日本は大阪のブラックメタルバンドの1stアルバム。
2018年にSentient Ruin Laboratoriesからリリースされた。
Bandcampには大阪と書かれているが、詳しくは日本の大阪、ロシアのトヴェリ、アメリカのニューヨークに住むメンバーがオンライン上で出会って2015年に結成されたバンドのようだ。別名Sleepwalker。メンバーの名前は匿名性が高く、もちろん顔などは公開されていない。
ジャンルとしてはブラックメタルに属するバンドなのだろうが、その音楽性はかなりアヴァンギャルドな方向に舵を取っており、曲によってはボーカルが入らないないとブラックメタルだとわからないのではなかろうか。ブラックメタルというのは結構大まかなジャンルで実際の定義はふわっとしているから、多分色々な音楽性を持ったブラックメタル・バンドが存在できているのだと思う。ブラックゲイズだけでなく、ほぼデスメタルでは?というバンドもいれば、ほぼノイズでは?というバンドもいたり、インダストリアルに走ったり、ハードコア・パンクっぽかったりと様々だ。
このバンドに関しては時代が時代なら今は亡き(本当に亡きなのか怪しいけど)Hydra Headあたりからリリースされていても違和感がない音といえば伝わるかもしれない。よくいえば知的な音で、悪くいえば初期衝動や暴力性からは距離を置いたバンドだ。ブラックメタルを解体して、全く異なる音楽性を取り入れて再構築している。このバンドに関していえば、ブラックメタルの一番キャッチーな要素であるメロディアスなトレモロという要素は(おそらく敢えて)多用しないように制限をかけている。ノイズ成分もかなり効果的に取り入れているが、黒く塗り潰すような分かりやすさは採らない。アンダーグランド音楽ではありがちな分かりやすい攻撃性への傾倒というのはなくて、代わりにかなり模糊とした音楽性を追求している。結果的に不気味だが、分かりやすく不気味というのでもない。空間的処理が施されたイーヴィルなボーカルの存在感がなかなかだが、ボーカルレスの時間もかなり多く採られており、そこではかなり独特な、つまり暗くはないというサウンドスケープが展開されている。ブラストビートや低音リフ、トレモロなどを廃し、代わりに民俗音楽的なパーカッションのリズム、音の数の少ないバッキングに、自由でフリーキーなギターソロが詰め込まれている。プログレッシブというよりはジャズ的であり、独特の浮遊感はサイケデリックだ。うねるフレットレスベースを聞いて思ったのは、音の途切れない連続性であり、そう言った意味でもゆったりとした長いソロなんかもノイズの代用として捉えることができるかもしれない。ノイズのあのゆっくりと動きながら(連続性を保ちながら)その姿を変えていく、というのを他の手法で試そうとしているのがこのバンドなのかもしれない。4曲め「No Premature Celebrations」、5曲め「Never Ailments on Oneself」は特にオーソドックスなブラックメタルの要素が強い。それでも一筋縄ではいかない展開だが。なぜブラックメタルという形を土台にしたのかなと思ったけど、掴み所がないというのは確かに親和性があるのかもしれない。
2018年7月16日月曜日
2017年9月10日日曜日
Dead Cross/Dead Cross
アメリカ合衆国はカリフォルニア州南カリフォルニアのハードコアバンドの1stアルバム。
2017年にIpecac Recordingsからリリースされた。
Dead Crossは2015年にSlayerの元ドラマーDave LombardoがカリフォルニアのハードコアバンドRetoxのメンバーといろいろな偶然が重なって始めたバンド。オリジナルメンバーだったボーカリストが脱退したため、2016年に様々なグループで活動するMike Pattonが加入した。新体制になって録音されたのがこの音源。プロデューサーはRoss Robinson。いわゆるスーパーグループなのだろうが、結果的にという感じで面白い。もともとDaveがやっていたバンドが急に解散してしまったがライブのブッキングは残っており、Rossとレコーディングを約束していたスタジオに居合わせたメンバーと結成。ボーカル脱退のため、Mikeに声をかけたと。DaveはFantomasでもドラムを叩いているからおそらくその流れでMikeを誘ったのだろう。
さてMike Pattonである。Faith No Moreのボーカリストとして有名なのだろうが、私はマスコアバンドThe Dillinger Escape Planとコラボした作品から知って、そこからMr Bungle、Fantomas、Tomahawk、Peeping Tom、Naked City(これはJohn ZornのバンドにMike Pattonが参加した感じかな?)なんかを聞いた。アヴァンギャルド・メタルというとこの人のイメージでとにかく型にはまらないボーカルワークが特徴。Bjorkの作品に声で参加したり、ラップをやったり、テクノとコラボしたりと声を武器に八面六臂の活躍をしている人だ。今度はハードコアと聞いておお?どんな?となるのが人情ってものだ。
RetoxにMike Pattonだからまあゴリゴリのハードコアにはならないだろうという事はわかる。このジャケットのアートワークは結構秀逸だと思うのだが、骸骨がバタバタ騒いでいるその軌道を描いているもので、中身の方もそうやってなんだかバタバタ騒いでいる。
イメージ的にはやはりMike PattonのプロジェクトでDaveも参加しているMelvinsのBuzらとのFantomasのごった煮グラインドコアに似ている。ただブラストビートという縛りもない中でよりPatton先生の多彩な声の魅力にあふれているのがDead Crossかな。さらに音も意図的に重さを幾分抜いてメタルの重々しさから見事に脱却している。The Dillinger Escape Planとのコラボはもっとマスマスしていたが、こちらはもっと妖しさにパラメータを振った感じ。
やはりMike Pattonの個性が凄まじく、がなりたてる早口、妙な擬音(ちゃんと歌詞があるのかも)、酔っ払ったような咆哮、金切り声、ハリとツヤのある美しくも怪しい歌声でのメロディアスな歌を歌い、オペラのように声量のあるボーカル、怪しいウィスパー、次々に飛び出してくる。それこそまるでおもちゃ箱をひっくり返したように、まるで息継ぎなしのように、違和感なく、そしてきちんと曲と調和して声だけでプログレッシブなパットン劇場を繰り広げていく。
Daveはじめとする演奏陣もそんな人間離れした個性に引けを取らずに負けじと短いスパンのなかでコロコロ変わる楽曲を提供。止まったりかと思ったら突進したり、低音かとおもったら高音に移動したり、うるさいと思ったら急に黙ったりと目まぐるしく動い気回る楽曲は次の展開が読めない。Daveのドラムは流石に手数が多くて、速度が乗っていないときでもむしろ回転しつつおかずを入れまくるように軽快かつグルーヴィ、そしてベースとギターに関しても相当変なことをやっていて1曲の中でもリフのバリエーションが非常に多彩。かなりノイジーなリフもあったりで、ボーカルが特異な分シンプルに抑えるのかと思いきや、かなりややこしいことをやっている。たまにでてくるメロディはPattonに任せているところもあって、多分ボーカル無しで聞いたらかなり演奏もすごいことになっているのではなかろうか。ふと思ったのだがひょっとしたらコロコロ展開を変えるブレイクコアもどきみたいに聞こえるかもしれない。昔のVenetian Snaresみたいな。
相当ややこしいことをやっているし、オペラっぽい雰囲気はその独特な歌唱法で演出しつつ、かったるいプログレッシブさは排除しているところがハードコアだろうか。相当異形のハードコアで、タフなそれとは全然趣が異なるが。よくPattonの関わる音楽は”変態”という言葉で語られることが多く、そういった意味ではこのDead Crossも変態的なのだが、この場合の変態的、もしくはイカれているという表現は病的とも言えるほどの表情の豊かさであろう。超高速で喜怒哀楽をコロコロ変えている人がいたらヤバイやつだが、まさにそういった感じ。それをきちんと表現できるスキルが有るのは本当すごい。
一つ不満があるとしたら音質かな。ちょっとこもっていて分離が悪い。私はあまり良い環境で音楽を聞いていないし、さらにBandcampでかったMP3形式なのでそこらへんの事情もあるかもしれない(ただこの形式でも分離が良いのはあるのでやっぱりちょっとこもっているとは思う。)が、かなりごたごたしているテクニカルなバンドなので、もっとクリアでも良かったような気もする。
さすがのクオリティは保証されているので、Mike Pattonの各種プロジェクト好きな人、FantomasとかThe Locust、Retoxとかちょっと変態的なエクストリームい音楽が好きな人は是非どうぞ。
2017年にIpecac Recordingsからリリースされた。
Dead Crossは2015年にSlayerの元ドラマーDave LombardoがカリフォルニアのハードコアバンドRetoxのメンバーといろいろな偶然が重なって始めたバンド。オリジナルメンバーだったボーカリストが脱退したため、2016年に様々なグループで活動するMike Pattonが加入した。新体制になって録音されたのがこの音源。プロデューサーはRoss Robinson。いわゆるスーパーグループなのだろうが、結果的にという感じで面白い。もともとDaveがやっていたバンドが急に解散してしまったがライブのブッキングは残っており、Rossとレコーディングを約束していたスタジオに居合わせたメンバーと結成。ボーカル脱退のため、Mikeに声をかけたと。DaveはFantomasでもドラムを叩いているからおそらくその流れでMikeを誘ったのだろう。
さてMike Pattonである。Faith No Moreのボーカリストとして有名なのだろうが、私はマスコアバンドThe Dillinger Escape Planとコラボした作品から知って、そこからMr Bungle、Fantomas、Tomahawk、Peeping Tom、Naked City(これはJohn ZornのバンドにMike Pattonが参加した感じかな?)なんかを聞いた。アヴァンギャルド・メタルというとこの人のイメージでとにかく型にはまらないボーカルワークが特徴。Bjorkの作品に声で参加したり、ラップをやったり、テクノとコラボしたりと声を武器に八面六臂の活躍をしている人だ。今度はハードコアと聞いておお?どんな?となるのが人情ってものだ。
RetoxにMike Pattonだからまあゴリゴリのハードコアにはならないだろうという事はわかる。このジャケットのアートワークは結構秀逸だと思うのだが、骸骨がバタバタ騒いでいるその軌道を描いているもので、中身の方もそうやってなんだかバタバタ騒いでいる。
イメージ的にはやはりMike PattonのプロジェクトでDaveも参加しているMelvinsのBuzらとのFantomasのごった煮グラインドコアに似ている。ただブラストビートという縛りもない中でよりPatton先生の多彩な声の魅力にあふれているのがDead Crossかな。さらに音も意図的に重さを幾分抜いてメタルの重々しさから見事に脱却している。The Dillinger Escape Planとのコラボはもっとマスマスしていたが、こちらはもっと妖しさにパラメータを振った感じ。
やはりMike Pattonの個性が凄まじく、がなりたてる早口、妙な擬音(ちゃんと歌詞があるのかも)、酔っ払ったような咆哮、金切り声、ハリとツヤのある美しくも怪しい歌声でのメロディアスな歌を歌い、オペラのように声量のあるボーカル、怪しいウィスパー、次々に飛び出してくる。それこそまるでおもちゃ箱をひっくり返したように、まるで息継ぎなしのように、違和感なく、そしてきちんと曲と調和して声だけでプログレッシブなパットン劇場を繰り広げていく。
Daveはじめとする演奏陣もそんな人間離れした個性に引けを取らずに負けじと短いスパンのなかでコロコロ変わる楽曲を提供。止まったりかと思ったら突進したり、低音かとおもったら高音に移動したり、うるさいと思ったら急に黙ったりと目まぐるしく動い気回る楽曲は次の展開が読めない。Daveのドラムは流石に手数が多くて、速度が乗っていないときでもむしろ回転しつつおかずを入れまくるように軽快かつグルーヴィ、そしてベースとギターに関しても相当変なことをやっていて1曲の中でもリフのバリエーションが非常に多彩。かなりノイジーなリフもあったりで、ボーカルが特異な分シンプルに抑えるのかと思いきや、かなりややこしいことをやっている。たまにでてくるメロディはPattonに任せているところもあって、多分ボーカル無しで聞いたらかなり演奏もすごいことになっているのではなかろうか。ふと思ったのだがひょっとしたらコロコロ展開を変えるブレイクコアもどきみたいに聞こえるかもしれない。昔のVenetian Snaresみたいな。
相当ややこしいことをやっているし、オペラっぽい雰囲気はその独特な歌唱法で演出しつつ、かったるいプログレッシブさは排除しているところがハードコアだろうか。相当異形のハードコアで、タフなそれとは全然趣が異なるが。よくPattonの関わる音楽は”変態”という言葉で語られることが多く、そういった意味ではこのDead Crossも変態的なのだが、この場合の変態的、もしくはイカれているという表現は病的とも言えるほどの表情の豊かさであろう。超高速で喜怒哀楽をコロコロ変えている人がいたらヤバイやつだが、まさにそういった感じ。それをきちんと表現できるスキルが有るのは本当すごい。
一つ不満があるとしたら音質かな。ちょっとこもっていて分離が悪い。私はあまり良い環境で音楽を聞いていないし、さらにBandcampでかったMP3形式なのでそこらへんの事情もあるかもしれない(ただこの形式でも分離が良いのはあるのでやっぱりちょっとこもっているとは思う。)が、かなりごたごたしているテクニカルなバンドなので、もっとクリアでも良かったような気もする。
さすがのクオリティは保証されているので、Mike Pattonの各種プロジェクト好きな人、FantomasとかThe Locust、Retoxとかちょっと変態的なエクストリームい音楽が好きな人は是非どうぞ。
ラベル:
Dead Cross,
アヴァンギャルド,
アメリカ,
ハードコア,
音楽
2014年5月31日土曜日
Kayo Dot/Hubardo
アメリカはマサチューセッツ州ボストンの、うーん、アヴァンギャルドメタルバンドの6thアルバム。
いわゆるクラウドファウンディング形式で有志からの投資を募って制作された。2013年にIce Level Records(フロントマンToby Driverのレーベルとのこと)から3枚組レコードとダウンロード形式でリリースされた。私がもっているのは御馴染みDaymare RecordingsからリリースされたCD2枚組の日本語版。
Kayo Dotを知ったのはいつになるだろうか。熱心なファンという訳ではないが、何枚か音源をもっている。確か始めはカオティックハードコアの文脈でバンド名を目にした様な記憶がある。単純な音楽性からするとあまりカオティックハードコアな感じはしないが、なんとなくこのカテゴリーに入れたくなる様な気持ちは分かる。彼らの音楽はなんとも形容しがたいものだからだ。基本はギター、ベース、ドラムのロックバンド体制なのだが、ジャズ風味が結構大胆に入っている。また弦楽器も導入しているからチェンバーロック的な雰囲気もある。多分に実験的で曲によってはドローンっぽいこともやっているようだ。私は今までの音源を聴いてなんとカテゴライズしていいのかちょっと判断がつかなかった。
で、今作は昨年のリリースからやたらと評判が高かった。如何にも私なのだが、リリース自体に気づかなかったから、すでにレコードは完売状態。遅れてリリースされた日本版をゲットしたのだが、これが中々評判通りの出来だった。
全11曲だがアルバムを通して聴くと100分を超える。だいたいどの曲も10分くらいになる計算だ。曲はかなりプログレッシブでとにかくいろんな楽器が使われている。ギター、ベース、ドラム、鍵盤、弦楽器、シンセサイザー。どれも現代ロックではさんざん使われているものたちだ。
また、曲調もロック、メタル、ブラックメタル、ジャズ、フォーク、チェンバーロックと幅広いが、こちらもやはり現代のロックでは異ジャンルとの混交は珍しいことではない。
しかし、このKayo Dotの手にかかるとどうだろう。ごった煮という表現がこんなに似合うバンドも無いかもしれない。曲によって雰囲気が変わる。曲の中でも雰囲気が変わる。イーヴィルなボーカルを中心に添えたブラックメタル然とした疾走パートが飛び出して来たかと思うと、ピアノが突然前に出てくる。ホーンが唸りだす。ギターが轟音で走り出す。地獄の様なギタードローン。ノイズ。これはパレードではないか。めくるめく走馬灯のようだ。全部一緒にやっちゃいました。まるでキメラの様な音楽だが、その接合部のなんと巧みなことか。鵺がそれぞれの要素を保ちつつ、一個の異形として成り立っている様な整合性がある。パート毎はいびつだが、全体で見ればしなやかな体が形成されている。
音楽体験としてみれば不思議な旅みたいなもので、次はどこに連れて行かれるか分からない様な楽しさがあって良い。ロックってここまで出来るぜ!という里程標のような、しかし誰も行けない場所にある、そんな恐ろしいアルバムじゃないの、実は。私はただののんきなリスナーで良かったなあ。
ぱっと聴いてみたところ、結構ブラックメタルの成分が強めに出ていることに驚いたが、何回も聴いているうちに他の要素に気づいてくる。そして各々の要素が抜群に面白い。聴けば聴くほど面白いアルバム。
一番面白かったのはこのアルバムを聴いてもやっぱりKayo Dotの音楽性をなんて呼べば良いのか分からないことだ。それはとても面白いことだ。実験的という言葉はちょっと言い訳めいたずるさを持つに至ったが、このアルバムは実験的の根源的な意味を体現しているように思える。
どうもWikiをみるにJason Byronなる人物の「The Sword of Satan」という物語に則ったコンセプトアルバムらしく、詩の部分は前述のJasonとTobyが共作しているようだ。LPには40ページに及ぶ物語についてのブックレットがついているらしい。そこらへんも読めたら面白いだろうな。
というわけで各所で良い評判だから既に聴いている人は多いだろうが、まだの人は買って聴いてみると良い。何がなんだか分からんが良い、すごいものだと気づくだろう。
非常にオススメです。買おう!
どれも良いがこの曲は良いね!
いわゆるクラウドファウンディング形式で有志からの投資を募って制作された。2013年にIce Level Records(フロントマンToby Driverのレーベルとのこと)から3枚組レコードとダウンロード形式でリリースされた。私がもっているのは御馴染みDaymare RecordingsからリリースされたCD2枚組の日本語版。
Kayo Dotを知ったのはいつになるだろうか。熱心なファンという訳ではないが、何枚か音源をもっている。確か始めはカオティックハードコアの文脈でバンド名を目にした様な記憶がある。単純な音楽性からするとあまりカオティックハードコアな感じはしないが、なんとなくこのカテゴリーに入れたくなる様な気持ちは分かる。彼らの音楽はなんとも形容しがたいものだからだ。基本はギター、ベース、ドラムのロックバンド体制なのだが、ジャズ風味が結構大胆に入っている。また弦楽器も導入しているからチェンバーロック的な雰囲気もある。多分に実験的で曲によってはドローンっぽいこともやっているようだ。私は今までの音源を聴いてなんとカテゴライズしていいのかちょっと判断がつかなかった。
で、今作は昨年のリリースからやたらと評判が高かった。如何にも私なのだが、リリース自体に気づかなかったから、すでにレコードは完売状態。遅れてリリースされた日本版をゲットしたのだが、これが中々評判通りの出来だった。
全11曲だがアルバムを通して聴くと100分を超える。だいたいどの曲も10分くらいになる計算だ。曲はかなりプログレッシブでとにかくいろんな楽器が使われている。ギター、ベース、ドラム、鍵盤、弦楽器、シンセサイザー。どれも現代ロックではさんざん使われているものたちだ。
また、曲調もロック、メタル、ブラックメタル、ジャズ、フォーク、チェンバーロックと幅広いが、こちらもやはり現代のロックでは異ジャンルとの混交は珍しいことではない。
しかし、このKayo Dotの手にかかるとどうだろう。ごった煮という表現がこんなに似合うバンドも無いかもしれない。曲によって雰囲気が変わる。曲の中でも雰囲気が変わる。イーヴィルなボーカルを中心に添えたブラックメタル然とした疾走パートが飛び出して来たかと思うと、ピアノが突然前に出てくる。ホーンが唸りだす。ギターが轟音で走り出す。地獄の様なギタードローン。ノイズ。これはパレードではないか。めくるめく走馬灯のようだ。全部一緒にやっちゃいました。まるでキメラの様な音楽だが、その接合部のなんと巧みなことか。鵺がそれぞれの要素を保ちつつ、一個の異形として成り立っている様な整合性がある。パート毎はいびつだが、全体で見ればしなやかな体が形成されている。
音楽体験としてみれば不思議な旅みたいなもので、次はどこに連れて行かれるか分からない様な楽しさがあって良い。ロックってここまで出来るぜ!という里程標のような、しかし誰も行けない場所にある、そんな恐ろしいアルバムじゃないの、実は。私はただののんきなリスナーで良かったなあ。
ぱっと聴いてみたところ、結構ブラックメタルの成分が強めに出ていることに驚いたが、何回も聴いているうちに他の要素に気づいてくる。そして各々の要素が抜群に面白い。聴けば聴くほど面白いアルバム。
一番面白かったのはこのアルバムを聴いてもやっぱりKayo Dotの音楽性をなんて呼べば良いのか分からないことだ。それはとても面白いことだ。実験的という言葉はちょっと言い訳めいたずるさを持つに至ったが、このアルバムは実験的の根源的な意味を体現しているように思える。
どうもWikiをみるにJason Byronなる人物の「The Sword of Satan」という物語に則ったコンセプトアルバムらしく、詩の部分は前述のJasonとTobyが共作しているようだ。LPには40ページに及ぶ物語についてのブックレットがついているらしい。そこらへんも読めたら面白いだろうな。
というわけで各所で良い評判だから既に聴いている人は多いだろうが、まだの人は買って聴いてみると良い。何がなんだか分からんが良い、すごいものだと気づくだろう。
非常にオススメです。買おう!
どれも良いがこの曲は良いね!
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