2017年3月12日日曜日

FIGHT IT OUT/MOST HATED

日本は横浜のハードコアバンドの3rdアルバム。
2017年にBOWL HEAD Inc.からリリースされた。
YokohamaCityPowerviolenceを標榜する5人組のバンド。2000年に結成されメンバーチェンジを経て2枚のアルバム、そのたの音源をリリース。(多くは多分現時点ではすでに入手困難。)2011年の2ndアルバム「Talk Shit and Hope」から約5年と半ぶりのアルバムが今作。
私はライブが凶暴という話をtwitterで見ていておっかね〜とか思っていたのがたまたま見たライブ(1月に小岩でみたやつ)が非常に格好良く、物販では音源が売られてなかったので結構この新作はタイミングが良い、というか楽しみにしていた。

1月のライブではとにかくフロアが盛り上がっていたという印象(怖くて前に行けない始末)で肝心の楽曲は割とハードコアっぽいかな?と思っていた。ただトータルの演奏時間からしておそらく曲自体は短いのでは?と。実際に聞いてみると印象とあっているところ、そうでないところがあって面白かった。
アメリカのファッションブランドDickiesのカラーからとったという濃い藍色が印象的なアートワーク。中身の方はというと全部で13曲を14分弱で突っ走るハードコア。ハードコアを基調としながらこの音源の音楽性はほぼパワーバイオレンスに振り切っている。目の覚めるような高速パートから一気に低速に落とすダイナミズムはまさにパワー✖️バイオレンス=無限大の喜び的な勝利の方程式。個人的には乾いているけどファットなドラムとギロギロいうえぐいベースラインだけでエヘエヘしてしまう。(いかにもポーザーな感想ですまない。)EPのタイトルにもなっているが「Locos Only」つまり「バカ(イかれたやつ)だけ」というキャッチがしっくりくるくらい賢ぶらない正しいバイオレンス。ACxDCみたいなハードコアに(グラインドコアというよりは)デスメタルのフックというか禍々しさをテクニックとして取り入れているようなバンドとは一線を画してひたすら技巧なしのフロア一直線サウンド。2Pacの格好でYouth of Todayを、というコンセプトが結成当時はあったらしいのだが、現在の楽曲はかなりピュアなハードコアスタイル。ただメタルもかじる程度に聴く雑食性がラッパーC.O.S.A.という他のジャンルのミュージシャンを招聘している部分に現れている。ただハードコアにヒップホップを混ぜるというミクスチャーな手法というよりは、ヒップホップのトラックとしてインタールードトアウトロに使っているというやり方であくまでもハードコアであり続ける。
FIGHT IT OUTのハードコアとは”悪さ”である。危険さを隠すことなく前面に出していくスタイル。”悪さ”が敬遠されるのは他人(つまり究極的には自分)によろしくない影響を与える(と思われる)ことなので、実は結構これを武器にしていくことは難しいのではと思うが、臆面もなく悪さを前面に出していく。近づいたらやばそうだけど、何か凄いというのはまさに私が見たライブに他ならない。ハードコアは音楽以上になんなのか?というのは深すぎる質問だと思うけど、(ハードコアに限ったことではないけど)激しさを伴う音楽では”悪い”という要素(もしくはストーリー)は常について回る問題といっても良いのではなかろうか。FIGHT IT OUTは誰彼構わず殴るバンドだというのではもちろんなくて、悪さの求心力というのが確かに感じられるなということ。(特に私のようにそういったタフさから一番遠い人種にとっては。)

悪いハードコアである。敬遠されるハードコアかもしれない。なんていっても「最も憎まれている」んだもの。ただ暴力性に身を委ねるのも悪くない、っていうかだいぶ気持ちが良い。激しい音楽を好きな人ならバッチリハマると思う。非常にかっこいい。おすすめ。入手困難になる前にゲットしましょう。

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