2014年にSumerian Recordsからリリースされた1stアルバム。
Crossesはオフィシャルサイト含めて†††という記号で表記されたりしている。
また曲のタイトルには1曲(その1曲だけは十字架文字一個でタイトル。)をのぞきすべてTの文字が含まれていて、それが前述の十字架の特殊文字に置き換えられている。
2011年にChinoの幼なじみの友人で隣人だったFar(Deftonesと共演することもあったそうな。)というバンドのギタリストShaun Lopezと謎の男Chuck Doom(この記事によるとサウンドエンジニアだったんだろうか。)の3人で結成。今までにネットでEPを2枚発表していて、今回のアルバムはそのEPからの曲も含めた構成で発表された。
バンド名の記号表記や全体的にモノクロを基調としたややぶっきらぼうでシュールなデザインセンスからするとウィッチハウスか?という疑問が当然起こる訳で。たしかに2011年といったらそこら編が盛り上がった時期。お、流行に乗った?という印象。
たしかにエレクトニクス主体の曲の構成の中でも、もったりとした独特のビート、空間的広がりのあるシンセ音などなどはウィッチハウスの影響下にある要素といえるけど、ちょっと曲を聴けばこのプロジェクトがビッグネームが単に流行に乗ってみただけの軽薄なバンドではないことはすぐにわかると思う。
はっきりいって全体を通してウィッチハウスだと断言する奴はいないんじゃないだろうか。なぜかって簡単でこのバンドの曲はすべてロックの手法で作られている。ギターは入っているもののドラム、ベースのバンド編成ではない。音自体は繰り返しになってしまうがエレクトロニクス主体で作られているのだが、曲自体はロックの解釈である。
冷徹な機械由来ビート(曲によって結構バリエーションがあって面白い。)が比較的ゆったりとした土台を作り、余韻を残すような独特のシンセ音徐々に広がっていく。そこにChinoの歌声が乗ってくるのだが、これがもう完全にChinoが歌っているのだ。変に気取っている訳じゃない。エフェクト盛りだくさんにする訳ではない。スクリーム成分はきわめて少なめ(なくはない。)であの独特の歌声で艶やかにかつ伸びやかに歌い上げるのである。むしろDeftonesと比べるとバックの演奏陣がそこまで饒舌ではないから(つまらない訳ではない、種類が違うのだ。)、より歌声に比重がよるようなイメージ。
Deftonesのスクリームはそれはすばらしいものだが、すこしウェットな感じのChinoの歌声は歌ものにすごいあう。ISISのメンバーと組んだ別プロジェクトPalmは孤高なイメージがあって曲もアーティスティックだが、こちらはもっとのびのび自由に歌っている感じ。
さらにバックの演奏陣がかなりマニアックにかつ成功に音を作っているので単にPopで売れ線な歌ものに成り下がらないところが面白いところだろうか。ウィッチハウスの影響を飲み込みつつその豊富な音楽キャリアによって(ウィッチハウスの)そのアクの強い音楽性を消化した上に、さらに独自の指向性を持たせている。
日和ったサイドプロジェクトと思うなかれ。Palmもすごかったがこちらもかなりすごい。
Deftonesファンは勿論、ちょっと変わった音楽好きな人にもお勧めできるとても良いアルバム。
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