2017年2月19日日曜日

Grief/Dismal

アメリカはマサチューセッツ州ボストンのスラッジコアバンドの1stアルバム。
オリジナルは1992年にGreavance Recordsからリリースされた。私が持っているのはFuck Yoga Recordsから2015年にリリースされた再発盤のCD。オリジナルにDystopiaとのスプリット音源、EP「Depression」の楽曲を追加したもの。バンドのロゴは白。その後のアルバムのアウトサイダーなスラッジアートに比べると圧倒的にハードコアなジャケットが印象的。1991年にDisruptの元メンバーらによって結成されたバンドですでに解散している。私はSouthern Lordから出た編集盤で好きになり、2nd「Come to Grief」を持っている。

「陰気な」というタイトル通りとにかく自己評価の低い厭世観に満ちたアルバムで「世の中はクソだ、でも俺が一番クソだ」というその劣等感に満ちたバンドの音楽性はすでにこの頃から確立されている。おそらくKhanateにも影響を大きく与えたであろう不自然に引き伸ばされた様なトーチャー・スラッジをプレイしている。
音数が少ない分一撃が重くなり、そして乗りやすいというのがスラッジの良さだとすると、このGriefに関しては音の感覚が広く、また変則的なリズムだったりするから聴きなれないと乗ろうと思った音が思ったところで出なかったりして(自分がタイミングをミスっているだけ説)、妙に気まずい感じで聴いたりするのだが個人的にはそういうちょっとわかりにくいところも大好きだ。

Griefの良さってなんだろう、と考えながら歌詞カードを見ると「Fuck」、「Shit」、「Dead」なんかのハードコアな(あるいはメタルな)ワードに加えて「Solitude」、「Isolated」と言った言葉も目立つ。スラッジというと薬食いまくり、酒飲みまくり、タバコ吸いまくりの不健全さが売りなところもあるが、Griefはもっとカッコつけないし、もっと生活感にあふれている。
「Lifeless」の歌詞を見ると
俺の葬式には誰もこない、友達なんて一人もいない、俺が死んでも誰も気にしない、俺の名すら知らない、俺は惨めに孤独に死んだ、俺にとっては人生には意味がない
なんて書かれている。むしろ格好悪いくらいの歌詞だ。でもこれが良い。破滅的な音楽の裏に潜むこの素直さ。どうしようもない自分の惨めさ。寂しさ。みんな殺したいと言えない気の弱さ。羨望、嫉妬、やっかみ。そんな感情が溢れている。素敵な皆様はそんな感情には無縁なのだろうが、(私の様に)そうでない人もいるのだ。アメリカのダウンタウン、スラムの危険な別世界ではない。全世界に共通するすでにある地獄と孤独な牢獄についての歌だ。つまり毎日の、日常についての歌だ。だから島国にいる私の心にもしみるのだ。

やっぱりカッコいい。この世界観は本当に好きだ。3rd以降も再発してくれないだろうか。自分の生活が惨めすぎるあなたはこの音楽を聴くときっと少しは楽になるだろう。奇をてらっているわけではなくそういう意味で優しい音楽だと思う。是非聴いてみてほしい。

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