアルバム冒頭を飾るHarikuyamaku(この単語も沖縄の踊りから取っているようだ)による「KumeAkaBushi」(「久米阿嘉節」が元ネタかと)を再生するとのっけからダブと沖縄民謡がマッシュアップされた楽曲に驚く。続くChurasima Navigator(美島と書いてちゅらしま、もちろん本邦の沖縄のこと)や、City1など沖縄にゆかりのある(多分沖縄の方)アーティストたちが自分たちの出自をうまくテクノに融合させていることがわかる。この異国情緒が電子音楽に新しい息吹を吹き込んでいる。結構元ネタが濃いというか、口で歌われる民謡にそのままビートをつけたような(もちろんそんなことはないのだが、うまく調整されて作曲されているはず)生々しさ、同じ日本だが別の系統を育んできた本土とは全く異なる、むせ返るような濃厚な熱気が冷徹なビートに乗っているのが面白い。土着的であり、もっというと魔術的でもある。
一体ビートミュージックとは何かというとどうも低音に特化した電子音楽で、元をたどるとヒップホップにその源流があるという。なるほどビートは強烈だが音数は決して多くない。一撃一撃が重たく、そしてただ重い音の垂れ流しではなく、”少ない音で作る”という制限(縛りが物事を面白くするというのは特に芸術、音楽ではとても有効だととみに思うのだが)がシンプルなビートをとても作り込んだものにしていると思う。キックに対するスネアだったり、ビートの隙間を埋めるような小さい音だったり、複数組み合わせて作っているような重厚なビートだったりと、技巧が見える。
重たいビートにもったり煙たいスローなダブがよく合う。エコーを響かせ、回転して行くような上物が被ってくるわけだけど、ここに土台を作るビートに加えて各人が自分の持ち味を活かしている。沖縄勢も強烈だが、もちろんそれ以外のアーティストも洗練されたモダンなそれではなく、やはり土着のものっぽい濃厚で荒々しい”原型”をうまくコントロールしてビートの作る土台に融合させている。
お経を繰り返し唱えることで法悦に浸るように、陶酔感にはミニマルの要素が重要なわけでそのためには曖昧模糊とした感じで全てを覆うのではなく、強固なビートで持ってそれに至る道を作って行くというのが面白い。
どれも低音がすごい出ているし、濃厚な土臭さみたいなのもあるからクラブで聴いたら楽しいんだろうけど、以外にも一人で大音量で聴いてもだいぶ楽しい。でかい音自慢みたいな感じでは全くない。気になった人は是非どうぞ。
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