2015年11月30日月曜日

Dragged Into Sunlight/Gnaw Their Tongues/N.V.

イギリスはリバプールのブラッケンドデスメタルバンドDragged Into Sunlightとオランダはドラハテンのブラックメタル/ノイズプロジェクトGnaw Their Tonguesのコラボレーションアルバム。
2015年にProsthetic Recordsからリリースされた。私はBandcampでデジタル版を購入。
Dragged Into Sunlightはメンバー全員が目出し帽を被った強面バンドで(どうもスタジオミュージシャンが集って結成されたらしい。)、今までに三枚のアルバムをリリースしていて来日経験もある。何と言っても「陽光の元に引きずり出された」というバンド名がかっこ良くて気になっていたので、何枚か音源を持っているGnaw Their Tonguesとのコラボということで買ってみた。Gnaw Their Tonguesは結構日本でも知名度があると思うのだけど、ブラッケンドなノイズを垂れ流す(かと思ったら美麗な別プロジェクトをやったり)、アートワークも不愉快な(日本人の犯罪者を関した不謹慎な音源もリリースしていたりする)Moriesなる人によるプロジェクト。

どう考えてみてもろくな音源にはならないだろうということが予想される2組のコラボレーション。嫌な予感しかしなくてワクワクしてくる。
1曲目「Visceral Repulsion」、のっけからGnaw Their Tonguesお得意のがろがろした金属質なノイズに不穏なSEが乗るイントロからスタート。ドゥーミィなイントロは徹頭徹尾黒く重たいが、金属質なノイズが不思議と気持ちよい。高音で絶叫するボーカルがのたうち回るように唸りだす。ジリジリしたノイズとギターの湿り気のある音、そしてややこもった様な全体的な音質があってか、浸水した地下室めいた閉塞感と汚さがあり、不愉快である。ブラストからの曲スピードが文字通り加速度的に増していくのだが、相変わらず空気の読まないボーカルの呻吟が気持ち悪く、疾走感があるのに気持ち悪さが一切払拭されない嫌らしい職人芸。性格の悪さがじくじくにじみだす曲作りは流石の一言。Gnaw Their Tonguesで個人的に好きなのはぐちゃぐちゃして汚い(褒めてますよ)音楽やっているくせに、やけにオーケストラめいた大仰さを入れてくるところ。この音源にもその大仰さが伺えてそれが非常に良い。どう考えてもアングラ感があるのに、妙にこう開けている様な大仰さが演出されている。シンフォニックでは全然ないのだが、なんというかこう露悪的である。
全編に渡ってこの調子。真っ黒という感じで基本速度も鈍足。フィードバックノイズの音色が豊かな事と(自分で書いててうーん?という感じだ。人間色んなものが楽しめるもんだ)ドラムが結構遅くても速くても活動的に叩いてくれるので停滞パートでも十分楽しめる。疾走パートだと音質もあってか結構弦楽隊がなにをやっているのか分からんし(ぐにゃぐにゃ動き回るリフが特徴的な4曲目は音質もあってPortalっぽいなあと思いました。)、しゃがれたボーカルはベール越しに聴こえるようにくぐもっている。カタルシスがあるようでないようで、真綿で締められているような嫌らしさは相当なもの。

全5曲と短いが廃液を煮詰めたような音楽なので、このくらいが妥当だろうと思うのだが、最後まで聴くと物足りなくなってリピートしてしまう。うーん、もっと聴きたいかもしれない。好きな人にはたまらないのではなかろうか。どっちかのバンドが好きな人は勝手損は無いのでは。

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