1993年にZYX Musicからリリースされた。
Motörheadである。1975年に結成されたバンドでコンスタントに活動を継続し、勿論未だ現役。創立者のベーシスト兼ボーカリストのレミー・キルミスターは様々な逸話もあって最早ロック界の生ける伝説になっていて、顔を見ればあ、知っている、となる人も多いだろう。
私も勿論Motörheadのことは知っているが、ぼんやりと人生を過ごしているうちに遂に彼らの音楽については触れることなく今まで来てしまった。Foo Fightersのフロントマンで他にも様々バンドでドラムを叩いているデイブ・グロールのSouthern Lordからでたソロプロジェクト「Probot」のCDを持っていて、その中にデイブとMotörheadのレミーのコラボレーション曲「Shake Your Blood」が入っていて、それでけは聴いたことがあった。
この間メタルに関係するドキュメント映画を取っているサム・ダン氏のドキュメンタリーを見る機会があり、それはメタルの歴史を年代とカテゴリに切り分けて、その時その時活躍したいろんなバンドや関係者にインタビューしていくというものでとても面白かった。でその中にMotörheadのレミーのインタビューがあって、うーんやっぱり格好よいな、と思ったものである。当然一枚くらい買ってみようとなるのだが、何せキャリアが長いバンドだから多数ある音源からどれを買うか迷う。どれにすべいかと思っていると偶々「On Your Feet or On Your Knees」という曲を耳にして、これは格好よいな!と感動。その曲が収録されているこのアルバム「Bastards」を買ったという訳。
真っ黒いバックにバンド名とアルバムタイトル、スペードのマーク(MotörheadにはAce of Spadesという超有名な曲がある。)を背後にあしらわれたイメージキャラクターであるWar-Pigが中央に鎮座するというシンプルなジャケットが如何にも格好よい。
Motörheadはレミーは不動だが、他のメンバーについては結構変動があるようで、基本はシンプルな3人体制だが、このアルバムを出したときは4人体制だったようで、なるほどギターが2本な分音の厚さや曲の作り方はどっしりしたもの。
WikiによるとMotörheadの音楽性はなかなかどうしてカテゴライズが難しいそうだ。確かに「爆走ロックンロール」みたいに紹介されているような印象があって、実際に聴いてみるとパンッキシュだがパンクではないし、メタルの成分はあるがそれでは何メタルなのだ?という感じでなるほど、たしかにちょっとコレだ!というのは難しい。
ギターはハードロック然とした音作りでギラリとしてちょっと湿り気のある音で艶っぽい。たまに挿入されるギターソロもクラシカルなハードロックの要素があるが、全体的にメタルほどゴテゴテやり過ぎない様なバランス感覚。メタリックなリフにパンキッシュな疾走パートの組み合わせが自然で格好いい。
ベースはソリッドな低音でよく聴いていると結構動き激しい。ギターミュートを使ったメタリックなリフで緩急をつけるが、ベースはシンプルかつ大胆に動き回る印象。ただしこちらもテクニックのひけらかしは皆無のいぶし銀なスタイル。
ドラムは力強く重々しいが、メタルのそれほど低音重視ではなく、徹底的にノリ重視。爆走ロックンロールの由来はドラムとベースの気持ちよさじゃないかと思う。バスンバスン兎に角気持ちよい。ちなみに前述のサム・ダン監督のドキュメンタリーだと確かツーバスを踏むのはMotörheadが一番最初!(このアルバムでは多分ドラマーはその人じゃないんだろうけど。)と紹介されていた。オリジネイター!
ボーカルは言わずと知れたバンドの顔役レミー。何ともいえない年季の入っただみ声で酒焼けなのかわからないが、兎に角独特。吐き出すように歌うそのスタイルは男臭いが、不思議と耳になじむように心地よい。渋く老獪な反面ちょっと年を感じさせないやんちゃな感じもして格好よい。
曲の方は結構その作りに幅があって、スピードが速めで爆走ロックンロールを体現したように突っ走る曲。中速でずっしりしつつもノリとグルーブで体を跳ねさせる様なハードロック調の曲。アコースティックギターを大胆に取り入れたしっとりしたバラード。ジャケットはシンプルながらも内容は結構バラエティに富んでいる。共通しているのは爆音で暴力的な中にもポジティブなエネルギーが横溢していることで、その音楽性たるやテクニカルにして単純明快、その中心には心臓を飛び跳ねさせる様なノリが鎮座している様な作りで、聴いていると元気になってくる。自然とからが動いて頭を振ってしまう。こりゃー気持ちがよいぜ。
というわけで言わずと知れたMotörheadは噂に違わずすばらしく、その巨人っぷりにただただ圧倒された次第。名前は知っているけど聴いたことないや、という人は是非どうぞ。