このブログをくまなく読んでくださっている希有な人がもしいたらわかっていただけるかもしれないが、私はかのH.P.ラブクラフトが創出し、彼の周りの様々な作家陣が確固たるものにし、そして今なお拡張し続ける架空の神話体系クトゥルー(クトゥルフ)の愛好者である。
また、少々ニッチなメタルというジャンルのさらにニッチなサブジャンルの音楽を好んで聴く。デスメタルだとか、ブラックメタルだとか。
そんな訳でクトゥルーとデスメタルをくっつけたオーストラリアのバンドPortalは大好きである。音楽にクトゥルー神話を融合させる試みは他のバンドでもなされていると思うけど、彼らの完成度は群を抜いていると思う。
さて、そんなマニアックなバンドがまさかの来日となったら、いくら出不精でライブが苦手(人ごみが苦手)な私としてもチケットをとらざるを得ないのはおよそ必定のことであった。
9月の頭にイープラスに登録して買ったチケットは14番であった。私は一抹の不安を覚えた。お客さんは来るのだろうか…14人だけならそれは贅沢だが…
不安をよそに月日は矢のごとく過ぎさり、気づくと11月の末日。私は下北沢に足を向けたのだった。
18時30分開場、19時公園開始であるところ、19時少し前についた。お客の入りはそれなりだ。不安は杞憂に終わった。物販にははるまげ堂さんが出張で来ていた。私ははるまげ堂さんの通販でアナログの「Seepia」を買ったのがPortalの音源との出会いだったから何となく運命めいた偶然を感じてうれしかった。
19時ちょっとに日本のEndonからライブがスタート。
前にライブを見たことがあるんだけど、ドラム、ギターにノイズが2人、そしてボーカルという変則的なスタイル。悲鳴のようなハーシュノイズが鳴り響く中、客席の観客を押しのけてボーカルが登場。なんといってもこの坊主頭のガタイが異常に良いボーカルがバンドの顔であって、左右の2人が派手に動く中、体を左右に揺らすくらいでほぼ動かない。(中盤以降は結構動いてたけど)その目つきたるや尋常ではなく悪く、咆哮は動きもあって恐竜のようだ。高中低音の絶叫の使い分け、荒い息づかいとなかなか多彩だが、とにかく怖い。ノイズも相まってカオスの一言。前見たときよりかっこ良かった。
2番手は日本のCohol。
大好きなバンドなので初めてのライブが嬉しかった〜。
5弦ベースのメンバーは熊みたいな風貌だったと思うけど、襤褸切れで作った覆面をかぶっていて恐ろしさアップ。ライブ映えしてました。
始め音量がちょっと大人しいかな(Endonの後ってのもあったと思うけど)、中盤以降は気にならず。とても3人とは思えない音でギターとベースが交互に歌う、叫ぶ。演奏はかなりカッチリなんだけど、やっぱりCDとは違った暴力性があって、特にギターはかっこうよかった。ドラム(Coholはドラムが好き)も手数が多くてすごかった。1stアルバムから「変わらぬ誤解変わる嘘」を演奏してくれて、この曲が大好きなんで嬉しかった。
メタルバンドっぽくないものすごいアツいMCもちょっと戸惑ったけど、そのあまりの率直さに好感が持ててよかった。
3番目はPortal。fromオーストラリア!
この頃にはフロアは結構満員の用な感じ。
幕が上がってライブがスタートすると客が前にグワっと殺到。密度が偉いことに。
ボーカル以外は黒い衣装に黒い頭巾(メンバーによって微妙にデザインが違うことに気づいた。ベースのだぼっとして厚みのあるのが私の好みでした。)をかぶっていてさながら処刑人スタイル。恐ろしや。ボーカルはなんだかよくわからない格好でさらに恐ろしい。指がクトゥルーを思わせる触手になっていて大変格好よろしい。
多分これ。顔はヴェールで覆われているのだが、光の加減でちょっと輪郭が見える(ような気がしたんだけど)瞬間があって恐ろしかったっす。
メンバー全員背が高いんでステージ映えはすごかった。
んだが、ライブの方はさらにすげかった。はっきり異常なライブといっても良いと思う。
曲が塊のようなんだわ、音の。
ギターがギュラギュラギュラギリギリとリフを奏でるのだが、これがもうどうなっているのかわからん。8弦ギターで運指がとにかくヤバい。手が触手のようにフレット上を所狭しと動き回り、相当複雑なフレーズを弾きまくる。
ベースがギロギロリテロテロ、こちらも超指がフレットを動き回ること動き回ること。
ドラムはブラストで叩きまくるんだが、五月蝿いっちゃあすげー五月蝿いのだが、音がクリアで不思議と耳に心地よい。
はっきりいってカオスすぎてわからなかったのだが、アンサンブル自体はカッチリしていたんじゃなかろうか。というのも嵐のような曲が結構ッッドンという感じで切れるパートが結構あるんだけど、息がぴったり合って、美しかった。曲によってはミニマルなパートが挿入されていてそれはもう完全に異次元に連れて行かれた。
ボーカルは両手を上げる以外ほぼ不動で、当然MCいっさいなし。(「コンニチハ、トーキョー」とか言い出したらどうしようかちょっと不安だった。)恐らく曲のタイトルを始めにコールするくらい。CDと同じく、ドスのある深く息を吐き出すようなデス声スタイルで、低く低く叫ぶというまさに地獄のようなスタイル。
客の方も乗るに乗れず、思い思いに体を揺らしたり、頭を振ったりしていた。
Sunn o)))のライブにちょっと似ているかも。ただしこちらは音がとてつもない密度(そう!密度が半端無いんだよ!)でとんでもない速度で繰り出されているから、はっきりいってメタルのライブらしくない異常なフロアの状態になっていたと思う。
じゃあ退屈だったかというと、(少なくとも私は)まったくそんなことはなかった。
まさに異界の門が開かれたような世界に放り込まれて、恍惚としたような幸せな時間だった。
五月蝿いメタルでもこんなライブをするバンドがあるのかと本当に感心してしまった。
今回はこれにてツアーは終了してしまったが、再度の機会があればぜひ足を運んでいただきたい。
終演後メンバーが写真とってくれていて、今思えば一緒にとってもらえれば良かったなあ。せめて感想くらい伝えれば良かったわい。
というわけでお洒落な若者が集う下北沢にまさに地獄の釜が開いて異形のものたちが怪しい煙の向こう側にそのシルエットを見せたような、恐ろしい事態が11月の30日に突如出現したのだった。そこに立ち会えて本当に良かった。
本当に日本に来てくれてありがとうございます。
彼らを日本に呼んでくれたRoad to Hell Bookingさんにも超感謝。
やっはり、Portalご存知ですね。このポストさっき気ついてなかった!
返信削除>Jake Northeyさん
削除そうなんです、Portal好きなんです!