カナダの作家の長編SF小説。
2016年発表で原題は「Sleeping Giant」。
流行りの三部作物(といっても他に思い浮かぶのは「パインズ -美しい地獄-」「ウール」くらいかな?)で、刊行前に映画化が決まったという。
帯には日本のロボットアニメに影響を受けたと書いてある。簡単に言うと世界中にオーバー・テクノロジーな巨大ロボット(全長60メートルくらい)のパーツが埋まっていて、それを集めて組み立てようという話。
私は子供の頃はガンプラを作ったし(BB戦士だけど)、アニメも好きだけど長じてからはそこまでロボットが好きなわけではない。でもギレルモ・デル・トロ監督の「パシフィック・リム」も面白かったし(これも日本の影響があって敵は「カイジュウ」という)、なんとなく読んでみようかなと。
漫画家・鬼頭莫宏さんに「ぼくらの」という作品があり、うろ覚えだがたしか「巨大ロボットが実際に動いたら街にはそれなりの被害があるはずで、普段無視されがちなそういったところを描きたかった」というようなことをおっしゃっていたように思う。この作品もこれに少し似ており、実際に巨大ロボットがあったとしてこれをどう運用するか、というのがテーマの一つ。
どこかの国が独自で開発するならそれは問題ないのだけど、なにせこの物語では誰が作ったのかわからない明らかに人間の文明以上の科学水準のロボットだから、まず地面を歩く以前にいろいろと難しい問題が生じてきてそれを描いている。とてつもない力を持った兵器なわけで、当然これを特定の国が手にしたら世界のパワーバランスに影響があるというわけだ。
一応アメリカがロボットを集めることになるからアメリカを中心に個性的なメンバーが集められ、彼らもこの特殊な環境に慣れていくことになる。このロボットは特殊で全員がパイロットになれるわけではない。(どうも操縦するには条件があるらしいのだが人間側にはそれがわからない。)また、上半身と下半身でコントロールが別れている、つまりパイロットが二人必要。こういう事もあって潰しの聞かない中でパイロットのコンビネーションが必要になってくる。(エヴァンゲリオンでもそんな設定があったと思う。)ここが一つのドラマになってくる。
いわば巨大ロボットが歩くまで、というのを描いているのがこの本ということになるだろうか。
加えて
誰が何の目的でロボットを作ったのか。
そしてこのプロジェクトを推進するインタビュアーという存在は一体誰なのか、なぜロボットについて知っているのか、ホワイトハウスに渡りをつけられるくらいの権力を持っているのかというところを謎にして読ませる物語になっている。
特徴的なのは文体というか描き方で、基本的にインタビュー形式、中には記録された文書の抜粋という方式で物語が進むこと。物語的に美味しいところはしっかり火急の際の無線のログという形をとっているからリアルタイム性・臨場感が失われるわけではない。
私は物書きではないからわからないが、(架空の)個性にその心情を限外で語らせるというのは難しい。よくこういった読み物では一人称(太郎の視点になり、俺はこう思った。)、または三人称(太郎はこの時こう思った。)の視点で心の内を書いたりもするが、インタビューという形を取ればその時その時キャラクターがどんな事を考えていたのかをストレートに表現することができる。
なるほど理にかなっていて効率的だとは思う。しかし私は面倒くさい読書好きなので、やはり言外の思いというのは言葉以外で表現していただきたいのである。この本のやり方は嫌いとは思わないが、私からすると読書のかなりの部分の楽しみを減じているように思う。申し訳ないが、効率的だが短絡的で面白くないと考えている。インタビュー形式の面白さを追求するため、というよりは効率的にキャラクターの内面を読者に披露するためのツールにしか思えないという感じ。ここらへんは読書に何を求めるかで評価は変わるし、確かに単に筋を楽しませるという点では良いと思うが。
物語はまあ面白いな、という感じ。映画化も納得感はある。個人的には今風の小説だなとは思う。ただキャラクターが立っている割には深みがない感じでどの人物もそこまでの魅力がない。またインタビュー形式はもっと面白くできるのではと思うし、正直続編に関しては今のところはどうかな~というところ。
あと意図的かわからないがやや翻訳が硬いかなと感じた。
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