ele-phant
一番手はele-phant。2012年に結成された(今は)三人組のバンド。なんとこの日が解散ライブとのこと。ドラムとベース、それから選任ボーカルという変則的なバンド。ステージ前面フロアから見て左に構えるドラムセットが迫力がある。ギターレスだがことさら低音を強調するわけでもない。かといってベーシストが持つのは多弦(5本以上という意味で
)ベースではなくリッケンバッカースタイルの通常の4弦ベース。これでギター以上に豊かなメロディを奏でるのだ。アルペジオ、それから2本以上の弦を同時に鳴らしてコードも行けるし、ソロも大丈夫。リフは多様で音の種類も非常に豊富である。音だけ聞いたら普通にギターだななんて思ってしまう。ただし例えば高音のチョーキングのようなものはなかったような気がする。一風変わった演奏をするバンドなのだが、音の方がドゥームを基調としたサイケデリックロックといった趣。変則的なのは形だけで音の方は変態的というワードに逃げを打つ臆病さは微塵もなく、むしろ堂々としたロックンロールだ。日本語で綴られる歌詞がビンテージなドゥーム・リフが奏でるメロディライン上に曲線を描いていく。ことさら遅いというわけではないが、よくよく聴いていると地の鳴りが動いてその姿を変えていくのがわかる。生きた楽曲という感じでサイケデリックであるが、出しているのは轟音でしかもソリッドだ。思い切りの良いドラムが格好いい。記憶の忘れていくその過程を曲にするというコンセプトはなかなかないだろう。だって誰も知らない音ということになるからね。忘れていく過程だから。すでに忘れた、ではないところに美学を感じる。最後の最後に見れてよかった。この体験は忘れないようにしたい。
kowloon ghost syndicate
続いては東京のハードコアバンド。kowloon ghost syndicate。まず名前がカッコ良い。バンドのメンバーの方のインタビューなど、音より先にその他の情報が入ってきていて非常に気になっていたバンド。なかなか見る機会がなかったので個人的には非常に楽しみだった。ギタリスト二人に選任ボーカルの五人組。いわゆる激情というスタイルなのかなと思っていたのだが、実際に見て聴いて見ると結構それらとは異なる。
まず音がでかい。5人全員がフルボリュームで鳴らしているかのような轟音で耳がやられる。計算されたバランスなのだろうが、楽器陣がぶつかり合うので曲の判別はやや難しい。(これは私のいた位置も大いに関係あると思う。ライブハウスの音響はその他のバンドの演奏を聴けば問題ないことがわかる。)歌詞は日本語でなかなか聞き取れないが、ストリートにおけるタフさを強調するようなものではないだろう。確かに速度と音の数を落とすアンビエントなパートもあるし、つぶやくように歌詞を読むパートもあるのだが、それらは非常に短い。要するに冗長なパートが一切ない。一瞬でも早く飛び立ちたい、そんな性急な感じがある。懊悩や正義感がなるほど出発点なのかもしれないが、募る焦燥感が曲からナイーブさをほとんど拭い去ってしまっている感じがあって、それが病的で、むしろそれが激情というかエモバイオレンスとしては正しいのではと思ってしまう。肉体的なところは非常に肉体的でたまに入る低音ミュートのサウンドが混沌とした楽曲の中で異彩を放っていて格好良かった。大抵なんだこれ!ってわからなくなるのは良いものであるから、また見たい。
REDSHEER
トリは企画主REDSHEER。見るのはだいぶ久しぶりになってしまった。東京を拠点に活動する3人組のハードコアバンドである。個人的には激情という文脈で判断していたし、ある部分は確かにそうなのだろうが、独特な音を鳴らしているバンドで私はとても好きだ。
REDSHEERは忙しいバンドだ。やかましいバンドだが音の数が多いわけではない。速度も中速がメインだ。ただそれぞれの楽器陣が詰め込むアイディアが半端ない。1曲あたりのリフの種類の多さがわかりやすいが、構成も練られていてここが聞き所というところはその他の2つまたは声を入れて3つの楽器はぶつからないように抑制されている。逆に言えばそれぞれ個性があって、特に私はドラムのプレイがすごく好きだ。別にブラストを入れるわけではないが、実際の高さ的な意味で低くセッティングされたドラムから叩き出されるやや変則的なフレーズがたまらない。三者三様の個性のぶつかり合い、せめぎ合いがあってその切磋琢磨の間隙でなっている曲がREDSHEERの曲なんだという趣すらある。
この日思ったのは、REDSHEERはわかりやすさのないバンドだ。別に難解なわけではないが、わかりやすい必殺フレーズを(多分というか絶対)あえて使わない。激情のスタイルなら綺麗なアルペジオ(このバンドのアルペジオはなんか以上に反復的で病的である)や静寂と轟音のドラマティックな展開、浮遊感などだろうがそんなのは一切なし。殺伐としているが、かといってブラストを打つわけでも、陰惨さを過剰に演出するためのスラッジパートを入れるわけでもない。掴みやすいとっかかりがない。そういった意味でわかりやすくないのだけれど、そういうとっかかりを排除した楽曲は私はこのバンドにしかない、病的な円を感じてしまう。音が丸いというわけではなくてむしろ尖りすぎるほどに尖っているのだが、どこかに到達するような直線的なイメージではなく、病的な円を描いて沈み込んでいくような負の感情があって良いのだ。恨みつらみ逆恨み、なるほどそんな感情は含まれているのかもしれないがもっと多様だ。もっといろんな感情が溶け込んでいて、それが何か言い表すことができないのだけど、聞くたびに「それなんだよ!」と勝手にわかった気になってしまう。音楽性は違うけどToday is the Dayに通じるものがあるな!!と妙な納得感。この日もすごく良かった。
自転車漕いで帰宅。
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