2018年7月30日月曜日

Heresy/Face Up to It! 30th Anniversary Edition

イギリスはイングランド、ノッティンガムのハードコアバンドの1stアルバム。
バンドは1985年に結成され1989年には解散。wikiによるとグラインドコアの始祖の一つと書かれている。
このアルバムは1988年にIn Your Face Recordsからリリースされた。2018年に発売から30周年ということでリマスターを施してBoss Tuneage/Break the
Connection Recordsから再発。
私は恥ずかしながらオリジナルを聴いたことがなく、丁度良い機会と思い購入。
巷の声を聴くとリマスターによってかなり音質の変化が見られるようだ。

決して歴史は長くないハードコアというジャンルでさらにファストコアの草分け的な存在で、正直歴史的価値はあるだろうが…と舐めてかかっていたのだが、聴いてみると驚いた。何に?その音楽的な表現力の芳醇さにだ。
ファストコアは激烈な音楽性だ。尖れば尖るほど(制限が多くなるので)音楽性は多様性を失っていく。(ピュアになっていくから好きな人にはたまらない。一方で興味がない人には全部同じく聞こえる。)Heresyの独特さは曲の長さを見ればわかる。1分ない曲もあるけど大体2分にわずかに届かないくらい。普通の人は「短いでしょ」と思うだろうが、この手のジャンルを好きな人ならむしろ長いと思うはず。長さには理由があって曲展開が複雑で多岐にわたる。つまり1曲の中でよくよく展開が寝られており、構成が凝っている。ファストコアというよりは、よくよく構成が練りこまれたハードコアという趣。決してハイスピードで最初から最後まで突っ走って終わりではない。とはいえもちろん超絶技巧なソロがあるわけでも、もったいぶった静寂パートがあるわけでも、多様な楽器を演奏しているわけでもない。あくまでもハードコアの肉体的なダイナミズムを損なわず、バンドアンサンブルだけで表現力の限界に挑戦している。わかりやすいのはテンポチェンジによる曲のメリハリだが、もちろんそれだけで3分弱とアルバム1枚をもたせているわけでもない。ボーカルも伸びやかにクリーンから、つんのめるようなまくしたてるようなシャウトまで幅広く、それが概ね曲の早さに合わせて披露されている。速いパート、中速パートそれぞれかなり贅沢に時間が取られていて、曲の中でそれらがはっきり判別できるように区切られている。楽器の上手い下手はわからないが、ドラムはとにかく複雑なのに非常に安定していると思う。どうしてもギターの方に目がいってしまうが、ベースもかなり個性的ではなかろうか。要するにどの楽器隊も(ボーカルも含めて)非常に芸達者で、ギターは流石にハードコアだななんて油断しているとしっかりとミュートで刻んできてたりする。
ほぼほぼメロディアスさはないが、ギターのリフが非常にキャッチーなのでダイナミックなリズム感もあってとても聞きやすい。そしてつくづく速度というのは相対的なものだと思う。緩急のメリハリのつけ方がとてもうまく(ここら辺は各パートに今のこの手のジャンルのバンドよりも多めの時間を使っているせいもあると思う)、中速からの突然のスピードアップは本当に体感では劇速。
結構曲によってはユースクルーっぽいなと思ってしまった。調べてみるとユースクルーは1980年台中盤から始まった動きらしい。時代的にはあってくるけど情報の流通も今とは異なるから、気のせいかもしれない。しかし聴けば聴くほど色々な要素が拾えて面白い音源だと思う。
数多のバンドがこの芳醇な混沌から何かを拾い上げて、その武器を尖らせていった。
面白いのは概ね流れ的にはここから各バンドが引き算でシーンを作っていったことだ。メタル的なアプローチなら足し算になるのではと思う。この違いに音楽の背景にある考え方の違いが現れているようで面白い。
明確なジャンルとしてのファストコア、パワーバイオレンスがこのバンドのあとに続くだろう。
まさしくハードコアのサブジャンルの地母神的な音源だなとその影響力に身震いしたのだった。
まだ聴いてない人はまたとない機会なので是非どうぞ。

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