2017年6月4日日曜日

Dying Fetus/Destroy the Opposition

アメリカ合衆国はメリーランド州バルチモアのブルータルデスメタルバンドの3rdアルバム。
2000年にRelapse Recordsからリリースされた。
Dying Fetusは1991年に結成されたバンドでこの界隈ではかなり有名なバンドではなかろうか。私は実は聞いたことがなかったわけで、なんで今なの?という感じなのだけど、近々8枚目になる最新作「Wrong One to Fuck With」が発売されるので過去作を聞いておこうというのと、それ以前にハードコアっぽいデスメタルと聞いていたのでそれなら聞いてみようとなったわけだ。聞いたことない私でもこの印象的なジャケット(アンクルサムが疲れている)は知っていたので(多分大昔に読んだBurrn!にもレビューが載っていたような)このアルバムをチョイス。

聞いてみるとこれが非常にかっこいい。ハードコア要素もあると言われるのも納得の内容。一番びっくりしたのは音の作り方でかっちりして重たいのだけど、意図的に風通しをよくしているので全体的にカラッと乾いた雰囲気がある。手数が多いドラムはまるでLast Days of Humanity(こっちはすこここという感じだからちょっと違うけど)を思わせるような徹底的に乾いた音に仕上げられてスタスタスタ突っ走る。後述するがこのバンドはテンポチェンジが頻繁になるのでそれに対応して非常に叩き方が豊富なのも魅力。
ギターは湿り気のあるひたすら重低音というメタルらしさとは違って、中にぎっしり砂が詰まった鈍器のような重さ。目の細かい粒子をぎゅっと圧縮したような密度の濃い、見た目以上に重量感のある音。このギターがかっちりリフを刻んで行くのだが、基本的にはとてもメタリックでテクニカル。低音弦をメインに据えた、ミュートを多用した刻みがメインでドラムと相まって非常に正確。ギターソロなんかも少なめなのだが、たまに高音でテクニカルなピロピロが入る。ただここも音の輪郭を丸めてあるので耳に痛くなくて、ひたすらブルータルな楽曲に不思議とマッチしてこのバンドの大きな特徴の一つになっている。
ボーカルは低音をメインに吐き捨てるような中音なども挟み込んでくるスタイル。「メロディ?うちにはないよ」なメタルだけど、このバンドの名前知っている人ならそこらへんは多分気にしないじゃないだろうか。
曲はだいたい平均すると4分くらい。メタルとしては普通長さだけどいわゆるグラインドコアなんかと比べれば長いわけで、激烈なブルータルでその尺をどう使っているかというと、ハードコアの要素を大胆に取り入れてテンポチェンジをやっている。メタルは(だいたい)テクニカルさも志向することが多いので速度の変更や変拍子も珍しくはないのだろうが、このバンドの場合はブレイクダウンのような大胆で強引なテンポチェンジを仕掛けてくる。ミュートを使ったゴリゴリのリフがここでハードコアのモッシュパートのように断然映えてくる。この間だけはテクニカルさをかなぐり捨てて肉体的に、そして暴れる間隙をわざと空けてきてフラストレーションを一気に解放させてくる。音の作り方もそうだけど、極北みたいな音楽をやっているけど実は力の配分が絶妙で減らすところは減らしている印象。単純にブルデスプラスハードコアのただの足し算でないのだな〜と。

基本的にはやはりブルータルデスメタルだと思うのだけど、見事にハードコアの要素をブレンドして独自の音楽をやっている。実はまだ聞いたことないな…という人がいたらこっそり聞いてみるのが良いのではないでしょうか。

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