2015年11月23日月曜日

Oneohtrix Point Never/Garden of Delete

アメリカはニューヨーク州ブルックリンで活動しているアーティストのアルバム。(6枚目か7枚目だと思うのだが。)
2015年にWarp Recordsからリリースされた。
私が買ったのはボーナストラックが1曲追加された日本盤。
だいたいいつも乗り遅れるのが私だから、日本のみならず話題になっているこのアーティストの音源を購入するのはこれが初めて。
日本盤リリース元の前作のページを見ると
スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、ギャヴィン・ブライアーズ、ブライアン・イーノ、ハロルド・バッド、クリスチャン・フェネス、エイフェックス・ツイン…
そして間もなくのそのバトンはこの男の手に渡るだろう。
と書いてある。まあリリースする側は煽る訳だけど中々の力の入れ様なのでその人気のほどが伺えるという訳だ。トレント・レズナーのラブコールを受けてnine inch nailsのツアーにも同行したというのだから、ようやく私も聴かないとと慌てだしたという訳です。

さてこの「Garden of Delete」略してGoDと意味深なアルバムはアーティスト本人によると新作をレコーディングしている時に出会った皮膚病を患うエイリアンの非行少年Ezraと出会った事にその端を発しているらしい。
確かにイントロを挟んで始まる2曲目のタイトルは「Ezra」だ。音がぶつ切りに鳴った印象的な冒頭はCDに傷が!?と不安になる。が静かにEzraが進行していくに連れてエイリアンとの少年との物語に引き込まれていく事になる。よくよく聴いてみるとこの曲というのはなるほどこのアルバムを象徴している。意図的に聞き手を煙に巻く様な底意地の悪さがある反面、曲が進んでいくとすぐに意外に優しいメロディに包まれている事に気づくのだ。そして曲の終盤のシンセサウンドはちょっと意図されたチープ感があって確かに(嘘くさい)エイリアンを思わせる。
謎めいたインタールードにまたもや混乱させられるのだが、すぐに(32秒後に)シングルカットされた「Sticky Drama」が開始される。調子の外れたような人口の声がぎこちなくメロディを歌い上げる始めると私は唸らざるを得なかった。これは確かに確かに人を惹き付ける電子音楽だった。
全編を通じて思った以上に(もっとドローン色が強いのだと思ってた、過去作はたしかにそうらしいのだが)、メロディアスである。この人の曲というのはとにかくひねた諧謔というか意地悪さがあって、曲のぶつ切りやあえて曲の真ん中で曲をぐちゃっとさせたりして、コラージュ感を出してくる。こちらがこれが未来?と思っていると「HAHAHA、悪い悪い」見たいに美麗なメロディをすっと出してくる。始めっから出せや!というと最早彼ではなくなってしまうのである。そしてコラージュがあるからこそ、メロディとそれ未満の透徹なフレーズが生きてくるのではと思っている。
音の使い方は巧みでドローンとした音、ぶつぶつとしたノイズ、グリッチノイズ、たしかに異質なものを集めてひとつの異質なものとして凝集させれうるでは確かなもので、コラージュ感は当然彼がいとしたものだ。美しいパートを聴けば、多彩な音が鳴っているのにまとまっているという台風の目の様な状況にはっと気がつくだろう。

というわけで流行っているのがどんなものかみてやるか…俺はひっかからねえぞとばかりに聴いてみたのだが、すごい!天才!とまんまと騙されている私がいるのだ。うーん。これは気持ちのよい体験です。
まだ聴いてない人は是非どうぞ。私は過去作が気になるのでどれか買ってみようと思います。

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