2018年11月25日日曜日

Spirits/Discontent

アメリカ合衆国はマサチューセッツ州ボストンのハードコアバンドの1stアルバム。
2015年にState of Mind Recordingsからリリースされた。
Spiritsはストレートエッジのバンド。メンバーは4人でかつてはTest of Timeという名前で活動していたそうだ。

お酒飲まない、タバコ吸わない、愛のないセックスは無しという厳格なルールで生活を縛るストレートエッジというのはハードコアカルチャーに結びついているものの、音楽的な特徴を表現する言葉ではない。どうしてもストレートエッジというとユースクルーかなと思ってしまうところがあるが、(一見すると)このSpiritsはあまりそれっぽくはない。もっとフックが効いている。わかりやすく言えばバキバキのブルータルさは全くないが、かといってタフなオールドスクールという感じではなく、自然体なニュースクールという感じだろうか。技術力というか、表現力はかなり豊かでパームミュートだったり、エモバイオレンスを思わせるトレモロ奏法などを短い曲の中に持ち込んでいる。ハードコアというのはどうしても力強さを志向するあまり極端に走りがちなジャンルだと思うが(メタルだとここに様式美的な表現力が加わるから音楽性自体は雑多になる)、このバンドに関してはとにかく中間が格好良く、そこが自分には自然体、に見えるのだ。言葉にできない余白的な感情を持て余すのではなく素直に表現している。概ねその感情がエモバイオレンスのような懊悩や葛藤になってしまいがちなのだが、このバンドはあくまでも健康的なハードコアのフォーマットに落とし込むことに成功しているイメージ。結果的に速くもなく落としどころ満載という感じではないのだが、とにかく横ノリといっていいくらいの気持ち良さが詰まったハードコアが出来上がっている。
そうなると俄然丁寧な作りが気になって聞き込んでしまう。例えば8曲め「The Pledge」疾走するパートでうおってなって、コーラスワークでじんわり感動する。あ、ここ実はユースクルーっぽいぞと気がつく。これは良い。
SNSには「世界をよくしていこう」「ホモフォビア(ホモに対する嫌悪)、ファシズム、女性差別主義、人種差別主義、憎悪のいるところは無い」と書かれている。ポジティブ里そして強い決心が伺えるバンドだ。そういったバンドがこういったしなやかな音楽を鳴らしているというのは非常に格好いい。(別に強面の音楽を鳴らしているバンドがかっこつけだといっているのでは無い。)

こういうシーンの中で断固とした主張をしながらも、大勢のやり方をなぞるでもなく自分たちなりのやり方を模索しているようなバンドにどうしてひかれてしまう。

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