日本のハードコアバンドの2ndアルバム。
2018年にAWDR/LR2(Spaceshower TVのレーベルとのこと)、WDSoundsからリリースされた。2017年に行われたライブ音源が別ディスクでついた2枚組のアルバム。
当時高校生だったメンバーらで結成され、途中で一時期活動停止状態になり、メンバーチェンジを経て再始動。前作「You Bark,We Bite」から12年ぶりの新しいアルバムのリリースになった。
クラストコアとも一線を画す、ほぼハーシュノイズとかした弦楽隊に極端に音量を下げたボーカルを乗せるという独自のハードコアスタイルを貫くバンドで、今作もなるほどそのアプローチは変わっていないのだが、アルバムトータルで見ると音楽性はかなり拡張されている。もともと前作からゲストを招くことにためらいのないバンドだったが、今作ではコラボレーションはもちろん、ほぼ楽曲丸ごとゲストがプレイ仕切っているものも数多くある。トラックメイカーが作ったインストが4曲。他のアーティストのカバーが2曲。
自分たちの自己紹介的なアルバムではなく、自分たちの周りの世界を丸ごとパッケージしているような、そんな趣がある。そういった意味ではとても文化的だなと思う。当然ほとんどの人はあるバンドの音源を買うときは彼らの楽曲を期待するわけだからかなり思い切った手法だと思う。当初からクラブシーン、カルチャーに接近したバンドと称されていたし、なるほど前作ではカヒミカリイはじめとするクラブ、ヒップホップ界隈の方々がゲストとして多数参加していた。ただし彼らの使い方(というとちょっと失礼になるのだけど)というのは曲の頭に彼らのスタイルで参加してもらいそれが終わるとバンド側が曲を始めるという、いわばSE的な趣が強かったと思うのだけれど、今作では(そのやり方もあるけど)そうではない。むしろゲストが積極的に「WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.」というアルバムの構成要素になっている。バンド側はもう完全に彼らに任せてしまっている(とはいえインタビューを読むと歌詞はバンド側が用意しているしかなりディレクションはしているみたい)感じすらあってその懐の広さというのはなかなかない。
Struggle for Prideというバンドの音楽は非常に肉体的だから、享楽的と言えるのかな?と思っていた部分もあって、なのでクラブカルチャーの接近に関しても、ほとんど聞き取れない歌詞というのもそういった文脈にあるのかと思ったいたのだが、今作きいてそうじゃないなと。一つはライブ音源なのだけどこの音源はボーカルが音源よりは生々しく聞こえる。(ライブ聴いて生々しいってバカみたいだけど)まさに絶叫という感じでかなり余裕がない。殺してやるぜという気迫もあるんだけど、窮鼠的な俺が死ぬみたいな逼迫した感じがあってヒリヒリしている。そういった意味では今回のアルバム名、ひいてはバンド名にしても最初から闘争のことを歌っているのであり、今まで明確なメッセージはその音以外にあまり用いてこなかったバンドだと思う。今作では例えば「SING FOR PRISONER」などは特に非常に明確にわかりやすいメッセージが込められているのが一つ。(それを穏やかなカントリー調に乗せるというのも皮肉が効いたやり方だ。)それからあえてアルバムの音楽性を拡散させることで、よりバンドの楽曲のブルータルさ、というとちょっと格好付けなのでハードコアバンドとしての本質というか出自がくっきりしてきた。新作発売に伴うインタビューの中の一つでボーカリストは明確に「パーティは終わった」といっている。これらの楽曲の全てが反抗の歌だった。曲によって程よく弛緩しているのはなるほど事実だが。そもそも私がハードコアが好きな理由は「生活感」だ。よく言われる「ストリートな」感じにちょっと通じるものがあるかもしれない。(私のいう生活感はもうちょっとこう格好悪いものだ。)楽しいことがあれば、どうしようもないくらいに腹立つこともある。それらをストレートな楽曲、それから普段から遊んでいる(つまりバンド側の毎日)友人や尊敬する人に歌ってもらった色々な相の楽曲に込めたんだろうという感じがして私はこのアルバムのわい雑さが好きである。
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