CONVERGEとNEUROSISが来日。これは行くだろう。
私なんて妙に焦って会社から抽選申し込んだくらい。そしてあっという間に当日が来るのだ。
開演後、ロッカーに荷物を入れるのももどかしいくらい逸る気持ちでステージ前に。
久しぶりに見たが他に類を観ないバンドだなと改めて思った。
グラインドコア、パワーバイオレンス、似たようにうるさくて早い音を出すバンドはたくさんいるけど、よくよくこのバンドを目前にするとその特異さがすぐに分かる。
大きい特徴はほぼリフレインがない。メタル(ハードコア)はリフの音楽だというが、ほとんどはいくつかのリフによって楽曲が組まれている。いくつかの(多すぎない)コードがポピュラー音楽の楽曲を形作っているように。
ところがSelf Deconstructionは違う。リフを惜しみなく使い捨てていく。一回使ったリフはもう出てこない。(ように聞こえた。)まさに究極の贅沢。これって特にエクストリーム・ミュージック界隈ではかなり難易度が高いことに思える。尖れば尖るほどバリエーションを出しにくくなる界隈でお約束的なリフを使い回すことができないのだから。つまり弾き手の引き出しの多さが試されている。Self Deconstructionの楽曲をそういう観点で聴いてみると、ギターは確かに低音を貴重としながらも指板を文字通り縦横に行き来する相当フリーでフリーキーな弾き方をしている。すごい。グラインドコア、パワーバイオレンスに仕上げている、といってもその中身は相当異次元だよ。途中で「Concubine」のカバーを披露していたと思うけど、あのぶっきらぼうな曲ですらリフレインがあり、あきらかにセットリストで浮いていたもの。(もちろんとてもかっこよかった。)単に弾きまくるわけではなく、しっかりキャッチーなリフも挟んでいく。
3つのバラバラの個性がかっちりあっているからまた格好良い。お互いほぼ見ることないのに、決めるところはきっちり合わせてくる。
ENDON
昨年後半にリリースされた最新作「Boy Meets Girl」は明らかにそれまでの文脈とは異なる問題作だったと思う。そういった意味でも最新の形のライブを見たかった。
のっけからCONVERGEのKurt Ballouがプロデュースそた「Through the Mirror」のキラーチューン「Your Ghost is Dead」でぶっ飛ばす。いつものENDONだ。ところがライブが進むとどうも様子がおかしい。特に新曲群が異常だ。表面上はメンバー2人が垂れ流す激音ノイズがうるさいエクストリーム・ミュージックなのだが、なんだか…あれ?楽しい?すごく楽しい。なんじゃこれと思ったら、ドラムだ。豪腕だがリズムが明確ではっきりしたロックドラムだ。ミニマルなリズムがむしろロックを通り越してダンス・ミュージックに聞こえ始める。言語外のボーカルの存在感は一旦おいておく。そうなるとその他の音の出し方が非常に巧みだ。程よく重たくないギターは言わずもがな。しかしなんといってもこのバンドの主役ノイズの使い方だ。たしかにうるさい。でもいつもハーシュノイズが爆音で流れているわけではない。ときには音を小さく。時には完全に止め。また時にはハーシュノイズではなく、鍵盤から流れ出るような美麗な音も出てくる。これらの音のON/OFF。つまりビートを基調にそこに音を重ねていくやり方は確かにテクノ、ダンス・ミュージックのやり口ではないか?
「Boy Meets Girl」は単に逆に切った奇をてらうだけの飛び道具ではなかった。彼らはとっくに新しい未知を模索し、そして大胆に舵をとっている。かっこいいぜ〜。
初めてこんな広い会場で見たが、この広さの似合うこと。汚く狭い地下室(大好きだ)とは違う高い天井、その余白がなんだか異常にENDONにあっていた。
CONVERGE
続いてはいよいよ今日の主役の片方。ハードコアの街ボストンでジャンルを更新し続けるバンド。もはやその影響は語るまでもないでしょう。観客の期待度も半端なく、前に前にの圧がすごい。ドラマーのBen Kollerが肘の怪我でお休みのためRough Francisというバンドでドラムを担当するUrian Hackneyが急遽代役に。MCによるとほとんど練習する時間もなかったらしい。重たいカーテンがいよいよ開けられるとそこにいたのはCONVERGEだった。
初めて目前で見るとCONVERGEの異様さに気がつく。なんだろうこのハードコアは。完全にハードコアだけどエモーションが溢れすぎている。それはハードコアにしては複雑な楽曲(とくにKurtのギターは低音から高音まで隔てなく用いるリフはもちろんタッピング、ギターソロなど技巧的にも複雑だ。)、そこに内包される特に新作では顕著な(クリーンで歌われることもある)メロディライン。これらの要素は個別ではあるいでは複合でももはやハードコアのシーンでは珍しくない。ただこれらは諸刃の剣で、これらを多用すると音のヘヴィさとは別の「重たさ」が生じて、ハードコアから距離が離れてしまう。とたえばDeathwishならCult LeaderやOathbreaker、日本なら独自の激情系など。ところがCONVERGEに関して言えば表現力が他の追随を許さないくらい豊富なのに、どこまでいってもハードコアなのだ。どうなってんだ。
様々な楽曲の随所に仕込まれているシンガロングパート。乗車率200%のギュウギュウのおしくらまんじゅう状態で拳を振り上げ叫んだ。
Jacob Bannonはとにかく華があるシンガーで、特徴的な歌い方も初めて見るとちゃんと歌っているし(これはセットリストの関係もあるかもしれない)、細身で長身な体をよく動かす。マイクをぶん回してキャッチする、マイクに覆いかぶさるようにシャウトする、水を頭にぶっかける、両手を大きく広げて観客を煽る、どれもすごく画になる。MCは暖かく、またリラックスもしている。
その他のメンバーもさすがのベテランなので落ち着いているが、決して弛緩することはなく、ただ勢いだけではない楽曲、というよりは勢いがありつつ複雑な曲をがっちり合わせてくる。
クラウドサーフが結構発生していて、ステージと客席に隙間があるのでJacobはちょうどサーフ後に落ちた観客にマイクで歌わせていた。みんなすごい笑顔だった!
本当に時間がすぎるのがあっという間でラストの「Concubine」。なんとSelf Deconstructionのボーカリストの方と共演。すごかったなあ。
NEUROSIS
ラストはいよいよNEUROSIS。結成34年。様々なバンドに影響を与えたバンド。私が初めて知ったのはTVKのビデオ星人で流れたライブ動画。さっぱり何がなんだかわからなかったです。あれから20年位経っていまライブをようやく見れるのは感慨深い。
中核メンバー3人は全員髪の毛やひげに白いものが混じり(というかほぼ白い)ロマンスグレーな感じ。Scott Kellyは体格もよく、アメリカの田舎の偏屈おじさんのようで見た目からして怖い。(ギターよりチェーンソーなどが似合いそうだな…とちょっと思った。)
大阪名古屋の感想を見ると絶賛する人が多数。いざ目の当たりにするとたしかにすごい。どのくらいすごいかというと結構ずっと鳥肌立っていた。いやもう「神だな」って終わりにしたいのだが、なんとかそ(れらの音楽や本)の凄さを言語化したくて始めたのがこのブログなのだった。
分厚い音で静と動を大胆に取り入れた楽曲を演奏。実はそんな奇をてらったことはしていない。音はたしかにでかい、轟音と言っても良い。ただし音量やバランスはきちんとコントロールされていて耳に痛いということはまったくない。そして音もどこまで行ってもオーガニック。経年によって水分が抜けた頑丈の木材のような音だ。分厚いが温かみがある。
またスラッジといっても不吉なフィードバックノイズを必要以上に撒き散らすことはしない。むしろたっぷりと空間系のエフェクターを繋いで出した浮遊感のある音を曲中や曲間のつなぎに使っている。特にベースは結構曲中でも独特の音を出していたようだ。
かといって強面の大人がやっているゆるふわ系ポストメタルではまったくない。楽曲から見えるのは30年以上に及ぶ試行錯誤の歴史である。
たっぷりと時間と間をとった楽曲だが、引きずるようなドゥームさはなく、明快に区切られた音はやはりハードコア由来のスラッジだろうと思う。そこにアタックが強いが非常に明確にリズミカルでよく回転する、つまり重量感がありつつも跳ねるドラムが加わる。
原始的と言っていいようなシンプルで強靭なリズム、弦楽器のときにアンビエント、ときにラウドなアンサンブル、立体的なサウンドで時間をかけて楽曲を織り上げていく。トライバルだ。トライバルな呪文のようだ。
「Times of Grace」の「The Last You'll Know」。セットリストに入っていることは知っていたが、ライブで聞くのはやはり別格だ。私はこの楽曲が好きなんだ。厚みのある轟音が私の体にじんわり染み込んでいく。涙が出そうに。
終演後「Times of Grace」のパッチ、(オタクだから)2つ買ってこ!と思ってたら見事に売り切れだった。前の方に行きたかったから開演前に物販に並べなかったのだ。仕方ない。
個人的にとても思い入れのある2つのバンド、いっぺんに見れて幸せ。やっぱり別格だなと思いつつも、日本から迎え撃った2つのバンドも只者ではなかった。楽しかった。
live pics & live audio from ENDON:
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