2018年7月16日月曜日

夢遊病者/一期一会

日本は大阪のブラックメタルバンドの1stアルバム。
2018年にSentient Ruin Laboratoriesからリリースされた。
Bandcampには大阪と書かれているが、詳しくは日本の大阪、ロシアのトヴェリ、アメリカのニューヨークに住むメンバーがオンライン上で出会って2015年に結成されたバンドのようだ。別名Sleepwalker。メンバーの名前は匿名性が高く、もちろん顔などは公開されていない。

ジャンルとしてはブラックメタルに属するバンドなのだろうが、その音楽性はかなりアヴァンギャルドな方向に舵を取っており、曲によってはボーカルが入らないないとブラックメタルだとわからないのではなかろうか。ブラックメタルというのは結構大まかなジャンルで実際の定義はふわっとしているから、多分色々な音楽性を持ったブラックメタル・バンドが存在できているのだと思う。ブラックゲイズだけでなく、ほぼデスメタルでは?というバンドもいれば、ほぼノイズでは?というバンドもいたり、インダストリアルに走ったり、ハードコア・パンクっぽかったりと様々だ。
このバンドに関しては時代が時代なら今は亡き(本当に亡きなのか怪しいけど)Hydra Headあたりからリリースされていても違和感がない音といえば伝わるかもしれない。よくいえば知的な音で、悪くいえば初期衝動や暴力性からは距離を置いたバンドだ。ブラックメタルを解体して、全く異なる音楽性を取り入れて再構築している。このバンドに関していえば、ブラックメタルの一番キャッチーな要素であるメロディアスなトレモロという要素は(おそらく敢えて)多用しないように制限をかけている。ノイズ成分もかなり効果的に取り入れているが、黒く塗り潰すような分かりやすさは採らない。アンダーグランド音楽ではありがちな分かりやすい攻撃性への傾倒というのはなくて、代わりにかなり模糊とした音楽性を追求している。結果的に不気味だが、分かりやすく不気味というのでもない。空間的処理が施されたイーヴィルなボーカルの存在感がなかなかだが、ボーカルレスの時間もかなり多く採られており、そこではかなり独特な、つまり暗くはないというサウンドスケープが展開されている。ブラストビートや低音リフ、トレモロなどを廃し、代わりに民俗音楽的なパーカッションのリズム、音の数の少ないバッキングに、自由でフリーキーなギターソロが詰め込まれている。プログレッシブというよりはジャズ的であり、独特の浮遊感はサイケデリックだ。うねるフレットレスベースを聞いて思ったのは、音の途切れない連続性であり、そう言った意味でもゆったりとした長いソロなんかもノイズの代用として捉えることができるかもしれない。ノイズのあのゆっくりと動きながら(連続性を保ちながら)その姿を変えていく、というのを他の手法で試そうとしているのがこのバンドなのかもしれない。4曲め「No Premature Celebrations」、5曲め「Never Ailments on Oneself」は特にオーソドックスなブラックメタルの要素が強い。それでも一筋縄ではいかない展開だが。なぜブラックメタルという形を土台にしたのかなと思ったけど、掴み所がないというのは確かに親和性があるのかもしれない。

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