イギリスはブライトン生まれで現在はドイツ・ベルリンにて活動するJohn Cohenによるインダストリアルテクノユニットのミニアルバム。
2015年にRobot Elephant Recordsからリリースされた。
タイトル通り焦土としかいいようがない無慈悲なインダストリアル世界を提示した2014年発表の「Scorched」は衝撃だった。ボーカルが無い電子音楽でここまで凶暴な音楽を帆湯減できるのかと打ちのめされたものだった。しかし同時に発売した「Blood Forest」では一転してドリーミーでアンビエントな世界観を模索するという思考の多様性を魅せていた。そんな彼が2015年になってからは同じくRobot Elephant Recordsから「HYP30」、「Sun Copter」というEPを立て続けにリリース。「Blood Forest」方面をさらに突き詰めるという音楽活動に今は熱中しているようだ。前述の2枚に続いてリリースされた本作もほぼ同じベクトル上にあり、さらにその音楽性を進めた内容になっている。
こちらにのしかかるような極端に歪められた重低音ノイズはいかにもDead Fader節なんだが、そこにのっかるうわものに関しては音数の少ない余韻はあるが澄んだ音であってこの前者と後者の対比が独特の音世界を作り上げている。
どの曲でも中心にあるのは微妙なメロディなんだがあまり饒舌ではなくて、かすかなフレーズがひたすら反復される。どれも残響が意識され、ある程度の広さのある空間に放り出された音が余韻を残して消えていく様な儚さがあって、ここが好きだ。
その脆弱なフレーズを囲うのがお得意のインダストリアル要素なんだが、こうなってくると彼の独壇場というか、元々ノイズが上手いので、ミニマルさの中でも微妙に変化し続ける変幻自在さ(というかちょっとの居心地の悪さと言うか不穏さというか)がどの曲でも非常に活きて来ている。たしかにドリーミーなんだか、微妙にしみ込んでくるノイズが曲の雰囲気を刻一刻と変容させている。
インダストリアルさとアンビエント性が混ざり合わずに一体化した、というと変な表現なんだがこの音の共生関係が大変面白い。周りを囲う音は音量抑えめにしてあるから自然に粗野な音に挟まれた、フレーズが生きてくるという構造でアンビエントというには正直なところ音の数は多めなのだが、ある程度数のあるからこそ沁みてくる寂しさもあるものだなと感心。
個人的には1曲目がその方向性を一番分かりやすく突き詰めたもので白眉の出来かなと。
Dead Fader好きなら是非どうぞ。
ちなみにほぼ同時にTouchin'BassというレーベルからはDosage EPというインダストリアル路線の音源を出していてこちらもすこぶるカッコいい。ハードな路線が好みの方はチェックしてみてください。
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