2017年5月20日土曜日

HEXIS/Tando Ashanti

デンマークはコペンハーゲンのブラッケンド・ハードコアバンドの2ndアルバム。
2017年にHalo of Fliesなどからリリースされた。
2010年に結成されたバンドで日本を含む様々な国でライブをやっている。どうも最近ボーカルのFilip以外のメンバーが全て脱退してしまったようだ。

Celeste系のトレモロギターを壁のように聳え立たせるいわゆるブラッケンド・ハードコアなのだろう。トレモロといっても低音も使う、そして使っている音自体が分厚いということで絶妙なメロディアスさ、退廃的な耽美さ、コールドな儚さといったプリミティブなブラックメタルからの影響は色濃いといっても結構音自体は別物になっているなという印象。異形のハイブリッドといった黎明期は既に過ぎ、なんという名称が正しいのかはわからないがだいたいジャンルとしては確立した感はある。この間来日も果たしたスウェーデンのThis Gift is a Curseともかぶるところはある音なのだけど、結構印象が違う。向こうはあくまでもハードコアを基調としていて同じような音を使っても曲は結構派手で動きがある。テンポチェンジやリフの多様さといった要因が働いているのだと思う。一方このHEXISというのは音は似ているもののそういったハードコア的なカタルシスが意図的に削除されている曲をやっている。一つはテンポが遅い。ギターとベースの音の数は多いので、これでドラムが早いビートを刻めば爽快感が出そうなものなのだが、あいにくとそういった優しは持ち合わせてないらしく遅々としたとまではいかないものの淡々としたリズムでビートを刻んでいく。こうなるとトレモロギターは露骨に重い、重すぎる。速度が遅いという意味ではスラッジ/ドゥームなのだが、ドゥームなら粘りのあるリフを曲の中心に据えたり、スラッジでも鈍足リフの間に息継ぎする暇があるもの。しかしHEXISは神経症的に隙間を丁寧に埋めていくので結果的に非常に息苦しい音の密室が出来上がっている。曲によってはアンビエントパートを入れているが、美麗なアルペジオが出てくるわけでもなく、ひたすら殺伐として不穏。神経症的な音の密度からの解放という意味では不思議に癒される仕組みになっている。
Celesteなんかと違ってギターの音がクリアではなく、輪郭が曖昧に汚されてブワブワしているのでこの密室の壁がどうも伸縮していて狭まっているような感じがする。音で壁は作れないからこれは妄想なのだが、不安は感染するみたいな感じで非常に面白い。音楽的にはDownfall of GaiaやRorcalと似ているのだが、こちらはそれらのバンドにある長い尺を活かしたドラマ性を減退させてより肉体的な印象。こうなるとジャケットの黒と白、ナイフを握りしめた俺とお前の関係性、というアートワークが非常にしっくりくる。

ブラッケンドは音の種類の形容詞に過ぎないが、やっている音楽も呪い属性のようないやらしさがあってそういった意味でも大変に黒い。この手のバンドが好きは人は是非どうぞ。

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