アメリカ合衆国とフランスの混成ブラックメタルユニットの編集盤アルバム。
2016年にVault of Dried Bones Recordsからリリースされた。
元々は2014年に自主リリースされたカセットだが(おそらく)新メンバーである元Vlad TepesのメンバーWladが加入したのをきかっけに録音し直したのがこちら。
メンバーの片割れは問題行動を起こしてバンドをやめた元CobaltのメンバーMcSorleyである。新アルバムである「Stillbirth in Bethlehem」と同時にレーベルから購入したもの。
意外にもそっけなかった新作と違ってブックレットが豪華仕様になっており、中身には死体の写真とそれから歌詞が乗せられている。
先に新作の方を聴いていたので、汚いロウ・ブラックメタルなのだろうな〜と思って切ったらあれれ??意外にこちらの方は小ぎれいにまとまっている印象。まずサウンドプロダクションが良いのか、音の分離がはっきりしている。これは結構大きい。というのも新作でも気色の悪いブラックメタルの悪臭の向こう側にややメロディの残骸らしきものが、かろうじて認めらるかもしれないがそれは幻覚の可能性が高い、と言った音楽性だったのがこちらの音源だと比較的容易に聞き取ることができる。「McSorleyできるやんけ!こういうことやぞ!」と思わず快哉を叫んだ人がいるとかいないとか。(まあ前作からのギャップでだいぶ綺麗に聞こえてしまうというマジックはあるとおもうけど)全体を覆っていた正気の様なノイズ成分も控えめなので、本来の曲の良さ(汚いプロダクションも含めての曲の良さなのでここでは曲という方程式の出来の良さくらいの意味で)が実感できる。Venomのアルバムとして産声を上げて以降、(少なくとも形だけでも)反キリスト教・反体制というカウンターカルチャーとして地下で育まれてきたブラック・メタルのピュアさを受け継ぐ、時代と時流、ユーザーの軽薄なニーズなど一切無視した寒々しく汚い、邪悪だが悪魔の様に暗闇で光る、儚くそして捉えどころのない薄いヴェールの様なメロディラインで構築された音楽である。メロディにしても耽美で退廃的なそれとは無縁なコールドさ。ガシャガシャしたギターに奏でられるそれはやはり初期以降のDarkthroneを彷彿とさせる。バンドサウンドプラスノイズのみで構成されているが、お得意のガリガリした(このガリガリさが個人的には好き)トレモロに加え、物寂しいアルペジオやミニマルさをいかした放心した様なアンビエントパートなど決して一本調子にならない構成で心に訴えかけてくる。「サタンに常しえの栄光を!」と歌い上げる詩もマジに思えてくるくらいのガチさ。廃墟に放置された進歩と文明に唾を吐きかける邪悪な隠遁者の日記を盗み見している様なゾクゾクする背徳感と危険性がある。
個人的には何と言っても「Frozen Blood」が良い。ミニマルなトレモロがゆったりとした速度で行進していく様はなんとも美しい。凍てついた森の上に冷たい月が浮かぶ夜の景色だ。新作が忌まわしい音楽だとすると、こちらはこの世の中に忘れ去られた様な音楽だろうか。音がクリアな分寂寞とした感じが強調されており、私としては暗さは減退しているが、こちらの音源の方が好みだ。
興味がある人やMcSorley在籍時のCobaltが好きな人は是非どうぞ。新作とはセットで買うか、もしくは先にこちらを聴いてみるのが良いかもしれない。非常にかっこいい。
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