2017年に[...]dotmarkからリリースされた。
黒電話666は2001年から活動している一人ハーシュノイズユニット。名前の通り今となっては懐かしい黒電話を使った激しいライブパフォーマンスが有名とのこと(私はライブを見たことがないので)。名前を知っていたくらい(GHzの記事とかで見たことがあった)だが、今回の音源リリースに伴って企画されたEndonのメンバーらとのインタビューを読んだら内容が面白くて興味を持ち、買った次第。私が購入したのはCD版で、こちらにはデジタル版にはないリミックスが2曲収録されている。
全4曲でオリジナルは2曲だがそれぞれは10分を超える尺があるので聞き応えはある(し、アルバムとしてはコンパクトにまとまっているのでこってりとしたノイズでも聞きやすいのが嬉しい)。内容的にはいわゆるハーシュ・ノイズなのだろうが、思った以上に聞きやすい。インプロゼーション的に作曲、録音されたそうだが実は結構練られているのではないだろうかと思う。ハーシュ・ノイズというととにかく激しい騒音をぶちまけるのが醍醐味だろうが、黒電話666のこのアルバムに収録されている曲に限るとその醍醐味はもちろん最大限に活かしつつ、比較的長めの尺の中で展開を作っているのが面白い。1曲めの「BLAZE」は顕著で静かに始まる前半と、徐々に不穏に侵食されていくような中盤、後半では今までの予兆が現実のものとなり破壊の限りが尽くされる、といったように悪い意味で金太郎飴にならないように一つの曲の中でうねりが展開されている。面白いのは基本的に概ね全てノイズで構成されている。アンビエントなパートも控えめなノイズで構成されている。いわば出力がコントロールされている状態で、減らすことによって持ち味が生かされていると思う。
ノイズの面白さというのは連続性だと思っている。(もう一つは混沌性。)ノイズというのは他の楽器と違って音が基本的に(意図的にブチッと切る手法ももちろんあるので)繋がっている。それだとドローンみたいになるのだが、ノイズの場合はその音が連続しつつ表層を変えていく。ギターのリフだと異なる音を断続がありつつ繋げていくわけで、こうなると明確な差異が面白いのだが、ノイズの場合だと一つのとがグラデーションを描くように変化していく。こうなると違いが意識されないが、瞬間より長いスパンで意識するともちろん確実に音が変わっていく。音の違いが短いスパンだと意識されにくいために曲の印象としては抽象的で曖昧になってくる。これだけでも面白いが黒電話666の場合は、この連続した音のうねりを短い単位でコントロールしつつ、それを長い単位、つまり曲単位にも持ち込んでいるため曲全体に展開があるのかもしれないなと思う。誤解を呼ぶ表現かもしれないが”聴きやすい”ノイズが結果的にできている。聴きやすいというのは別にポップなわけではない、徹頭徹尾ノイズで構成されたハーシュ・ノイズだ。ただ構成を考えることでそれを追うように聞けるので初心者にも優しいのでは、と思う。
ノイズの性格上ライブと音源は全然違うとインタビューで発言していることもあり、是非ライブも体験してみたいものだ。ノイズというと興味があるけどとっつき難いな〜とイメージのある人は是非手に取ってみてはいかがだろうか。おすすめ。
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