アメリカ合衆国はウィスコンシン州オシュコシュのドゥームメタルバンドの1stアルバム。
2017年にGilead Media(Thouとかドゥーム/スラッジ系のリリースが多いようだ。)からリリースされた。
2006年に結成された4人組のバンドとのこと。バンド名は「洞窟光」だろうか。アルバムのタイトルは「手でカップを作って(両手を合わせるあれね)私たちの痛みの流れからそれを掬い、飲む」というような感じだろうか。よろしくないですね。曲名も軒並み長くて嫌な感じ。
全5曲で35分40秒、1曲だいたい7分前後だ。ドゥームにしてはバカみたいに長いわけではないが、アルバムを一通り聞けばこれが程よい長さだとわかるだろう。これ以上長いとこちらが死ぬからだ。いわゆるトーチャースラッジとは異なる地獄感のある音楽を鳴らしている。
粒度の荒いジメッと質量のあるギターが圧殺リフを奏でていく。ひたすら遅く爽快感のある疾走とは無縁の世界で真綿で絞め殺されるような展開が続いていく。何かよくないことが最近あったのに違いないボーカルが共感しないし、共感されることを拒否しているかのような世捨て人スタイルで吐き出していく。
これだけだと確実に真っ暗でしかないのだが、このバンドはこの地獄の中にそれこそ芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように、カンダタに降ろされた一本のか細い蜘蛛の糸のような救いが、例えば妙に冷たくありながらも人間的な、ただし非常に単調でメロディ性のわずかな残り香が感じられるようなシンセ音に託されている。これがまた良い。蜘蛛の糸が結局千切れることでカンダタをもう一度地獄に突き落としたかのように、逆説的に希望がその周りの地獄感を際立たせるからだ。これはえげつない。なんてひどい。
実は感情的でありそういった意味ではフューネラルドゥームさを感じる。強烈な音楽性の中にも寂とした自傷的なデプレッションを表現するあの感じには通じるものがある。そう思ってよくよく聞くとコード進行なんかは結構温かみのあるメランコリックな人間性が感じられるから面白い。女性ボーカルの導入、曲中のメリハリのある展開、贅沢な尺の使い方など結構ポスト感のある構造をしているのだが、それを持ち前の黒さで半ば塗りつぶしてしまっている。結構そういった意味では意図的なバンドで、だから底意地の悪い音楽がよく映えている。二律背反というよりは時の黒さを目立たせる暖色の使い方がやはり非常に巧みだ。
地獄のような音楽が好きなろくでなしは涙を流して聞けるのではなかろうか。非常にこれは良い音楽ですよ。この世には希望なんかないんだというあなたにはきっと薬のように作用するのではなかろうか。さあ是非どうぞ。
0 件のコメント:
コメントを投稿