2018年11月11日日曜日

BROCKHAMPTON/Iridescence

アメリカ合衆国はテキサス州サンマルコスで結成され今はカリフォルニアを拠点とするヒップホップ集団の4thアルバム。
2018年に自主レーベルとRCAからリリースされた。
BROCKHAMPTONは2015年にKevin Abstract(若干22歳)が中心になり、ウェブ上のフォーラムでメンバーを募集する形で結成された。メンバーは10人以上。自らをしてボーイ・バンドと称しており、また全ての制作物やライブをDIYでやっているそうだ。
2017年に「Saturation」シリーズをアルバム3枚分リリースしている。個人的には「SaturationⅡ」がとても好きだ。そんなわけで新作を購入した。

ヒップホップといえば集団である。横のつながりといっても良い。客演も多い。Wu-Tang Clanは文字通り一門である。そんな中でも10人を超える集団というのは珍しいのかもしれない。(私がしれないだけも。)この数の多さを武器にマイクリレーしまくる。性別や人種を超えてとにかくいろいろな声が入り乱れ、また曲もそんな個性を生かせるように非常に多彩でそこが面白いのだ。
ジャズなどの元ネタをサンプリングしてそれをループさせる。全身これビートといった隠しようもなく、と言うよりはラッパーにとっては隠れようもない赤裸々なその上にラップを乗っける。バースがあってフックが来る。そんな形ですら、もはやBROCKHAMPTONは置いていっているくらい意識しない。矢継ぎ早に言いたいことを乗って来る。トラックがしっくり来なければ曲の途中でも大胆に雰囲気を変える。逆にただただ奇をてらっているわけでもなく、とにかくメロディアスなサビを乗っけるわけでもない。これはしっくり来る、と言うマインドで作っているように感じられ、その自由さがこちらにも心地が良いのだ。ゆったりとした曲、張り詰めた曲。ヒップホップ強めの曲、R&Bをおもわせる歌声が印象的な曲。この最新アルバムではギターの音も大胆に使われているし、その他の楽器もよく使われている。どうやら製作陣もかなりメンバーの層が厚いようで、数の多さがそのまま楽曲の豊かさに繋がっているのではないか、と思う。このごった煮感はまさに人種のるつぼアメリカなんでは?と思う。だったら異なる人たちが集まって一つの音楽を作ると言うのは素晴らしいことだ。
個人的には露骨に導入されるテクノパートみたいなのが好きで、このアルバムだと「WEIGHT」は素晴らしい。ビープ音が不穏な「DISTRICT」も無理やりかぶさる歌が良いし、女性の声が金属のように艶かしい。

若いだけあって今の時代をしっかり捉えていると思う。一つは極力(新作はソニー系のレーベルと契約しているようだ)中間業者を挟まない、作り手⇄市場(客)の関係を構築していること。売上と分配の問題と言うよりは速さと質の保っているように私には思える。それから次々ラッパー/シンガーが入れ替わると言う曲の構成も、たった5秒の広告が物を言う「気に入らなければ次へ」の精神が大きく反映されているように思う。つまり初っ端でぐっとつかんでくるわかりやすさがある。非常にキャッチーな作りをしている。

ブログを見ていただければわかるが私はヒップホップには(別に他のジャンルにも詳しいと言うことではないんだけど)詳しくないので、よくよくヒップホップを聴いているフリークの人たちがこの新しい集団をどう考えているのかと言うのが知りたいところだ。ひょっとして苦い顔で見ているのだろうか。そんなことがあってもそれはそれで痛快で面白いね。

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