アメリカ合衆国サウスカロライナ州マートルビーチのブラックメタルバンドの2ndアルバム。2018年に自主リリースされた。
またくどいバンド名である。「僕のあなたに対する最も純粋な心」。調べてみるとマートルビーチというのはアメリカ南東部のリゾート地のようだ。とても綺麗なところだ。君、もっと外に出てきたらどうだ、泳いできなさい、と親戚の叔父さんになっていってあげたい気持ちもある。輝かしい土地で部屋にこもってこういう音楽を作るやつもいるのである。全く最高だ。バンドと称したがメンバーなどは非公開でよくある変名どころかメンバーの人数も不明。2016年にデモを発表して以来、活発に活動しているようだ。(多分ライブはやっていない。)
どんな地下音楽でも流行り廃りというものが露骨にあって、そのムーブメントは「もう聞き飽きたぜ?」と玄人のしたり顔で敬遠されたりもするのだが、雨後の筍が枯れた後その土壌からまた新たな音楽が生まれることもまた確かだ。
このMy Purestもそんなバンドのような気がしている。ブラックゲイズだ。シューゲイザーにブラックメタル由来のトレモロを合体させたツエーやつで、世界中の根暗たちがこの音楽性に魅了された。もともと小汚い、危険、(ともすると)キモいという3K音楽たるブラックメタルから派生したという生まれながらの対照性もあってか、ブラックゲイズは掃き溜めに生まれた鶴のようなエモさがあった。マートルビーチに住む何がしかはそこに最も純粋な心を見つけたのだろう。(おそらく)根っからのブラックメタル・ファンである彼がこの音楽性にコンバインしたのはデプレッシブ(憂鬱な)・スーサイダル(自殺的)・ブラックメタルだった。それもかなり過酷でトゥルーなやつをだ。厭世観と自己嫌悪を音楽にして吐き出した音楽。吊り縄やリストカットされた手首をモチーフにしたアートワーク。あの世界観によりにもよってブラックゲイズをくっつけたのだ。確かに全編を覆うのはトレモロ、トレモロ、トレモロの嵐である。しかしガリガリとしたプリミティブな音質。ドゥームとまではいかないがすっきりとしないゆったりとした速度。マイナーなコードを使っているのかわからないが、爽快感を与えるはずのトレモロもやけに陰鬱に響いてくるのである。ボーカルは金切り声でずっと叫んでいる。全く抑揚などあったものではない。キャッチーな要素である「ゲイズ」の背後にあるのは確かにDSBMの息吹であった。チェコのTristをなんとなく私には思い出させる。あの荒涼としたモノクロの景色。
例えばAn Autumn for Crippled ChildrenがDSBMを飲み込んでほの明るい地平線を目指したのに、My Purest Heart For Youは明るい要素を用いているのにさらにDSBMのくらい渦に降下していくようである。私がブラックゲイズ学の講師なら「これは悪い例ですね〜」と生徒たちに紹介するだろう。しかし私はどこの先生でもないのでこの音楽に耽溺することができる。くらい情念がメエルシュトロムのように下に下に渦巻いていく。不健康な重力があなた方を優しく押さえつけるだろう。
2018年11月24日土曜日
2018年10月8日月曜日
Nothing/Dance On.The Backtop
アメリカ合衆国ペンシルベニア州はフィラデルフィアのシューゲイザーバンドの3rdアルバム。2018年に引き続きという形でRelapse Recordsからリリースされた。
前作リリース後にベーシストが交代。来日した時に見たのだが、色白の長髪で子供の落書きのような可愛いタトゥーが腕に入っているのが印象的なNickBassestt(この人はDeafheavenやWhirrのメンバーでもあった。あまり一つのところにじっとしていないタチなのかもしれないね。)に変わり、Jesus Pieceのフロントマン(ボーカル)のAaron Heardがその穴を埋めた。Jesus Pieceは同じくフィラデルフィアのバンドで私もデモ音源を聴いているがかなり強面なハードコアだ。ここら辺の人選は元々ハードコアバンドのメンバーとして活動していたDomenic Palermoによるものだろうか。
一聴したところどちらかというと前作「Tired of Tomorrow」を引き継ぐものかと思ったが、何回か聴いてみると音の作り的には1stの「Guilty of Everththing」に近い。というのもわかりやすく分厚い音に埋もれるようなシューゲイザーをやっている。ボーカルにリヴァーブのような空間系のエフェクターをかましているからか?と思ったが、2ndを聴いてみるとそちらでもかけていた。MVも作られた「Eaten By Worms」(私はこの曲がすごい好きだ)は轟音的な意味では確かにシューゲイザーだが、硬質な音の作り方はどちらかというとオルタナティブ/ハードコアを感じさせた。そこらへんの印象もあって「Tired of Tomorrow」は結構ソリッドなイメージ。対するこの新作は改めてサウンドプロダクションを1stの頃に立ち返らせた感じ。
ただし音の軽さ、というか音の抜き方というか、肉抜きの仕方は2nd的であの低音が重たくのしかかる1stとはやはり印象は異なる。シューゲイザーというそもそもからして陰気なジャンルで、暴行罪で前科アリという自らのハードコアな来歴をフルに使ったリアルな陰鬱さ(「俺は銃は持っていないし膝をついているがお前は俺を撃つだろうね」と警察官に対して思いを述べるタイトル曲)を構築してきたバンドがNothingだけど早くも2ndでは「Vertigo Flowers」なんかではそこにとどまらない世界観を出してきた。(前述の「Eaten By Worms」などでしっかり陰鬱さを表現しつつ。)今作でも特に苦しいふりはしないとばかりに陰鬱な曲のみを量産する内容ではない。「Hail on Pakace Pier」なんかは前述の開放感の次の作風だし、壁のような轟音にも拘泥を見せずに8曲目「The Carpenter's Son」などはむしろ音の数を究極に減らし、もったりとしたアルペジオで曲を引っ張っていく。ドラム以外のパートにはリヴァーブがかけられており、全てがスローモーションだ。轟音で眩惑する流行のゲイズ系とは明らかに一線を画す。シューゲイザーでは多用されるやり方なので、音楽的なもう一つ(もう一方は出自でもあるハードコア)のルーツである、そちらに接近しているのだと思う。
個人的にはどうしても「Dig」でやられたクチなのであの重たくのしかかるような、聴いていると音の波に浮かぶじゃなくて、むしろ実体を持ったそれに圧殺されるような、閉塞感を持った轟音がどうしても懐かしく思えてしまうが、それでも「Blue Line Baby」などの高揚感にはやられてしまう。好きなバンドだからしようがない。
2016年5月29日日曜日
nothing/Tired of Tomorrow
アメリカはペンシルバニア州フィラデルフィアのシューゲイザーバンドの2ndアルバム。
2016年にRelapse Recordsからリリースされた。
私が買ったのはボーナストラックが2曲追加されたデラックス版(のデジタル)。
2014年にリリースされた1stアルバム「Guilty of Everything」はシューゲイザーの手法に乗っ取りながらも、元ハードコアという出自をいかした不穏かつ、同ジャンルの文系かつ芸術的なそれとは一線を画す、完全に体育会系ヤンキー(というか前科者)節なフィジカルな暴力をにおわせるノイズを鳴らす希有な音楽スタイルで持って結構受けたのではなかろうか。かくいう私も未だに良く聴くお気に入り盤なので、この2ndも多大な期待を持って購入。
「明日に飽きた」という非常に厭世的なタイトルでニヤリとさせられるが、曲目の方も「死人に口無し」、「ウジ虫に喰われて」など退廃的というよりはやはり陰惨さを感じるタイトルが並んでいる。
聴いてみると大分メジャー感が増したように思った。端的に言うと曲調は明るくなり、地下臭さとノイズ分は減退した。代わりに王道なシューゲイザー成分が前面に押し出されている。ディストーションのかけられていないギターも結構使われているし、ピアノやストリングスも大胆かつ効果的に取り入れられている。楽器陣の音量が下がった訳ではないのだが、閉塞感がなくなり、大仰とはさすがに言えないけどぐっと広がりがでた印象。
ボーカルに関してもよりシューゲイザーっぽくなったのではなかろうか。喧しいバックの演奏と反比例するように儚さが増しているように思う。曲によってはそれこそMy Bloody Valentineぽいなと思う事もあったり。
真っ白いつなぎを着たメンバーが絵の具をぶちまけられるという、なんとなくありがち(具体的に思い浮かばない自分が悔しいのだが)な映像が衝撃的な先行シングル「Vertigo Flowers」はとくにこのメジャー化を象徴しているナンバーでなんとなくハッピーな感じすらする。
メジャー感は増しているのにインディー感漂うというのは変な話だけど、結構インディーロックな感じ(というのもインディーロックをあまり聴かないので。あっているかわからない)。ハードコアを通過した凶暴さと(ノイズなどの)装飾性は削ぎ落とされ、シンプルな中に生活感というか自然さが顔を出した。シューゲイザー独特の浮遊感がまし、余裕ができた隙間に詩情があると思う。
一方でこちらもMVが作られている「Eaten by Worms」は(そのビデオ映像もそうだが)、暗く陰鬱で暴力的なnothingを象徴した曲で、大胆に取り入れられたピアノは新境地だがぽつぽつ呟かれるように歌われる不穏な歌詞とざくざく刻まれていく分厚いギターリフ、静寂を挟んでノイズにまみれる後半など、このバンドの真骨頂の一つではなかろうか。この曲私はとても好きですね。
非常に良く出来たアルバムでこちらの方向転換も上手く行ったのだと思う。すっと聴けて気づくと結構リピートしている。
じゃあ素晴らしいアルバムかというとちょっと難しい。ここからは完全に好みの問題なのだろうが、個人的にはこのアルバムはとても好きだが、このままこの路線をつき進められたらちょっと厳しいかもしれない。私は(多分少数派なんだろうと思うが)個人的にはノイズとディストーションにまみれた黒いnothingの方が圧倒的に好きだ。(つまりこの2nd、バランスがとれた良いアルバムであることに異存はない。)だから「Eaten by Worms」の用な曲がこの先作られないのであるならそれは寂しい。nothingは挫折を経た、挫折を歌ったバンドじゃないだろうかと思う。1stアルバムでは白旗が掲げられていた。そしてタイトル曲では「俺は跪いている 俺は銃は持っていない なんならしらべてくれよ でも結局あんたは俺を撃つだろうな」とまさに警察に逮捕されるその時を歌った様な世界観であって、その挫折、その後悔、そんな負の感情をノイズにのせて押し出していた。1stと全く同じ音楽を求めるのはさすがにどうかと思うが、もうちょっとここら辺を突き詰めても欲しいものだと思う。
という訳で思い入れが強い分余計な事も書いてしまったが、期待を裏切る良いアルバムだった。CDかできるならアナログが欲しいな。このバンドが気になった人はまずこちらを買うのが良いかもしれない。
2016年にRelapse Recordsからリリースされた。
私が買ったのはボーナストラックが2曲追加されたデラックス版(のデジタル)。
2014年にリリースされた1stアルバム「Guilty of Everything」はシューゲイザーの手法に乗っ取りながらも、元ハードコアという出自をいかした不穏かつ、同ジャンルの文系かつ芸術的なそれとは一線を画す、完全に体育会系ヤンキー(というか前科者)節なフィジカルな暴力をにおわせるノイズを鳴らす希有な音楽スタイルで持って結構受けたのではなかろうか。かくいう私も未だに良く聴くお気に入り盤なので、この2ndも多大な期待を持って購入。
「明日に飽きた」という非常に厭世的なタイトルでニヤリとさせられるが、曲目の方も「死人に口無し」、「ウジ虫に喰われて」など退廃的というよりはやはり陰惨さを感じるタイトルが並んでいる。
聴いてみると大分メジャー感が増したように思った。端的に言うと曲調は明るくなり、地下臭さとノイズ分は減退した。代わりに王道なシューゲイザー成分が前面に押し出されている。ディストーションのかけられていないギターも結構使われているし、ピアノやストリングスも大胆かつ効果的に取り入れられている。楽器陣の音量が下がった訳ではないのだが、閉塞感がなくなり、大仰とはさすがに言えないけどぐっと広がりがでた印象。
ボーカルに関してもよりシューゲイザーっぽくなったのではなかろうか。喧しいバックの演奏と反比例するように儚さが増しているように思う。曲によってはそれこそMy Bloody Valentineぽいなと思う事もあったり。
真っ白いつなぎを着たメンバーが絵の具をぶちまけられるという、なんとなくありがち(具体的に思い浮かばない自分が悔しいのだが)な映像が衝撃的な先行シングル「Vertigo Flowers」はとくにこのメジャー化を象徴しているナンバーでなんとなくハッピーな感じすらする。
メジャー感は増しているのにインディー感漂うというのは変な話だけど、結構インディーロックな感じ(というのもインディーロックをあまり聴かないので。あっているかわからない)。ハードコアを通過した凶暴さと(ノイズなどの)装飾性は削ぎ落とされ、シンプルな中に生活感というか自然さが顔を出した。シューゲイザー独特の浮遊感がまし、余裕ができた隙間に詩情があると思う。
一方でこちらもMVが作られている「Eaten by Worms」は(そのビデオ映像もそうだが)、暗く陰鬱で暴力的なnothingを象徴した曲で、大胆に取り入れられたピアノは新境地だがぽつぽつ呟かれるように歌われる不穏な歌詞とざくざく刻まれていく分厚いギターリフ、静寂を挟んでノイズにまみれる後半など、このバンドの真骨頂の一つではなかろうか。この曲私はとても好きですね。
非常に良く出来たアルバムでこちらの方向転換も上手く行ったのだと思う。すっと聴けて気づくと結構リピートしている。
じゃあ素晴らしいアルバムかというとちょっと難しい。ここからは完全に好みの問題なのだろうが、個人的にはこのアルバムはとても好きだが、このままこの路線をつき進められたらちょっと厳しいかもしれない。私は(多分少数派なんだろうと思うが)個人的にはノイズとディストーションにまみれた黒いnothingの方が圧倒的に好きだ。(つまりこの2nd、バランスがとれた良いアルバムであることに異存はない。)だから「Eaten by Worms」の用な曲がこの先作られないのであるならそれは寂しい。nothingは挫折を経た、挫折を歌ったバンドじゃないだろうかと思う。1stアルバムでは白旗が掲げられていた。そしてタイトル曲では「俺は跪いている 俺は銃は持っていない なんならしらべてくれよ でも結局あんたは俺を撃つだろうな」とまさに警察に逮捕されるその時を歌った様な世界観であって、その挫折、その後悔、そんな負の感情をノイズにのせて押し出していた。1stと全く同じ音楽を求めるのはさすがにどうかと思うが、もうちょっとここら辺を突き詰めても欲しいものだと思う。
という訳で思い入れが強い分余計な事も書いてしまったが、期待を裏切る良いアルバムだった。CDかできるならアナログが欲しいな。このバンドが気になった人はまずこちらを買うのが良いかもしれない。
2016年5月15日日曜日
Dälek/Asphalt for Eden
アメリカはニュージャージー州ユニオンシティのエクスペリメンタルヒップホップユニットの7thアルバム。
2016年にProfound Lore Recordsからリリースされた。一風変わっているメタルを聴いている人ならお?とくるレーベルである。Proufound Loreといったらブラックだったりデスだったりとマニアックなカテゴリの中のさらに尖ったバンドの音源を多数リリースするレーベルだからだ。ヒップホップといってもやはりかなり特徴的な音を出すに違いないだろうな、と思って気になり視聴してかっこ良かったのでデジタル版を購入。因に調べてみると以前のアルバムは”あの”マイク・パットンの運営するIpecacからリリースしていたみたいでなるほどな〜という感じである。
Dälekの作品を聴くのはこれが初めて。結成は1998年で一回の解散を経ての地裁結成して活動しているようだ。何回かメンバーチェンジはあったようだがMCを勤めるMC Dälekは結成当時からオリジナルメンバーのようだ。
その音楽性は独特でなんとたびたびMy Bloody Valentineを引き合いに出して説明される。ヒップホップがなんたるかを語れるほど詳しくないのだが、ことヒップホップという音楽ジャンルとなるとサンプリング文化に根付いた、比較的音の少ないトラックの上に執拗に韻を踏んでいくラップをのせていくもの、ということになるだろうか。
Dälekの場合も韻を踏んでいくラップは確かに伝統的なヒップホップの手法に乗っ取っている。しかしその背後でなるトラックがかなり独特である。サンプリングという手法がとられているかどうかは不明なのだが(多分違うんじゃないかなと思うんだが、どうだろうか)、ヒップホップに特有の歯切れの良い音のぶった切り(パーカッシブな音野津買い方)では全く構成されておらず、概してもっと浮遊感のある、かなりの厚みがある、そして途切れのない音が多く使われている。なるほどギターの轟音を壁のようにそそり立たせるMy Bloody Valentineが引き合いに出されるのもわかる音作りである。さすがにロックミュージックほどのラウドさはないものの、明らかにちまたのヒップホップと一線を画すその音は、ドリーミィであり、また暗く内省的だ。ただし、ヒップホップの肝であるリズミカルな要素は一切オミットされておらず、カッチリとしたドラムが刻みだすビート、そこにのる太く中音が強調された声で滑るように紡がれるラップが乗る。そうすると変幻自在にその形を刻一刻と変えていくノイジーなトラックが、寄せ手は返す波の様な効果を持って聞き手はゆったりと深く誘われるように深海に沈み込んでいく。この気持ちよさはなるほど、シューゲイザー的であり、かつそれらを使う一般的なロックバンドが生み出す音風景はまた異なったものだ。
シューゲイザーというとどうしてもロック的な音像を思い浮かべてしまうし、結果的にロックにアプローチしたミクスチャーの要素のあるヒップホップというのがなんとなくの先入観だったのだが、果たして実際聴いてみると完全にシューゲイザーなヒップホップであり、全く持って嬉しい期待への裏切りだった。なるほど今となっては色々な形のヒップホップが世にあふれている訳だが、その中でもこのDälekは相当変わった音を出しているように思う。似た音というのは知らないし、なんせ98年から活動しているのだから。
内省的で物語性に富んだヒップホップというと日本の降神を思い浮かべてしまうが、あれとは全く違った音で底のところも面白い。
不穏さ、というあまりヒップホップでは表現されない感情に深く切り込んだ内容で大変カッコいい。是非どうぞのオススメアルバムです。
2015年3月7日土曜日
Planning for Burial/Desideratum
アメリカはニュージャージー州マタワンのシューゲイザーアーティストによる2ndアルバム。2014年にThe Flenserからリリースされた。
Plannning for Burialはこれが聴くの初めてだが、調べてみるとThom Wasluckという方のソロプロジェクトらしい。
アルバムのタイトル「Desideratum」どこかで見た事あるなと思ったら、この間紹介したAnaal Nathrakhの最新アルバムでも同じタイトルが冠せられていた。調べると意味は「切実な要求」という事らしい。
さて音楽の方はというとジャンルで言えばポストメタルなんだろうが、シューゲイザーとカテゴライズしても遜色の無い音楽であると思う。音的には確かにそうだし、シューゲイザーの持つドリーミーな雰囲気を内省的で暗い方向性に思い切り舵を取った作風になっている。こう書くと昨今流行のブラックメタルへの影響が気になるところではある。たしかにブラックメタルを彷彿とさせる箇所も部分部分であるが、どちらかというと個人的にはドゥームメタルっぽいな、と。曲の速度が遅めというよりは独特のもったりとしたギターの運び方間の取り方がドゥームメタル。
ただブラックメタルにしてもドゥームメタルにしてもそれらの攻撃性は期待できない。攻撃性が無い訳ではないのだが、それも内側にめり込んでいく様なメランコリックなもので、外的なものではない。轟音の中にゆったりと沈んでいく様な、そんな音楽である。
空間性が意識された音楽で、一番目立つのはやはりギターの分厚く、やや粒子の粗い音だろ。もっと繊細な音にも出来るのだろうが、敢えてこのように若干荒々しさを持った音を選択しているのだろうと思う。フィードバックノイズはほぼ必須という感じで全編程よく彩っている。エコーのかかった気怠いボーカル、良く唸り伸びる様なベース、そして霧のように静かに足下に停滞しているシンセ音。ボーカルは一歩に弾いた感じで、どの曲も声が入らないパートの方が圧倒的に長いと思う。
個人的にはラストを飾る16分の大曲「Golden」が筆舌に尽くせないほど美しい。ノイズから始まった曲がミニマルなリフを繰り返しながら次第にその音を厚く厚くさせていく。ボーカルは呟く様なものが入るだけで歌は皆無である。耳障りな様々なノイズの洪水にぶわーーっと浸っている様な気持ちよさである。たまらん。桃源郷。
全5曲でその内間に挟まれた2曲はインタールード的なもんだからちょい物足りない。まあでも自己紹介的にはすっと聴ける良い音源ではなかろうか。次回作がどんなもんか速くも気になりますね。暗くて五月蝿いけど独特の美しさがキラリと光る良い音源だと思います。メランコリック轟音。オススメっす。
Plannning for Burialはこれが聴くの初めてだが、調べてみるとThom Wasluckという方のソロプロジェクトらしい。
アルバムのタイトル「Desideratum」どこかで見た事あるなと思ったら、この間紹介したAnaal Nathrakhの最新アルバムでも同じタイトルが冠せられていた。調べると意味は「切実な要求」という事らしい。
さて音楽の方はというとジャンルで言えばポストメタルなんだろうが、シューゲイザーとカテゴライズしても遜色の無い音楽であると思う。音的には確かにそうだし、シューゲイザーの持つドリーミーな雰囲気を内省的で暗い方向性に思い切り舵を取った作風になっている。こう書くと昨今流行のブラックメタルへの影響が気になるところではある。たしかにブラックメタルを彷彿とさせる箇所も部分部分であるが、どちらかというと個人的にはドゥームメタルっぽいな、と。曲の速度が遅めというよりは独特のもったりとしたギターの運び方間の取り方がドゥームメタル。
ただブラックメタルにしてもドゥームメタルにしてもそれらの攻撃性は期待できない。攻撃性が無い訳ではないのだが、それも内側にめり込んでいく様なメランコリックなもので、外的なものではない。轟音の中にゆったりと沈んでいく様な、そんな音楽である。
空間性が意識された音楽で、一番目立つのはやはりギターの分厚く、やや粒子の粗い音だろ。もっと繊細な音にも出来るのだろうが、敢えてこのように若干荒々しさを持った音を選択しているのだろうと思う。フィードバックノイズはほぼ必須という感じで全編程よく彩っている。エコーのかかった気怠いボーカル、良く唸り伸びる様なベース、そして霧のように静かに足下に停滞しているシンセ音。ボーカルは一歩に弾いた感じで、どの曲も声が入らないパートの方が圧倒的に長いと思う。
個人的にはラストを飾る16分の大曲「Golden」が筆舌に尽くせないほど美しい。ノイズから始まった曲がミニマルなリフを繰り返しながら次第にその音を厚く厚くさせていく。ボーカルは呟く様なものが入るだけで歌は皆無である。耳障りな様々なノイズの洪水にぶわーーっと浸っている様な気持ちよさである。たまらん。桃源郷。
全5曲でその内間に挟まれた2曲はインタールード的なもんだからちょい物足りない。まあでも自己紹介的にはすっと聴ける良い音源ではなかろうか。次回作がどんなもんか速くも気になりますね。暗くて五月蝿いけど独特の美しさがキラリと光る良い音源だと思います。メランコリック轟音。オススメっす。
2014年3月9日日曜日
Nothing/Guilty of Everything
アメリカはペンシルベニア州フィラデルフィアのシューゲイザーバンドの1stアルバム。
2014年にRelapse Recordsからリリースされた。
Relapseといえばグラインドコア、ドゥームメタルを始め数多のエクストリームなメタルバンドを輩出してきた名門レーベルだが、昨今ではメタル以外にもその手を広げているようですなー。
「すべてにおいて有罪」というタイトル。真っ黒な背景に白い旗がはためくジャケットが印象的。真っ黒い旗はアナーキスト達のシンボルだが、真っ白い旗はいうまでもなく降伏のシンボルであるから、なかなかどうしてこれは一筋縄でいかなさそうではないか。
私とこのバンドの出会いは、昨年Relapseと契約したことがアナウンスされ、来るアルバムに向けて「Dig」という曲が公開された。確かBandcampで買ったのだが、無料でダウンロードしたのか忘れてしまったが、なんとなく入手したその音源にま〜〜やられてしまったのである。ざらついた轟音ギターにリバーブのかかった様なボーカルが乗るスタイルは間違いなくシューゲイザーであるが、しかしこの独特の暗さと憂いを満ちた儚さはどうだ。
私は「Dig」をヘビーローテーションしフルアルバムを心待ちにしたのだった。
そして2014年3月まさに満を持してリリースされたこのアルバムを聴けるということの嬉しさである。
ジャンルとしてはシューゲイザーということでよろしいかと。
歪めて音量をマックスにした様な轟音ギターにともすればバックの演奏にかき消されそうなな物憂いボーカルが乗るというスタイル。
ドラムは乾いた音でドタタドタタと結構重めにビートを刻むスタイル。
ベースは輪郭を曖昧にした様なもうろうとした音で水面下に潜むクジラのようにゆったりうねる。
ギターは粒子の粗いざらついた音で歪められた音が曲を引っ張る。フィードバックノイズも多めなラフな音像。
ボーカルは男性の声がベールの向こう側から聴こえるようにくぐもって浮遊感がある。
これらが一体となって曲を作っていく訳なのだが、もう全体に漂う憂鬱な感じがたまらない。シューゲイザーの魅力の一つに耽美な儚さと暴力的な演奏との相克があると思うのだ。音は凶暴なはずなのに、全体で聴くとドリーミィな方向に舵を取るバンドが多い中、このバンドNothingの暴力性はどうしたことだ。まるで破壊衝動の爆発のようだ。分厚い音が放射状に空間を埋め尽くさんとする執拗性、そんな凶暴さがあると思う。巨大な伽藍に響く様なエフェクトがかかったギターの引っ張る様な渦を巻く様なフレーズ。
その劇的な負の感情を無理矢理ねじ曲げてシューゲイザーという枠に押し込んだ様な、ともすると強引なその音楽性にはひたすら感服するしかね〜。安易に暴力的な音楽性をあえて採らず、なぜこの演奏にそのボーカルを…と驚嘆するそのひねくれたセンス。
この間紹介したAlcestは光に向かい外に飛び出したが、こいつらはひたすら暗く自分を掘り進んだようだ。これは偉大な空虚のような、そんな凄まじい憂鬱さが曲に横溢している。
一体なんでこんな音を鳴らすのだ、と疑問に思ってバンドのことを調べると結構面白いことがわかった。(以下は英語版のwikiの情報によりますのでひょっとしたら間違いがあるかもしれませんことご了承ください。)このバンドNothingは2011年Domenic Palermoという人物を中心に結成された。彼は以前Horror Showというパンクバンドを組んでかのDeathwishから音源をいくつかリリースしていたが(Deathwishのホームページで何曲か視聴可能です。なかなかハードコアパンクですな。)、喧嘩相手を刺してしまい凶器による傷害と殺人未遂で逮捕、2年刑務所に入ることに。出所後4年間彼は人生をどうしたら良いのかわからなくなり、毎日死ぬことも考えたが、ようやっとまた音楽をやることにして結成したのがこのバンドだそうな。劇的な話だが「間違いを犯してしまった男がバンドでもう一回やり直す」話にしては簡単すぎるよな〜。喧嘩とはいえ人を刺してしまうというのはこれはもう犯罪だもん。良い話として賛美するには重すぎるよね。私としてはさされた人とDomenicが死ななくて本当に良かったと思うよ。そういったドラスティックな経験がこのバンドの破壊的な反面妙に諦観めいた空虚さを抱え込んだ音楽性をすこしは説明するよすがとなるのかもしれないね。
という訳でオイオイこれはスゲエ。予想より大分スゲエ。Alcestの新作もすばらしかったが、個人的にはざらついて救いのないこちらにもシューゲイザーというジャンルの新しい地平線を見たようだ。Alcestの新作を買った人は是非こちらも聴いてほしいと強く思う。
いやいやいや3月にしてもの凄いCD買ってしまったな、という感満載の超オススメ盤。たくさんの人に聴いてもらいたいね。さあはやく買うんだ。
Bandcampでアルバムの曲が視聴できる。兎に角「B&E」という曲を聴いてみてほしい。
2014年にRelapse Recordsからリリースされた。
Relapseといえばグラインドコア、ドゥームメタルを始め数多のエクストリームなメタルバンドを輩出してきた名門レーベルだが、昨今ではメタル以外にもその手を広げているようですなー。
「すべてにおいて有罪」というタイトル。真っ黒な背景に白い旗がはためくジャケットが印象的。真っ黒い旗はアナーキスト達のシンボルだが、真っ白い旗はいうまでもなく降伏のシンボルであるから、なかなかどうしてこれは一筋縄でいかなさそうではないか。
私とこのバンドの出会いは、昨年Relapseと契約したことがアナウンスされ、来るアルバムに向けて「Dig」という曲が公開された。確かBandcampで買ったのだが、無料でダウンロードしたのか忘れてしまったが、なんとなく入手したその音源にま〜〜やられてしまったのである。ざらついた轟音ギターにリバーブのかかった様なボーカルが乗るスタイルは間違いなくシューゲイザーであるが、しかしこの独特の暗さと憂いを満ちた儚さはどうだ。
そして2014年3月まさに満を持してリリースされたこのアルバムを聴けるということの嬉しさである。
ジャンルとしてはシューゲイザーということでよろしいかと。
歪めて音量をマックスにした様な轟音ギターにともすればバックの演奏にかき消されそうなな物憂いボーカルが乗るというスタイル。
ドラムは乾いた音でドタタドタタと結構重めにビートを刻むスタイル。
ベースは輪郭を曖昧にした様なもうろうとした音で水面下に潜むクジラのようにゆったりうねる。
ギターは粒子の粗いざらついた音で歪められた音が曲を引っ張る。フィードバックノイズも多めなラフな音像。
ボーカルは男性の声がベールの向こう側から聴こえるようにくぐもって浮遊感がある。
これらが一体となって曲を作っていく訳なのだが、もう全体に漂う憂鬱な感じがたまらない。シューゲイザーの魅力の一つに耽美な儚さと暴力的な演奏との相克があると思うのだ。音は凶暴なはずなのに、全体で聴くとドリーミィな方向に舵を取るバンドが多い中、このバンドNothingの暴力性はどうしたことだ。まるで破壊衝動の爆発のようだ。分厚い音が放射状に空間を埋め尽くさんとする執拗性、そんな凶暴さがあると思う。巨大な伽藍に響く様なエフェクトがかかったギターの引っ張る様な渦を巻く様なフレーズ。
その劇的な負の感情を無理矢理ねじ曲げてシューゲイザーという枠に押し込んだ様な、ともすると強引なその音楽性にはひたすら感服するしかね〜。安易に暴力的な音楽性をあえて採らず、なぜこの演奏にそのボーカルを…と驚嘆するそのひねくれたセンス。
この間紹介したAlcestは光に向かい外に飛び出したが、こいつらはひたすら暗く自分を掘り進んだようだ。これは偉大な空虚のような、そんな凄まじい憂鬱さが曲に横溢している。
一体なんでこんな音を鳴らすのだ、と疑問に思ってバンドのことを調べると結構面白いことがわかった。(以下は英語版のwikiの情報によりますのでひょっとしたら間違いがあるかもしれませんことご了承ください。)このバンドNothingは2011年Domenic Palermoという人物を中心に結成された。彼は以前Horror Showというパンクバンドを組んでかのDeathwishから音源をいくつかリリースしていたが(Deathwishのホームページで何曲か視聴可能です。なかなかハードコアパンクですな。)、喧嘩相手を刺してしまい凶器による傷害と殺人未遂で逮捕、2年刑務所に入ることに。出所後4年間彼は人生をどうしたら良いのかわからなくなり、毎日死ぬことも考えたが、ようやっとまた音楽をやることにして結成したのがこのバンドだそうな。劇的な話だが「間違いを犯してしまった男がバンドでもう一回やり直す」話にしては簡単すぎるよな〜。喧嘩とはいえ人を刺してしまうというのはこれはもう犯罪だもん。良い話として賛美するには重すぎるよね。私としてはさされた人とDomenicが死ななくて本当に良かったと思うよ。そういったドラスティックな経験がこのバンドの破壊的な反面妙に諦観めいた空虚さを抱え込んだ音楽性をすこしは説明するよすがとなるのかもしれないね。
という訳でオイオイこれはスゲエ。予想より大分スゲエ。Alcestの新作もすばらしかったが、個人的にはざらついて救いのないこちらにもシューゲイザーというジャンルの新しい地平線を見たようだ。Alcestの新作を買った人は是非こちらも聴いてほしいと強く思う。
いやいやいや3月にしてもの凄いCD買ってしまったな、という感満載の超オススメ盤。たくさんの人に聴いてもらいたいね。さあはやく買うんだ。
Bandcampでアルバムの曲が視聴できる。兎に角「B&E」という曲を聴いてみてほしい。
Alcest/Shelter
フランスのブラックメタル/シューゲイザーバンドの4thアルバム。
(バンドの読み方はアルセなのかあるセストなのか…)
2014年にprophecy productionからリリースされた。
私が持っているのは簡単な写真集みたいになった豪華版みたいな仕様でボーナストラックが1曲収録されたディスクがくっついております。
さて元はと言えばPeste NoireだとかMortiferaだとかいった玄人嗜好なブラックメタルバンドで活動していたNeigeパイセンですが、いつのまにか耽美というよりは夢見心地なシューゲイザーに傾倒してみたらこれがなかなかどうして大ブレイクしてしまったという感じなのかどうかはわかりませんが、Alcestの1stが発売されると結構日本でも好意的な評価が多く見られたように感じられ、2ndそして3rdと発売するたびにその人気も高まってきたように思います。元々音楽的な親和性もあったのかと思いますが、近頃ではブラックメタルバンドがシューゲイザーを色濃く打ち出したアルバムを発表することも珍しくはないのかもですが、そのムーブメントを強く後押ししたのもNeigeさんによるところがありそうですね。
元々出自がガッチリブラックメタルの人なので過去作なんかでは結構金切り声の様なスクリームを聞かせたりしておりましたが、今作ではそんなブラックさもほとんどなくなってドリーミィな方向に完全に舵を取った様なそんないさぎの良い作品になっております。
ギターはよりクリーンになり、ドラムはちょっと奥に引っ込んだように感じられます。ボーカルはゆったりとした余韻をはらんだように尾を引くエフェクトがかかった様なはかなげなもので、スクリームは皆無。
ジャケットの写真のように光に満ちたキラキラした作風で、基本明るめなのだがちょっとしたメランコリックさが影を落とす、そのバランスがとても良いす。
今作の魅力は曲の間だと思うんですけど、曲がちょっと長い(6分くらいだけど)分、結構贅沢に間を使っていますね。例えばギターがちょっとつま弾かれるところだったり、ふっと一息ついてドラムがビートを刻んでいるところだったりが非常に空間的な広がりを持っていて気持ちよく聴こえるんですよね。ゆったりしている感じ。
個人的にはたまに厚くなるギターが好み。フィードバックノイズではないんだが、やはりギューーと後に残る様な余韻がたまらん。ブラックメタルかといわれると最早違うんだと思うんですが、やはり通常のシューゲイザーのアプローチとはちょっと違うように聴こえました。クリーントーンでくるくるトレモロするのも結構気持ちがよいすね。
あとはNeigeさんの歌ですかねー。ちょっと特徴のあるへろ〜とした感じが魅力的なんだけど新作を出すたびに良い意味で落ち着いてきているというか、風格が出てきたのかな?単に上手くなったのかもしれませんね。前はもうちょっと引っ込んだ感じでしたが、今作は結構グイグイ前に出てくる様な印象。ちょっと不安定なところがあるのでひょっとしたらこういった曲調の方があうのかも。(Mortiferaの「Ciel Brouile」(ちなみに超がつくほどの名曲なので皆さん問答無用で聴いてください。)みたいな独特の鬼気迫った歌い方も好きなんだけど。)
という訳でみんなもう買っていると思うけど良いです。私は前作より好きです。ファンの人ならきっと気に入るかと。
ちなみにボーナストラックは女性のボーカルがグイグイくるかなり良い曲なんで、お金に余裕がある人は豪華版を買った方がいいんじゃないかと思います。と思ったらitunesで普通に買えるみたいだな。まあ良い曲なんでこっちも聴いてみてよね。
(バンドの読み方はアルセなのかあるセストなのか…)
2014年にprophecy productionからリリースされた。
私が持っているのは簡単な写真集みたいになった豪華版みたいな仕様でボーナストラックが1曲収録されたディスクがくっついております。
さて元はと言えばPeste NoireだとかMortiferaだとかいった玄人嗜好なブラックメタルバンドで活動していたNeigeパイセンですが、いつのまにか耽美というよりは夢見心地なシューゲイザーに傾倒してみたらこれがなかなかどうして大ブレイクしてしまったという感じなのかどうかはわかりませんが、Alcestの1stが発売されると結構日本でも好意的な評価が多く見られたように感じられ、2ndそして3rdと発売するたびにその人気も高まってきたように思います。元々音楽的な親和性もあったのかと思いますが、近頃ではブラックメタルバンドがシューゲイザーを色濃く打ち出したアルバムを発表することも珍しくはないのかもですが、そのムーブメントを強く後押ししたのもNeigeさんによるところがありそうですね。
元々出自がガッチリブラックメタルの人なので過去作なんかでは結構金切り声の様なスクリームを聞かせたりしておりましたが、今作ではそんなブラックさもほとんどなくなってドリーミィな方向に完全に舵を取った様なそんないさぎの良い作品になっております。
ギターはよりクリーンになり、ドラムはちょっと奥に引っ込んだように感じられます。ボーカルはゆったりとした余韻をはらんだように尾を引くエフェクトがかかった様なはかなげなもので、スクリームは皆無。
ジャケットの写真のように光に満ちたキラキラした作風で、基本明るめなのだがちょっとしたメランコリックさが影を落とす、そのバランスがとても良いす。
今作の魅力は曲の間だと思うんですけど、曲がちょっと長い(6分くらいだけど)分、結構贅沢に間を使っていますね。例えばギターがちょっとつま弾かれるところだったり、ふっと一息ついてドラムがビートを刻んでいるところだったりが非常に空間的な広がりを持っていて気持ちよく聴こえるんですよね。ゆったりしている感じ。
個人的にはたまに厚くなるギターが好み。フィードバックノイズではないんだが、やはりギューーと後に残る様な余韻がたまらん。ブラックメタルかといわれると最早違うんだと思うんですが、やはり通常のシューゲイザーのアプローチとはちょっと違うように聴こえました。クリーントーンでくるくるトレモロするのも結構気持ちがよいすね。
あとはNeigeさんの歌ですかねー。ちょっと特徴のあるへろ〜とした感じが魅力的なんだけど新作を出すたびに良い意味で落ち着いてきているというか、風格が出てきたのかな?単に上手くなったのかもしれませんね。前はもうちょっと引っ込んだ感じでしたが、今作は結構グイグイ前に出てくる様な印象。ちょっと不安定なところがあるのでひょっとしたらこういった曲調の方があうのかも。(Mortiferaの「Ciel Brouile」(ちなみに超がつくほどの名曲なので皆さん問答無用で聴いてください。)みたいな独特の鬼気迫った歌い方も好きなんだけど。)
という訳でみんなもう買っていると思うけど良いです。私は前作より好きです。ファンの人ならきっと気に入るかと。
ちなみにボーナストラックは女性のボーカルがグイグイくるかなり良い曲なんで、お金に余裕がある人は豪華版を買った方がいいんじゃないかと思います。と思ったらitunesで普通に買えるみたいだな。まあ良い曲なんでこっちも聴いてみてよね。
2013年9月14日土曜日
Vampillia/Endless Summer
何かと世間を騒がせている日本は大阪のブルータルオーケストラのEP。
2013年の夏の終わりにリリース。
タイトル曲は久しぶりに(1stEPであるSppears以来だと思うのだ。)ツジコノリコさんをボーカルにフィーチャリングした曲。
実は2種類の音源が存在する。
オリジナルバージョンと元相対性理論の真部さんのボーカルが大胆に加えられたバージョン。(どうでも良い自慢だが、私は相対性理論がまだ有名になる前に下北沢でライブをみたことがあります!)前者がCD+7インチレコード(ドーナツ盤)で、後者がiTunesでダウンロード販売。
私はリリースがアナウンスされてから、Amazonで予約注文をかけた。Facebookの彼らのページで2つのバージョンが公開されてテンションはマックスである。で、発売日の9月4日(3日の深夜)にiTunesで購入した。
すげーー!オリジナル版はよ!!と思っていたのだが、Amazonから全然発送されないので慌てて他のレコード屋のオンラインショップで購入した。ところがメール便がなかなか来なくてさ…。1週間くらいすげーもやもやしておりました。
さて曲の方はというとまあ凄まじいことになっているので、こんなところをみている場合ではない。速く買いにいってくれ、といいたいところなのだが、まあ解説するよ。
まずは、ツジコノリコさんと子供さんのウィスパーボイスでスタート。ピアノが入ってきて「おや?結構まじめだな?」と思っている間に、バンドアンサンブルあくまでもすっと入ってきて、エコーのかかったツジコノリコのしっとりかつ儚さ全開の歌声が(文字通り)重ねられる。歌声が止んで溜めた感想ののち、グラインドパートに突入。ドラムブラスト全開。ギタートレモロ全開。ボーカルデス声全開。そこにストリングスのすっげえ切ないメロディラインが入ってくる。悶死。そこにツジコノリコのボーカルが戻ってくる。切ねえ、まるで燃えながら超高速で落下し続ける彗星のようじゃねえか。感動にうち震えていると、燃え尽きたように静寂が支配してスタート同様ピアノとウィスパーボイスでもってしっとり余韻を残したまま終わる。
4分と半の天国。やりよった、Vampilliaがやりよったとしか言いようがない。奴ら今回は最初っから最後まで完全にこちらを殺しにきてる感があって、いつもの道化っぷりは完全になりを潜めています。
また歌詞が本当に切ない。永遠に終わらない17歳の夏、というのがテーマらしいのだが、これはずるいからくりがある。歌詞の内容は哀切に満ちた夏の終わりが羅列されている。終わらない夏といっているのにである。これはずるい。終わらない夏なんてないのに、「終わらないよ!」といっているのだ。強情に言い張っているのだ。夏の終わりに。もうすぐ秋が来るというのに。切ない。これを夏の終わりにリリースするなんてずるすぎる。
兎に角、四の五の言わずに聴いてほしい。
さてもうひとつの真部さんの別バージョンは曲名が「endless (massaka)summer」となっている。
オリジナルでは「ザマーーー(多分summerといっている)」とデス声が入るパートにやけにすかしたような「なつはまさかのまっさかさまー」と入るのである。(massaka)summerって何だろうな?って思ってたけど「真っ逆さま」とはね。
完全にふざけているな〜。とおもってにやにや聴いていたら、や、普通に格好よくてちょっと吃驚した。演奏が格好いいのもあるんだけど、気づいたら「まっさかさま〜」と口ずさんでいる自分がいたりして面白い。
またそれぞれの音源には蝉の声と、子供のパタパタとした足音が入ったこらまた切ないピアノのインストが入っていてこちらも格好いい。
夏の終わりにとんでもない曲が出てきたもので、嬉しいったらないです。
劇的にオススメ!
2013年6月23日日曜日
Deafheaven/Sunbather
アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコのバンド。
2013年にConvergeのジェイコブさんのレーベルDeathwish(元ネタはチャールズブロンソンの映画なのかな)からリリースされた2ndアルバムです。
ラベルをみてもらうと分かるんだけど、このバンドの音楽性ははっきりとしたジャンルでくくりにくい。ボーカルはブラックメタル系のギャーという感じの若干ぶち切れたようなテンションの叫び声。トレモロリフを多用したリフは確かにブラックメタルを思わせるんだけど、音質はブラックメタルの邪悪で劣悪なそれとはほど遠く、ハードコア由来のポストロックのようにクリアでなんていうかこうキラキラしとる。音の重厚さと同居する芳醇さそして独特の反響は、アレ?シューゲイザー?激しかったのが一転平気でピアノなんか入れちゃったりして、あらステキという感じはまさにそれっぽい。
要するにいろいろなジャンルの影響が見て取れるんだけど、全体に吐き出されるのがつぎはぎだらけのいびつな音楽というよりは、多様な要素が見事に調和している素晴らしい作品になっております。
彼らのルーツがいずれのジャンルなのか分からないけど、確かにそれぞれのジャンルが似た部分を持っているから不思議にしっくりくるんだよね。海外ではこういったジャンルをBlackgaze(ブラックメタル+シューゲイザー)とかポストブラックといったりするそうです。
それにしても結構キラキラした演奏にブラックメタル然とした叫び声というのは非常にしっくりくるよね。あとは曲の展開が激アツなんよね。結構あざといくらいドラマチックに作られているんだけど、これだけの完成度でもって演奏されてしまうとそれはもうごちゃごちゃいわずに酔いしれるしかない訳です。比較的曲が長めなんだけど(だいたい9分〜15分くらい)ちっとも気にならない。轟音をまき散らしながら疾走するパート、嵐の前の静けさのような予兆を感じさせる不穏なパート、反響に満ちたゆらゆら揺れているようなアンビエントなパート、いろんなパーツがパズルのピースのように見事にはまっている印象。渾然一体とはこのことか。例えばVertigoという曲ではゆったりとしたポストロックポイパートから妙にメタルっぽいギターソロが唐突に飛び出してくるのに吃驚していると、あっという間に凶悪なボーカルが洪水のような激しさで襲いかかってくる。こいつは新しい時代が生み出したキメラ的な音楽なのだろうか。いろんな動物のパーツでできているキメラだが、昔の人もありえねーと思ったらしく、キメラという言葉にはあり得そうもない奇妙な、といったような意味もあるそうだ。なるほど確かにDeafheavenの音楽は奇妙ではあるのだが、実際に確固として存在していることを考えると、彼らは決していびつな混合生物キメラではないのかもしれない。
オシャレかつポップなジャケットは初めてにとったときはうおお、ひねくれてるねと思ったけど、アルバムを聴くと結構なるほどとうなずけてしまうから不思議。
これはすごいアルバム!
皆さん買って聴きましょう。
ラベル:
Deafheaven,
シューゲイザー,
ハードコア,
ブラックメタル,
音楽
2013年2月17日日曜日
Hypomanie/Calm Down, You Weren't Set on Fire
前回に引き続きオランダのポストブラック、2012年発表3rdアルバムです。
ジャケットが有機的になりました。
基本的には前作の流れをくむ哀愁系ポストブラックです。
音の種類が豊富になった印象で、前回はちょっと閉じられた世界という感じで音も少し地味目でした。今作は明るくなったというのではないですが、前作に比べると世界が広がって聴きやすくなったと思います。シンセの音が結構前に出てきています。
一見クールなS.さんですが、今作でも内に秘めた激情家っぷりをいかんなく発揮。
静かに始まり、ある程度ミニマルに進み、音が次第に追加されていき、クライマックスに突入。乱打されるドラム、加速するトレモロリフ、相変わらず健在。
決して泣かしに来ているようなあざとさはないのですが、相変わらず訴えかけ度が半端ネエ。音を一つずつ見ると結構冷たく無機質だったりするんですが、曲としてまとまるとビシビシ突き刺さります。どちらかというと暗く陰鬱なんですが、温かさすら感じさせるS.さんならではなの優しさに満ち溢れたアルバム。
おすすめです。
ジャケットが有機的になりました。
基本的には前作の流れをくむ哀愁系ポストブラックです。
音の種類が豊富になった印象で、前回はちょっと閉じられた世界という感じで音も少し地味目でした。今作は明るくなったというのではないですが、前作に比べると世界が広がって聴きやすくなったと思います。シンセの音が結構前に出てきています。
一見クールなS.さんですが、今作でも内に秘めた激情家っぷりをいかんなく発揮。
静かに始まり、ある程度ミニマルに進み、音が次第に追加されていき、クライマックスに突入。乱打されるドラム、加速するトレモロリフ、相変わらず健在。
決して泣かしに来ているようなあざとさはないのですが、相変わらず訴えかけ度が半端ネエ。音を一つずつ見ると結構冷たく無機質だったりするんですが、曲としてまとまるとビシビシ突き刺さります。どちらかというと暗く陰鬱なんですが、温かさすら感じさせるS.さんならではなの優しさに満ち溢れたアルバム。
おすすめです。
2013年2月16日土曜日
Hypomanie/A City in Mono
オランダのS.さんなるひとによるブラックメタル/シューゲイザープロジェクトの2ndアルバム。
2011年発表。
ジャケットがかっこいいなあと思っていたのですが、ゼロ次元さんに入荷されていたので、ここぞとばかりに購入しました。
内容はというと全編インストのポストブラックというやつだろうか。
艶っぽいベース、回転の良い(結構手数が多いというか)ドラム。かすみがかった雰囲気のキーボード。そしてギターはシューゲイザーっぽいノイジーな音が売りなんだろうけど、乾いたアルペジオもあるし、ノイジーさも高音が強調されていたり、じりじりしていたりと芸が細かい。
なんといっても展開が素晴らしく、しずかにゆっくり始まる前半、突然ドラムが乱打され、ノイジーな(うるさいわけではない)トレモロリフが加速する。シューゲイザー色強めのポストブラックというとここ最近かなりの隆盛を見せるジャンルで、はいはいお洒落お洒落というバンドも少なくないのだけれど、このS.さん、クールでシャレオツに見えて実はアッツい激情家であることはもはや疑いなし。いったん火がつくともうトレモロリフの加速が止まらない止まらない。暗いのだがどこかしらノスタルジーを感じさせる美しいトレモロリフにただただ涙が止まりません。
全5曲でどの曲も捨て曲なしでかっこいいのだが、特に最後の2曲の破壊力が半端ない。
「A City in Mono」アルバムタイトルにもなってる9分弱の曲で、静かに始まり徐々に音が加わっていく感じ。中盤で加速して、いったんブレイク、再加速で一気にクライマックスに流れ込む。
「A City in Stereo」ラストを飾る10分20秒。アンビエントパートを挟んでの後半でもう滂沱の落涙。こんなに切ないのに、こんなに熱い展開があるだろうか。
My Bloody Valentine/ m b v
いわずと知れたシューゲイザーの大立者2013年発表の3rdアルバム。
なんと22年ぶりに、しかも急に発売されて世界を驚嘆の嵐に巻き込んだという噂のあれです。
メンバーも22年前と同じみたい。Black SabbathにしてもCarcassにしても久しぶりに再結成するとメンバーがそろわなかったりするものですが、すごいものですね。
私は昨年あたりにリマスターされた「Loveless」と「EPs」を買っただけのミーハーなファンだから、そこまで強い思い入れがあるわけじゃあないけど、これはいい音楽ですね。
唸るような轟音がずらーっと塗りつぶされていて、その隙間からケヴィンさんビリンダさんの甘いささやき声がメロディアスに聴こえてきます。全体的にゆったりして夢見がちという以前の音楽性を踏襲していて、大きく変更はないと思います。
轟音といってもいわゆるメタルだハードコアの轟音とは違いますよね。なんだかスローモーションにされた巨大な建設現場みたいな世界に放り込まれて、唖然としてたら歌声が聞こえてきたぞ、という感じ。音自体はデカくてはっきりしているんですけど、たどっていくとなんだか曖昧になっていて、全体的にというか結局というかぼんやりとした世界に連れ込まれちゃったなっているんですよね、不思議です。
というわけで、私がおすすめするまでもなくもうみんな聴いているんじゃあないかと思うけど、おすすめです。
ちなみに私はレコード+CD+デジタルダウンロードバージョンを買ったよ。音はもうすでに聴いているけどレコード届くのが楽しみだな~。
2013年2月2日土曜日
Seirom/1973
実はこのモーリスさんGnaw Their Tonguesやその他の変名で碌でもないブラックメタルノイズ作品を沢山リリースしている変態なんです。私も何枚か持ってますが、それはもう酷い(この界隈では褒め言葉)音楽で露悪的かつ(たちの悪いことに)荘厳なまるで聳え立つくその山だといわんばかりの(Gnaw Their Tonguesの目下の最新作のタイトルはEschatological Scatology)作風なのです。
さてそのモーリスさんの新プロジェクトといえばもういい予感がまったくしないわけで、なんだかきれいめなジャケットにしているようだが騙さんぞとばかりに購入したのですが、 まあ度肝を抜かれたわけで。
一言で言うと美しいアルバムに仕上がっております。再生すればあなたの目の前にドリーミィで幻想的な風景が浮かび上がるわけです。
浮遊感のあるドローンぽいシンセ、音も厚く確かにノイジーなのですが繊細な雰囲気に見事に調和したギター、どっしりとして時には早く時にはゆったりとしたドラム、コラージュされたような男女のボイスサンプル、鳥の鳴き声、波の音、鐘の音、これらが渾然一体となりまるで夢のような、それでいて重厚な音が洪水のようにあふれ出てきます。
ジャンルでいえばノイジーなシューゲイザーでしょうか。ぶあつい音圧などはNadjaと通じるところがありますが、あっちほど運命を感じされるような重々しさや孤高といった感じもしないです。
ジャケットの写真のような、実際には決して存在しない過去の輝かしい日々をフィルター越しに眺めているようで、もうため息しか出ないです。
めちゃすばらしいアルバムなのですが、モーリスさんが作りました。なんだか悔しいですね。モーリスさんのしたり顔が目に浮かぶようです。
まあとにかく本当お勧め。
登録:
投稿 (Atom)















