アメリカ合衆国サウスカロライナ州マートルビーチのブラックメタルバンドの2ndアルバム。2018年に自主リリースされた。
またくどいバンド名である。「僕のあなたに対する最も純粋な心」。調べてみるとマートルビーチというのはアメリカ南東部のリゾート地のようだ。とても綺麗なところだ。君、もっと外に出てきたらどうだ、泳いできなさい、と親戚の叔父さんになっていってあげたい気持ちもある。輝かしい土地で部屋にこもってこういう音楽を作るやつもいるのである。全く最高だ。バンドと称したがメンバーなどは非公開でよくある変名どころかメンバーの人数も不明。2016年にデモを発表して以来、活発に活動しているようだ。(多分ライブはやっていない。)
どんな地下音楽でも流行り廃りというものが露骨にあって、そのムーブメントは「もう聞き飽きたぜ?」と玄人のしたり顔で敬遠されたりもするのだが、雨後の筍が枯れた後その土壌からまた新たな音楽が生まれることもまた確かだ。
このMy Purestもそんなバンドのような気がしている。ブラックゲイズだ。シューゲイザーにブラックメタル由来のトレモロを合体させたツエーやつで、世界中の根暗たちがこの音楽性に魅了された。もともと小汚い、危険、(ともすると)キモいという3K音楽たるブラックメタルから派生したという生まれながらの対照性もあってか、ブラックゲイズは掃き溜めに生まれた鶴のようなエモさがあった。マートルビーチに住む何がしかはそこに最も純粋な心を見つけたのだろう。(おそらく)根っからのブラックメタル・ファンである彼がこの音楽性にコンバインしたのはデプレッシブ(憂鬱な)・スーサイダル(自殺的)・ブラックメタルだった。それもかなり過酷でトゥルーなやつをだ。厭世観と自己嫌悪を音楽にして吐き出した音楽。吊り縄やリストカットされた手首をモチーフにしたアートワーク。あの世界観によりにもよってブラックゲイズをくっつけたのだ。確かに全編を覆うのはトレモロ、トレモロ、トレモロの嵐である。しかしガリガリとしたプリミティブな音質。ドゥームとまではいかないがすっきりとしないゆったりとした速度。マイナーなコードを使っているのかわからないが、爽快感を与えるはずのトレモロもやけに陰鬱に響いてくるのである。ボーカルは金切り声でずっと叫んでいる。全く抑揚などあったものではない。キャッチーな要素である「ゲイズ」の背後にあるのは確かにDSBMの息吹であった。チェコのTristをなんとなく私には思い出させる。あの荒涼としたモノクロの景色。
例えばAn Autumn for Crippled ChildrenがDSBMを飲み込んでほの明るい地平線を目指したのに、My Purest Heart For Youは明るい要素を用いているのにさらにDSBMのくらい渦に降下していくようである。私がブラックゲイズ学の講師なら「これは悪い例ですね〜」と生徒たちに紹介するだろう。しかし私はどこの先生でもないのでこの音楽に耽溺することができる。くらい情念がメエルシュトロムのように下に下に渦巻いていく。不健康な重力があなた方を優しく押さえつけるだろう。
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