カナダ出身アメリカ在住の作家による犯罪小説で西部劇。
こちらの本も前々から気になっていたのだが、年末になって国内で様々な賞をとっていたので購入。アメリカでもブッカー賞の最終候補になってたりして25カ国で出版されているとのこと。
ちなみに日本での受賞歴はこちら。東京創元社のサイトから引用です。
*第2位『闘うベスト10 2013』
*第4位『このミステリーがすごい!2014年版』海外編
*第5位(新人賞第1位)『ミステリが読みたい!2014年版』海外編
*第10位『週刊文春 2013年ミステリーベスト10』海外編
作者はパトリック・デウィット(デヴィットではない)でこの彼にとっては2冊目の小説で一躍有名になったそうです。
西部開拓時代の少し前、アメリカはゴールドラッシュにわいていた。オレゴン州で殺し屋を営むシスターズ・ブラザーズの兄弟はボスの「提督」からとある山師を消すために甘煮乗りサンフランシスコを目指す。
シスターズ・ブラザーズとは何とも人を食ったようなタイトルだが、実際はチャーリーとイーライという2人の兄弟の名字がシスターズ。
兄のチャーリーは自信家で狡猾。ひどい酒飲みで粗野で人を利用することに長けている。
弟のイーライはデブ(縦にも横にもでかい)で、優しくて惚れっぽい。すぐ人に良いようにされてしまう正確だが、切れると見境が無い。
小説は弟イーライが語り手となって進みます。イーライはお人好しなところがあるからちょっととぼけたような趣があって結構笑っちゃうような場面もあるんだけど、やはり2人は殺し屋でしかもだまし討ちだって平気の平左でやるもんだから、そのとぼけた感じと凄惨な感じが相まってかなり独特な世界観になっている。
一つ面白いなと思うのは、このイーライという男は半ば殺しに飽き飽きしていやになっているんだけど、やっぱり骨の髄まで殺し屋であって、自分が思っている以上に普通の人間からかけ離れている。本人はそんな自覚は無いんだろうけど。つまり一般人の読者としては語り手の異常さが意図的にわかるようになっていて、そこが彼の独白とずれていてある種の面白さが産まれているように感じました。恐ろしくもあり、ちょっとかわいそうでもあります。
殺し屋の兄弟はターゲットを抹殺すべくサンフランシスコに向かう訳なんだけど、現代ならそれこそ飛行機でひとっ飛びだろうが、何と言っても開拓時代なんだから馬に乗ってテクテク旅することになる。ターゲットの山師に会うまでの道中でいろいろな人にあって、いろいろな事件が起こる。いわばロードムーヴィーみたいな作りになっている。
といっても粗野な2人なのだから必然的に大半の登場人物とは銃を手に剣呑な状態で渡り合っていくことになる訳で。2人の通った後には硝煙と血と死が残される訳であります。
一体旅の果てにイーライとチャーリーがどこにたどり着いたのか、ぜひ読んでいただきたいところです。
個人的にはこの話全体が寓話のように感じられました。具体的にこうこうこれの暗喩です、と断言できるのではないのですが。あえていうと人生の暗喩なんですが、そういった意味ではいかなる小説も人生の暗喩だと言って差し支えが無い訳ですから、ちょっとこの表現だと十分ではない。例えば因果応報だったり、盛者必衰だったりちょっとそういった東洋的な思想を感じさせるような作りになっております。
面白いのは楽しくドンパチやっていたと思ったら、なんだかとても渺茫としたところにたどり着いてしまったような、そんなはかないような切ないような、そんな読後感があります。こういった類いの犯罪小説にはちょっと無い感じに仕上がっている訳です。
本国ではコーマック・マッカーシーの小説との類似性も指摘されていたりするそうで、なかなか一筋縄では行かない苦い小説であることはわかっていただけるのではないかと。
しかし抜群に面白い小説であることは間違いないので、是非手に取っていただきたいと思う訳であります。
この記事を読んだらびっくりしました。
返信削除私もこの小説を半年前ぐらい気について、読みたいようになりましたけど、まだ半分ぐらい読中です。
でも、びっくりしたのはこんな小説が日本でも人気あることです。
まぁ、レビューありがとうございますね。 お互いにお口が似ているから、あなたにせっかくの書かれたブログを読むのが好きいです。
今年もよろしくね
>Jake Northeyさん
削除コメントどうもありがとうございます。
やっぱりマイナーだとは思うけど、好きな人たちがいるみたいで結構この手の本が日本でも出版されていてうれしい限りです。
ぜひ最後まで読んでください。きっと楽しめると思いますよ。
Jakeさんは外国の方だと思うんですけど、
私のブログを楽しく読んでいただけたらこんなに嬉しいことはないですね。
これからもマイペースに更新していきますので、よろしかったら読んでやってください。
また、Jakeさんのお勧めの本があったらぜひ教えてください。
今年もよろしくお願いいたします。
冬寂さん、
返信削除お返事が遅くなってごめんなさい。
実は、今日は、あなたのわざわざお書きになるブログを久しぶり読んでおりました。
最近、僕の日本語が下手糞の形となって、今、早速にお返事いたします
最後の長編小説を全く読んでしまったのは Seating Arrangements という米国人のMaggie Shippstedによる書かれた本です。けど、この本は日本語までまだ翻訳されてなさそうです。ごめんね!この無理なお勧めしで。
とにかく、お互いに音楽に同じ興味を持っているそうですね。もしかして、BorisやCoholやHeaven in her Armsをご存知でしょうか。この三つのバンドは日本人のバンドですが、この三つの中で一番外国でも人気あるのはBorisだと思います。
昨年の11月CoholはPortalというオーストラリアのバンドと日本にてライブしたんです。『ところで僕がオーストラリア人』。僕はPortal大好きで、そのライブ見に行ってきまして、はじめてみたのCoholに好きになったんです。 やっはりPortalはH.P.Lovecraftのテーマに影響されたデスメタルやります。
今月 、Heaven in her ArmsやCoholやBorisは三つのバンドで渋谷にてライブやるつもりです。 もしかして見に行くんですか? 実は、僕がもう切符を買っといたんですけど、行けるそうもなくなりました。 もし、あなたは行きたい場合、僕が切符を差し上げることですね。
それでは、またね。
次のポーストを楽しみに待っております!
>Jake Northeyさん
削除返信ありがとうございます!嬉しいです。
日本語とてもお上手ですね。母国語しかしゃべれない私からしたらすごいです。
「Seating Arrangements」は英語の説明を見るとおもしろそうですね。
邦訳されればすぐ読めるんですが。
勉強していつか英語の本が読めたらいいなとは思っています。
(実はそう思って以前にEdgar Alan Poeの英語で書かれている本を買いました。)
Boris、Cohol、hevean in her armsどのバンドも好きです、趣味が合いますね。
Cohol、hevean in her armsはスプリットのレビューをした記事があるのでよかったら読んでください。
PortalとCoholのライブは下北沢まで見に行きました!(ライブ中は覆面しているから断言できないけど多分)PortalのメンバーはH.P.Lovecraftの顔がついた上着を着ていてニヤリとしました。クトゥルー神話は大好きで結構見つけたら読んでますね。
今月の渋谷でのライブは全然気づきませんでした…
どれも好きなバンドなので見に行きたいですね。もしよろしかったらJakeさんが買った金額でチケットを引き取らせていただけたら嬉しいです!
引き続き記事は書いていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。
冬寂さん、
返信削除返信ありがとうございます。
この間、大雪が降ってきたため、お宅でのんびりすることして、多分ブログを書く時間たくさんありますよね!
もちろん、私はできるだけあなたによる書いたブログをお読みしたいんです。
ぜひ、そのEdgar Allan Poe本を頑張って読んでください!こういう話が好き僕にはちょと分かりにくいのですから、あまり英語をしゃべれないあなたにもちょっと分かりにくいこともあると思います。心配しなくていいね!
あっ、よかった、冬寂があのライブに見に行きたいなんて。チケットのことは、金曜日の夜まで東京にいるつもりので、今週のいつか都内のどこかあなたに渡すところで会ったほうがいいと思います。
よろしければ、待ち合わせを決まるために私にラインでご連絡いただけますか。
『jake.northey』 か 『ジェジェジェイク』 で探すと私のコンタクトを当たると思います
それでは、よろしくお願いします
>Jake Northeyさん
返信削除雪びっくりしましたね。のんびりできたもののあまり記事を投稿できなかったです。
『jake.northey』 『ジェジェジェイク』 で検索したのですが、見つけられず…
私の探し方がよくないのだと思うのですが。
私のLINEのIDは「hollowcave」です。お手数ですがJakeさんの方で検索していただけますでしょうか。