2017年5月28日日曜日

Woe/Hope Attrition

アメリカ合衆国はニューヨーク州ブルックリンを拠点に活動するブラックメタルバンドの4thアルバム。
2017年にVendetta Recordsからリリースされた。
Woeは2007年にChris Griggのソロプロジェクトとしてスタート。その後バンド編成になり3枚のアルバムをリリース。前作「Withdrawal」が2013年発表なので4年ぶりの新作となる。Griggは中心人物なので不動だが、メンバーの変遷がまたあったようだ。
なんのきっかけが忘れたが私は前作のみ持っていてなかなか好きだったもので今作も買ってみた次第。

黎明期のドラスティックな出来事の多さで持って音楽性以上に”神秘性”(物語性)を獲得してきたのがブラックメタルなのかもしれないが、やはり一つのジャンルにはすぎないわけでプリミティブなそれから多様な変化を遂げてきた。カスカディアンの台頭やシューゲイザーとの交配を経て、「ブラッケンド」ブランドはよそのジャンルに結合し始めた。そんな中でWoeは割とプリミティブなブラックメタルの音楽性を受け継ぎつつ自分たちなりの音楽を模索しているバンドだなと思っていたが、今作を聞いてもやはりその印象。
基本的には前作からの延長線上にある内容で、デスメタル然としたボーカルの登場頻度が増えているので初めは驚くが、バックトラックは明らかにブラックメタルである。つまり基本トレモロが間断なく空間を埋めていくあのスタイル。歌にメロディアス性はほぼないが(たまにクリーンで歌い上げたりはする)、代わりにギターのリフがメロディアスであり、そのメロディというのもコールドで何か身悶えするような退廃的な陰鬱さがある。ギターの音の作り方も輪郭がざらついて毛羽立ったヒリヒリしたもので、重量感に変更していない。さすがにプリミティブブラックに比べると圧倒的に音質はクリアだが、基本はやはり始祖に習っている。曲の長さはだいたい5分から8分なので、少し長めな程度。そこにドラマ性を程よい長さで投入している。真性プリミティブだとミニマルの要素が色濃いが、このバンドはそこまで反復的ではない。緩急をつけた展開がある楽曲を披露するのだが、美学を追求する劇的なカスカディアン勢とは一線を画すスタイル。カスカディアンが冗長というのではないが、このバンドは余計なパートに時間を割かず、またポスト感漂う芸術性もほぼなし。あくまでもブラックメタルの武器を自分たちなりの解釈で曲に打ち込んでいる感じ。何と言ってもこのバンドの売りは惜しみないトレモロの嵐。そして突出したそのメロディセンスなのではなかろうか。本人たちもその自覚はあると思うんだけど、どの曲でもトレモロが楽しめる。速度を落とすパートではざらついたトレモロや怪しいクリーンボーカルを入れたり、雰囲気抜群。モノクロの色彩でなんとも寂寥とした風景画を描いていく。タイトルは「希望の減少」という意味らしく、非常に後ろ向きで正しいブラックメタルな世界観だと思う。

ブラックメタルの良いところが詰まっていていや〜ブラックメタルだな〜という音楽。プリミティブでありながらきちんとモダンでもあってこういう流れがあるということは嬉しい。メロくて陰鬱なトレモロがブラックメタルでしょ、という人は是非どうぞ。おすすめ。

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