2018年6月17日日曜日

Struggle for Pride/You Bark,We Bite.

日本は東京のハードコアバンドの1stアルバム。
2006年にTAD Sound/Tearbrigadeからリリースされた。それが12年ぶりにCutting Edgeから再発されたのが私が買ったもの。
Struggle for Prideは1993年に幼馴染の面々(当時高校生)で結成された4人組のバンドで、このアルバムを出してしばらく後に活動休止。メンバーを変えて最近また活動を再開している。ライブもやれば新しいアルバムもリリースされる。そのタイミングで廃盤になっていたこのアルバムの再発となったようだ。
当時からいろいろと人の耳目を集めるバンドであり、以上にやかましい楽器隊に比較してボーカルの音量は意図的に下げているという独特のスタイルで、私の記憶だとハードコアだがカヒミ・カリィらをゲストに迎え、ライブハウスだけでなくクラブでもライブをするとか、かなり過激ないくつかの出来事がまことしやかにネットに書き込まれていたと思う。
完全に後追いだったので、「Change the Mood EP」と後いくつかのスプリットやEPを手に入れた。中でもギターウルフとのスプリットの2曲は超お気に入り。(見つけたら絶対買ったほうが良い。)この1stアルバムはさっさと廃盤になっており、今回個人的には待望の再発だった。
再発に当たり、リマスタリングが施されてるほかいくつかの追加や変更が加えられているとのこと。またボーカリストによるライナーも追加されている。

音楽やその他の芸術を評する際に唯一無二という言葉を使うのはありふれている。つまりたと違うことが優れた点になる。私も何回もそんな言葉を使ってきたが、このStruggle for Prideに関しても他に似たようなやり方をしているバンドというのはあまり思いつかない。極端にノイジーにしたギターとベースにボリュームを下げたボーカルという手法。とはいえもともとハードコアとノイズは結構接近していて、昨今のハードコアとハーシュノイズのクロスオーバー(Full of Hellや本邦のEndon、Friendshipなど)もそうだし、もっと古くからノイズコアというサブジャンルが存在している。Chaos UKや日本ではDisclose、Zayanoseなどなど。どちらかというとクラストコアの流れにある音(とカルチャー)だと思う。SFPに関してはやり方と音に関してはクラストコア寄りだと思うのだけど、逆に音以外にその要素は少なめ。(そもそもクラストはボーカルのレベルは下げない。)格好もそうだし曲も結構違う。D-beatでドタドタというよりはもっとシンプルで早いリズムに乗っかって攻め立ててくる。じゃあモダンなハードコアかというとそうでもない。曲は短く結構シンプルだし、複雑な速度のコントロールはしなし、何よりニュースクール以降の重たくメタリックで複雑なリフはほとんど見られない。(おそらく分厚いノイズの多いを取ってみても中身のリフはそれらと一線を画すのではと思う。)そういった意味ではどちらかというとオールドスクール・ハードコアに近いのかもしれない。ザクザクのリフでモッシーな空間を作っていく、というタイプの音ではないのだがライブは以上に盛り上がる。それも納得の感で音源で聴いているだけでなんかこう暴れたくなるような、そんな原始的な感情に訴えかけてくるものがある。決して反復の要素を持ったリズミカルさはないのだが、なんとなく肉体的に作用する音楽という意味では確かにクラブカルチャーに接近していったのはわかるような気がする。カヒミカリイやMSCのMC漢をゲストに招いているのは結果であって、もともと共鳴するので自然に彼らが参加したということだろうか。ゲスト陣に関しても溶け合うというよりはメタルバンドのSEのような使い方で住み分けがはっきりされている。表層状にラップを取り入れたり、ブレイクビーツを用いたりするような表層的なミクスチャー感は皆無。
よくよく聞かなくても空間をノイズで埋め尽くしていくような、いわばある意味偏執的な音の作りなのだが、うちにこもらない外向的なポジティブさがあるのがとにかく不思議だ。マニアックなジャンルにありがちなマニアックなジレンマに陥っていない感じ。もちろん迫力のある、うるさく、エネルギッシュで残酷な音楽ではあるのだが。このバンドは歌詞を公開していない(し叫んでいるし、なんせボーカルのボリュームが小さいので聞き取れない)のだが、冒頭の「REFLECTOR」でカヒミカリイが何をいっているかというとこれはどうも恋人に向けて書いた手紙を読んでいるようである。クラストコアと一線を画す要素というのはここにもあって、これは私の予想だがもっと身近な物事に関してきっとこのバンドは歌っている(叫んでいる)のだろうと思う。

今までEPしか持っていなかったけどやっとフルアルバムで聴けた。やっぱりかっこいい。新アルバムと合わせて是非どうぞ。

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