2014年3月16日日曜日

SIMI LAB/Page2:Mind Over Matter

日本のHip-Hop集団SIMI LAB(シミラボ)の2ndアルバム。
2014年にSummit(自主レーベルかな?)とP-Vine Recordsからリリースされました。
私が買ったのはハンディカメラで撮影したドキュメンタリーDVDがついている特別版。
前作「Page 1 : ANATOMY OF INSANE」はこのブログでも紹介しましたが、そこから3年ぶりの新作ということに。「狂気の解剖学」から今回は「事象を超えた精神」でしょうか。前作リリース後リーダーでもあったQNが脱退し(あまり良くない分かれ方だったようですが仲直りしたのかな…DVDでも脱退についてちょっと触れられてます。)、メンバーにも変遷が生じているようです。元々メンバーは結構沢山いてこれだ!って感じはない曖昧な感じだったと思うので、今回のアルバムに参加してる面々を紹介すると新リーダーOMSB、DyyPRIDE、MARIA、Hi'Spec、JUMA、USOWAは変わらずですが、新しくDJ ZAI、RIKKIが加わりました。

さて前作の後各々ソロ作品をリリースしたりしてスキルもあがっている期待感が自然に高まってくる今作、音の方はというとより深化した感じ。ファーストがどのくらい売れたのかはわからないけど、ヒップホップに詳しくない私が買ったくらいだから結構話題になったんじゃないだろうか。さすがに天狗になって日和るには早過ぎですが、それにしてもよりハードコアに研ぎすまされた新作になりました。ジャケットの雰囲気も前作が外で明るかったですが、今作は屋内で暗いものになっております。
全体的にトラックは音の数が減り、ビートがさらに強調されている印象。シンプルな作りながらも菊地成孔がサックスで参加したりしていて曲の幅が広がりました。曲によっては結構ノイジーな音が使われたりしていて意表をつく展開。
要するに格好いいトラックを作りつつも、やはりラップそのものを小細工で隠すことなく前面に打ち出したガチンコなつくりになっております。
みんなそれぞれ味があって格好いいのだけど特にDyyPRIDEとJUMAがよかった。
DyyPRIDEは相変わらず下ねたジョークで隠しつつ求道者めいた哲学を打ち出してくるスタイルでねっとりしたラップがよりスピードを増して偉いことに。
JUMAはちょっと不安定なところあるかな?と思っていたけど今作では露骨に上手くなったと思います。ちょっとひょうきんな言葉回しと跳ねるようなリズムが良い緩衝剤になっていて、紅一点のMARIAとともに結果曲の幅がぐっと広がっていると思います。

前作では日本という国で生活するハーフというある意味アウトサイダーな視点で、目立たないだけで確実に日本にも存在する人種差別を受けた経験をバネにヒップホップというフォーマットで彼らなりの鬱屈を見事にリリースした作品でした。俺たち変わっているけど何か?というまさに自己紹介的なアルバムだったと思いますが、今作ではそこからもう一歩進み、疎外感は引き続きモチベーションにしつつ、そこだけにとらわれない前向きなものになっています。面白いのはリードトラックの「Avengers」みたいにバキバキした攻撃的なトラックもありつつ、自己の内面に深く切り込んでいく様な内省的なトラックがアルバムの中で同居しているところ。1stでもその傾向もありましたが、今作ではよりその傾向が強くなった印象ですね。さらにその2つの要素を見事に融合させた様な楽しく聴けるんだけど、ストイックな雰囲気を持つ曲がすらっと出てきたり、これは面白い。特にタイトルトラックの「Mind Over Matter」と続く「Worth Life」は彼らの本領発揮という感じでベラボウに格好よいです。

今作も文句なしにすばらしい内容ですね。前作聴いたときも思ったんですが、ネガティブな主題を中心に据えつつ、やっぱり前向きな印象なんですよね。
ひねくれているんですけど、腐ることなくそのメッセージはまっすぐ前向きで聴いていて気持ちがいい感じ。
普段ヒップホップを聴かない人も是非どうぞ。オススメのCDです。

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