2017年2月25日土曜日

Berlin Atonal presents New Assembly Tokyo@渋谷Contact

Berlin Atonalはその名の通りドイツ、ベルリンで行われる実験的な電子音楽のイベントのことらしい。それが日本でもやりますよ、というのがこのイベント。これには元Nine Inch Nais(2004-2008,2013)のキーボディストAlessandro Cortiniが出演するとのこと。私はなんだかんだ言って一番好きなのは中学生の時に出会ったninなのだが、熱心なファンというわけではなく、現にTrent以外のメンバーときたらDanny Lohnerくらいしか思い浮かばない(Lohnerはとっくに辞めてる)。これはきっかけみたいなもので実は(単独)音源も持っていないMerzbowと共演するということもあって、なんとなく渋谷Contactに行って見た。
Contactは入場する際に会員登録しないといけないのでちょっとめんどい。駐車場の地下にあるので秘密基地感があるのは良いけど。中に入るとバカみたいに広いわけではないけどいくつかのフロアに分かれている。
19時過ぎに着くとメインフロアではRyo Murakamiがプレイしている。ドローンとしたノイズをプレイしているのだが、弦楽器のアンサンブルをサンプリングしていたりと結構お面白そうだった。しかし私は同時にやっているKiller-Bongが気になったのでそこを離れた。

Killer-OMA
いわゆるダブってことになるのだと思う。おそらく即興性の高いもので日本で一番黒い(あるいは煙たい)レーベルBlack Smokerの首魁Killer-Bongがビートを作ってラップを乗せていく。ラップには音響処理がその場で書かれており、ぼわんぼわんしている。独特の声をしている人だが、実際生で聴くとその変態性は頭抜けており、台本があるとは思えないのだが、流れるように言葉を吐き出していく。声質と音質で歌詞の内容は聞き取れない。まるで酔っ払った男の日記めいた独白を聞いているようだ。五月蠅くないトラックとあってこれがかっこいい。どうでも良いがベースラインが凄すぎないか?と思ったらなんとこの日は鈴木勲さんというベースプレイヤーとのコラボ。鈴木さんは真っ白な髪の毛が印象的などう見てもたたき上げのジャズプレイヤー。ウッドベースをバッキバッキスラップ奏法で聞いていく。研ぎ澄まされた短いリフが途切れることなくフロアにこだまする。眩惑的なダブだが、ベースの音に限って言えばこの上なくソリッドでリアルだ。時にビートになって曲を作っていく。体を揺らせていたらあっという間に終わってしまった。

伊東篤宏+カイライバンチ
先ほどとは違うフロア。この時は既に人がすごくてかなり後ろの方で見たんだけど、蛍光灯が等間隔に3つ放射状に設置されたさながら風車のような機械がぐるぐる回転をしている。何かと思われるが、他に表現のしようがない。風車はマニュピレーターになっており、蛍光灯は広がった状態から蕾のように閉じたりしながらその回転速度を変えていく。蛍光灯は明滅しており、その時に音が出るようだ。伊東さんは蛍光灯を使ったノイズユニットoptrumの人。私はこのoptrumはCDを持っている。この日は巨大なよくわからない機械を使って音楽を奏でるカイライバンチとのコラボ。蛍光灯風車の他にも、ジェットエンジンみたいなのが回転したり、アナログテレビを複数台つなげたものが明滅することで出すノイズを出したりと、音楽というよりそれを包括する前衛芸術だと思う。というのも機械の動きが音を出しているので(音と機械が連動している)、妙な機械がすなわち楽器である。出される音は全部ノイズといっても良い。人類が死に絶えた未来で壊れかけた機械が偶然出している音を聞いているみたいで面白かった。

Ena + Rashad Becker
続いてはメインのフロアでドイツ人と日本人の音楽家のコラボ。
音としては完全にノイズなのだがいわゆるハーシュノイズとは一線を画す内容。音がもっと単発で無作為である。それも引きずるような、軋むような、どこかに引っかかったような音が落ちてくる水滴のように予測不能で繰り出される。それからベースとなるような低音が出てくる(これはパイプオルガンのような音で非常に好みだった)と音の数が次第に増えていく。とは言え相変わらず音の種類は同じで連続性がない。ふと思ったのだが深宇宙からやってくる電波を受信したのをなんらかの機械を使って音響化したような響きがある。声はランダムさが最大の魅力で、連続するノイズのそれとはかなり違う。グリッチ音のみで構成されたノイズのようなイメージ。常に前に前に進んでいく直線のイメージ。渦を巻いていないからトンネルで音が通り過ぎていくみたい。とっかかりになる低音を見つけたとしても、それはいつの間にか何処かに行ってしまう。黙って宇宙からの音に耳を傾けることにした。

Alessandro Cortini + Merzbow
続いては元ninのキーボーディストと日本のノイズシーンの巨人とのコラボ。Merbowはロック、ハードコアのアーティストとも積極的にコラボしている。私は単独音源は持っていないけど、ぱっと思い浮かぶとBorisとFull of Hellのコラボ作を持っている。
Alessandroはyoutube見ていると相当の機材マニアみたいで私からするともはや楽器にすら見えない機械を使って音を出す人のようだ。
始まってみるとAlessandroがシンセサイザーを使ってループする小単位を作ってそれの形を少しずつ変えていく。一方Merzbowは連続性はあるが単位はない低音のノイズを出していく。明確にビートがあるわけではないがシンセ音は時にそれの代替物としての機能を持っており、またMerzbowの出す音も良いバランスで抑えられているので大変聴きやすい。同じノイズでもEna + Rashad Beckerとは全く違った音だ。こちらの方も次第に音の厚みが増してくる。それに浸っているとこの上なく快感だ。音がでかいが耳が痛いということはなかった。シャーとどこまでも滑らかな平面上を滑っていくかのようなノイズが例えようもなく美しい。音の洪水でそれは幻なのだ。たまに現れる高音も霧の波間に浮かぶビーコンのように幽玄としている。阿吽像のように佇む二人はさながらゲートのようだった。本当に最後合わせるところ以外、ほとんどお互いをみることもしなかった。

軽い気持ちで行って見たが楽しかった。Black Smokerはもう少しライブを見てみたい。

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