2018年6月3日日曜日

Fairy Social Press presents Boys Don't Cry#6@初台Wall

someoneはsometimes言う。曰く地獄とはこの地上のことだった。いや正しくは地獄は仕事のことなのだ、私は言うだろう、特に最近のバージョンの私がだ。職場が地獄で不味かった。終わることがないような業務時間もそうだ。仕事は大体つまらないものだが、そのなかでも特に気が重い類のものがある。今回はそれがしんどい。深夜2時に翌日(当日)朝7時に偉い方々(どうして彼らは総じて早起きなのだろうか)に自分が詰められるための資料を作成するというのはなかなかどうしてテンションが上がりようのない仕事だ。空いた時間を寝て過ごすいうのも良い選択肢だが、寝て何かが発生することはない。私の人生に何もなくなるという恐怖感からライブに行くことにした。

Kruelty
昨今話題の東京のDepressive Hardcore。ちゃっかりでも音源は購入したのだが生で見たことはないので楽しみだった。爽やかな初夏なのに4人のメンバー全員が目出し帽を被るという容赦のないスタイル。始まってみればこれはデスメタルでは。ざっくざく刻むギター、地の底から響くような低音ボーカル、重苦しいリズムはドゥーミィなデスメタル。ただただ呆然とするのだが耳が慣れているとデスメタルにしては異常にシンプルじゃないか?と気がつく。偏執的に隙間を埋めるようなテクニカルなリフ。つんざくような高音ソロ。そのような装飾性がほとんどない。ひたすらミニマルにリフを刻んで行く。1分はどうしたって60秒だ。駆けぬけようが牛歩だろうが同じ60秒だ。Krueltyはこの空間をリフで分割して行く。なるほど執拗な正確さで等間隔に刻んで行く様はメタリックだがあまりにそっけない。引っ掛けるように進んで行くそれを聞いて思う「これはハードコアだな…」。そうこのつんのめるようなリズムはまさしくハードコア。モッシュパートを切り出してそれで曲を作りましたという態。まさしく邪悪。音的には大阪のsecond to noneに似ているが、こちらがもっとシンプルだ。その分執拗でなるほどDepressive。こうやって演奏中にこちらが気が付いていくようなバンド、良いですよね。

Runner
続いては大阪/京都のRunner。恥ずかしながらバンド名も知らない始末。
こちらも抜けの良い軽めのスネアが軽快な瞬間風速系ブラストビートがキレッキレのパワーバイオレンスバンド。落とすパートの頻度が非常に高く、ほぼほぼモッシュパートの合間合間にボーカルが入るのでは、というくらいのエゲツなさ。バンド名はまさに名を体を表すかのごとく遅いパートもしつこくなくてあっという間に駆け抜けていく。
ひたすら筋肉質そのスタイルから Fight it Otuに似ているかなと思ったが、日本語の歌詞や遅くも早くもないパートにジャパニーズスタイルのハードコアを感じてしまう。パワーバイオレンスというのはふざけているか、おっかないか、あるいはその両方なんだけど、このRunnerはシリアスでありつつもまっすぐな暑苦しさもあってそこがこういったジャンルでは結構珍しいのではと思った。やはり関西のバンドというのは独特のオリジナリティを持っているなあと再実感。

leech
続いては船橋パワーバイオレンス、leech。見るのは2回目か。ボーカルの方が丸坊主になっていて厳つさが増していた。
ギターが2本だがノイズ感がすごい。曲が始まる前からフィードバックノイズが垂れ流しでこちらも脳汁がドボドボ溢れてくる。曲が始まると流石に低音が目立つのだが、よくよく聞いているとその低音の裏には高音ノイズが渦を巻いている。(片方のギタリストはひたすら高音に徹しているのかもしれない。)いわば高音域と低音域を同時に抑えている音の厚みがあって、それが音の壁になっていてフロアにぶち当たってくる。気持ちが良いよ。もちろんコントロールはしているはずだが、このleechというバンドは全部の楽器を最大音量で鳴らしているかのような感じがしてひたすら煩い。楽器隊VSボーカルみたいになってそこの相克も面白い。ただし一つ前のRunnerに比べると圧倒的にこちらのが陰湿。高速から低速に移ってもいわゆるモッシュパートとは違う、もっとスラッジっぽい放心したような気怠い感じがしてもはや手の施しようの無い感じ。わかられてたまるかという病んだ雰囲気が不健康ですき。

Fight it Out
後半戦トップバッターは横浜パワーバイオレンスFight it Out。始まる前からフロアに緊張感漂ってきてすごいバンドだなあと。
ライブハウスの特徴なのかもしれないけどこの日は前見たときよりドラムより弦楽隊の音が前に出ているイメージ。(私がいた位置の関係もあるだろう。)このバンドは速度のコントロールがすごいと思っているので、今日はまたもっと混沌としたイメージで聴けて面白かった。とにかくなんでもありなジャンルの中でくっきりとした音のイメージを提供するバンドだなと改めて思った。とことん研ぎ澄まされた曲というのは、余計なパートが無いということだ。速いか遅いか、その中間はバッサリ切り捨てる。ただし短いながらも余韻を残すようなパートがあってそれがまた格好良い。ひたすら筋肉質で無骨だが、その分たまにある短いシンガロングパートが映えてくる。あえて誤解を恐れずにいうと非常にわかりやすいんだと思う。馴れ合いというわけではなくてわかる奴は乗ってこい、的な。そうなればフロアも当然盛り上がってくるわけで。短いMCにもそんな姿勢が表れているようでひたすらカッコよかった。

she luv it
続いては大阪のバンド。音源の数は少ないのだが結構その名を聞く機会が多く気になっていた。なかなか見れない関西のバンドということでこの日の目当てでもあった。
ステージにはギタリストが2人、それからベーシストが2人(一人はボーカル兼任)、ドラムが一人(この方は他のバンドの時からずっとフロアで楽しそうに踊っておりました。)という変則体制。
セッティングが終わった時点でフィードバックノイズがすごいよ。人もぎゅうぎゅう。曲が始まってみると大変ですよ。満員電車が急停車した時のような人の動き。さらには恐らくビールが飛んでくる。モッシャー同時多発テロなお祭り騒ぎなわけで、それもそのはずだって曲が全編モッシュパートなんだもの。ひたすら刻んできて、そこに低いボーカルが乗る。そういった意味では一番手Krueltyに似ているところがある。確かにデスメタリックなところもある。ただ形式は似ていても音の印象は結構違う。一つはこちらがハーシュノイズも生々しいロウさ(生々しさ)を備えていること。内側に掘り進めていくようなDepressiveさはこちらには無い。陰湿だが内向的というよりは外向的で外に外に放射していくような動きがある。ひどくブルータルだが、フロアは湧きに湧きモッシュは自然発生的。

Nervous Light of Sunday
最後は大森のハードコアバンド。最近出た2枚のEPがとにかくよかったので是非とも見たかった。ドラム、ベース、ギター2本に専任ボーカルという5人組。
前の5つのバンドに関してはスタイルは違えどだいぶ逸脱していたのだなとわかるな、というかっちりしたサウンド。メタリックさはサウンドの重たさ、ミュートを用いた弾き方によくよく表れている。リフの中での低音と高音の対比が目がさめるようにくっきりしている。これはニュースクールハードコアだ。メタリックなサウンドでもKrueltyとは異なって、重量感があっても突進力がある。ボーカルはほぼシャウトだがたまに呟くような歌い方をしていてそこが日本っぽい。ただメロディ性は皆無でそこらへんはギターリフで補う。といっても例えばトレモロのようなわかりやすいメロディ感はなくてかっちりとしたリフの中にエモさを感じ取るというマニアックさ。しかしリズミカルに構築されたガッチリしたリフに感情を見出すことのできる奇特な人たちもいるものだ。

この日6つのバンドが出演し、そのどれもがハードコアのバンドだった。それぞれに共通点がありながらも結果出ている音は全然異なり、聞けば聴くほどにわからなくなるのがハードコアなのかと思った。耳が爆音でやられているのが快感だ。完全にやられた感のあるshe luv itのT-シャツを買った。音に似合わずかわいい。
電波の届かない地下から出ると仕事関係のチャットが何件も届いていた。これが私の選んだ毎日なのだった。耳鳴りを引きずって京王線に乗る。ドアの開閉をアナウンスする徹底的に無機質な女性の声が、私は好きなのだった。楽しい時間でした。

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