アメリカ合衆国はミシガン州デトロイトのハードコアバンドの3rdアルバム。
2018年に自主リリースされた。またもや無料でである。録音はConvergeのギタリストで今やこの界隈では引っ張りだこのKurt Ballou。ドラムを叩いているのは同じくConvergeやMutoid ManのBen Kollerである。というのもThe Armedは2009年に結成されたのだが、メンバーは流動的なバンドのようだ。
2ndアルバム「Untitled」は私のお気に入りのアルバムである。2曲め「Forever Sccum」がすごく好きなのだ。今度のアルバムにはちゃんとタイトルがある。「愛だけ」。葉っぱ人間をあしらったジャケットもシュールだ。ちなみにこのアルバムには葉っぱのLPバージョンがある(「葉っぱだから音楽は聞けないよ」とストアには丁寧に書いてあった。)んだけど一瞬で売り切れていた。どうかしているが、どうかしているとわかってもらうには「どうかしている」と思われるような行動を選択しないといけないのだ。
中身の方もそんな外見に負けず劣らずである。前作からかなり抑制のきかない、フリーキーなハードコアを演奏していたが、今作ではさらにそれをお勧めている。簡単に言えば歌を大胆に導入している。この手の極端なジャンルで歌を導入することはかなりリスキーである。ある意味歌から離れるということが「激しい」ジャンルの流儀なので(これは結果論かもしれないが)、そこに回帰するということはある意味自己否定である。聞き手も「ヌルくなった」「セルアウトした」と好き勝手いうわけである。
しかしこのアルバムを聴いて少なくとも「大人しくなったな」という人はいないだろう、そういう意味では安心してほしい。The Armedにとってはハードコア・パンクというのは単に表現手法ではない。態度があってそれから音楽表現があるのだと証明しているようだ。だから歌でしか表現しかできないならそれを入れるまでなのだ。なんでもありがハードコアだろうが!という不遜な態度が他のバンドにはない音と攻撃性に現れていて面白い。
音が分厚いバンドは沢山いるが、The Armedのこのアルバムは高音から低音まで色々な音をまんべんなく使っている。そういった意味で分厚い。歌っていってもしっとり歌い上げるなんてことはしない。メロディラインを叫びまくるのだ。そして奇妙にピコピコしたシンセサイザーもこれでもかというくらいぶち込まれている。一瞬あたりの情報量の多いこと。おもちゃ箱をひっくり返したような、お祭り騒ぎ、そんな言葉がぴったりのやかましいハードコアに仕上がっている。この喧しさはちょっとThe Locustに通じるところがある。病的でたまにポップで、何が起こっているのかわからないくらい速くて、そしてファニーでもある。このバンドの本質はなんだったかというとやはりこの喧しさだったろう、と思うとこのアルバム表現力を広げたが全くぶれてはいないはずだ。元々The Armedはネガティブな感情をそのまま吐き出すタイプのバンドではない。「俺に余計なこと一切口出しすんな!」(前述の「Forever Scumより」)という世間に中指を立てつつも、彼らが選択するのはあくまでもエネルギッシュに感情を爆発させるやり方だ。暗くて陰惨としているから真面目なわけでもリアルなわけでもない。非常に挑戦的で不敵なアルバムだ。
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