2017年5月28日日曜日

Drawing Last Breath/Final Sacrfice

アメリカはフロリダ州のストレート・エッジハードコアバンドの1stアルバム。
2017年にCarry the Weight Recordsからリリースされた。
バンド名は「息をひきとる」という熟語から。
あまり情報がないバンドだが専任ボーカルにギター二本の5人組のバンドで2015年にデモを、1stEPを2016年にリリースしている。

だいたいどのジャンルでも雰囲気というか全体的な印象というのがあって、例えば音源のアートワークを見ると何かしらのジャンルかな?と想像がつくものなのだけど、この「Final Sacrfice」に関してはハードコアっぽくないな、というのが初めの印象。それで視聴して見ると音の方はもっと変わっていて驚いた。え〜と思ったけど気になって何回か聞いている自分に気がついたので買って見ることにした。
こってりしたジャケットは「メタル的だな〜」と思う人もいるだろうが、音の方もメタル的である。今時ハードコアにメタルの要素を持ち込むのは珍しくもないだろう。例えば重たい音の作り方は昨今のハードコアバンドでも当たり前のように導入されている。Integrityという歴史のあるバンドなんかはかなり大胆にメタルの要素をハードコアに持ち込んで結構びっくりしたものだ。このバンドはそう言った意味ではやり方としては(出来上がった音はあまり似てない)Integrityに似ている。メタル、それもメロディック・デスメタルの要素を大胆にハードコアに持ち込んでいる。普通は別ジャンルの音をいくらか溶かしてある程度時のジャンルの型に再整形するのが王道だろうが、このバンドに関してはメロデス要素をほぼピュアにハードコアのフォーマットに載せている。具体的にはギターで、とにかくクラシカルでメロディアス。いわゆる”クサい”と言われるような荘厳な高音を用いた単音フレーズを大胆に持ち込んでいる。ピロピロしたギターソロもある。ハードコアといえばタフさが売りなのでそう言ったメタルの要素とは水と油じゃないのかな?と思っていた自分にとってはこのバンド相当面白い。思うに変にハードコアにしなかったのが良いのでは。本当に切って貼り付けたみたい。こういうと借り物めいた表現の仕方だが、このバンドはその形式で出音はめちゃかっこいい。結果的に濃ゆいメタル要素を自家薬籠中にしてハードコアと両立させている。メロデス成分を除いて聴いて見るとびっくりするほど地の部分はハードコアである。いわゆるニュースクールなメタリックな音を、ぶっきらぼうな音節に区切って中速でザクザク刻んでいく。音的にはシンプルなのでここにメロデスのフォーマットがすっと載っちゃうのだ。すごい。吐き捨て型のボーカルももちろんハードコアで、知らずに形成された先入観には違和感なのだが、この違和感がクセになる。
調べて見るとDrawing Last Breath以前にもこう言ったスタイルはハードコアの世界でもちゃんとあったらしく、その系譜にあるのがこのバンドみたい。私はこのスタイルにこの音源で出会ったから初体験の面白さがあったわけだ。初めに会えたのがこのバンドでよかったなと思う。非常にカッコ良いから。

ガッチリしたハードコアの屋台骨にメロデスの荘厳さがどっしり構えてさながら堅牢な砦のよう。ハードであるというハードコアの楽しさは少しも減じてない。メロデス好きだけどハードコアはあまり聴いたことがないぞ、という人はこの音源ハマったりするのでは。どうだろ。逆の経路でも大丈夫だと思うんだけど、個人的には。色物なんてとんでもないかっこいいハードコアなんで是非どうぞ。

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