2017年6月4日日曜日

The Endless Blockade/Primitive

カナダはトロントのパワーバイオレンスバンドの2ndアルバム。
2008年に20 Buck Spinからリリースされた。
The Endless Blockadeは2003年に結成されたバンドで残念なことに2010年には活動を終えてしまった。確か今Sete Star Septでドラムを叩いている人がメンバーとして在籍していたことがあったのではないかな。パワーバイオレンス(ハードコア)バンドということでスプリット含めてそれなりの数の音源を残している。私はBastard Noiseとのスプリット「The Red List」のみ持っている。なんとなしにデジタル版でこのアルバムを買ってみた。ミックスはPig Destroyerなどで活躍するScott Hullが手がけたようだ。

全12曲を21分で走り抜ける正しいパワーバイオレンスバンド。だいたい1分くらいの短い曲の中を高速〜低速をストップアンドゴーを交えてめまぐるしくシャトルランして行く。基本はしゃがれた高音喚きボーカルでたまに低音ハードコア喚きボーカルが乗る。ややぎろんぎろんした太くて主張の強いベースがMan is the BastardやSpazzを思わせる。ミュートを多用しないギターも非常にハードコア的である。ドラムも速い時は速いが音が軽くて抜けが良い。疾走感というよりは早回ししているような痙攣的で不自然な速さが、いつのまにかトーンダウンして停滞しだす。ストップアンドゴーと言っても速度の止め方というところにこのジャンルの面白さがあると思うけど、このバンドはそこらへんが非常に巧みで短い曲でもあっという間にテンポを転換させて行く。
割と伝統的なパワーバイオレンスを軸にこのバンドのすごいところはさらにノイズの要素をぶち込んできている。不穏なSEはともかく、明らかにハーシュノイズを曲に持ち込んでいる。イントロ的に使う場合もあるが、スラッジ成分を強調した長い尺の曲(基本2分台くらいだがラストは7分40秒ある)ではノイズの登場頻度も増してくる。ハーシュノイズは流動的かつミルフィーユのように多重構造だが、その層をいくつか剥がしてきてハードコアの表面に貼り付けている。(あるいは足元に滞留させている。)分厚いハーシュノイズをそのまま使えば個性の強すぎるノイズゆえにノイズにしかならないだろうから、心得た使い方だと思う。

ハードコア(パワーバイオレンス)にノイズの要素を追加するのが昨今の一つの流れ(Full of HellやCode Orangeあたり。日本のEndonはノイズがバンドサウンドに憧れから接近したとしたらちょっと違うかな。)だと思うけど、この流れは何も今に始まったことではないなと改めて実感。いうまでもないが「The Red List」で共演しているBastard Noiseはパワーバイオレンスの元祖とされることもある元Man is the Bastardのメンバーが始めたバンドであるから、別に今の潮流が単なるリバイバルとは全く思わないけど、きちんとこういうった土壌があるところから最近のバンドがすくすく育っているんだな〜という感じ。
そんなわけで最近のFull of Hellなんかが好きな人たちはバッチリハマると思うので是非どうぞ。個人的には大変かっこよく楽しめた。おすすめ。

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