2017年1月9日月曜日

Kamaiyah/A Good Night in the Ghetto

アメリカはカリフォルニア州オークランドのラッパーの1stアルバム。(正確にはミックステープということらしい。)
2016年に自主リリースされた。この音源は彼女のホームページで無料でDLできる。
1995年生まれ若干21歳の女性ラッパーでDrakeと共演したりして知名度を上げているそうな。

私は女性ラッパーというとぱっと思いつくのはApaniくらい。学生の時に友達が貸してくれたnujabesの音源に客演していてその流れで聴いてた。それはもう10年以上前だからそれ以来きちんんと女性ラッパーというのを聴いていなかった。
別に女性ラッパーに苦手意識があるわけではないのだが、このカマイヤー(と読む)さんに関しては結構女性っぽくないラップを披露している。まずは声質が女性にしては低くてラップの方もどっしりかまえている。トラックメイカーは自身ではないようだが(プロデューサー=トラックメイカーなのか判然としないので間違っているかも)、声と同じく硬質にかっちり作られたタイトな楽曲はジェンダーレスだ。(もしかしてラップが男性優位の世界だとしたら男性的ということになるのかもしれないが。)女性らしいしっとりした、悩ましい(本人に悩みがある、もしくは逆に男性にとって扇情的であるという意味で)要素はほぼ感じられない。タイトルに「ゲットー」とある通り、いわゆるギャングスタ要素のあるタフなラップを披露しているのだろう。とにかく全体的なイメージは”強靭さ”だ。やはり貧困とそこから抜け出す(=リッチになる)手段としてビジネス(=ラップ)があるという、成り上がりの構図があるような気がする。ただインタールードに女友達との電話風の楽曲を挟んできたりと、ちょっとした小ネタで女性の持ち味を出しているのは面白いし、したたかだと思う。誰も彼女のラップを聴いて女々しいとは言わないだろう。(メロウな楽曲はいくつかあるし、どれも素晴らしい。)
どうも90年代を強くリスペクトしているらしく(MVにもそのセンスが現れているとか)音使いは今風のものとは一線を画す、結構それらしいサウンドだ。それらしいとはつまり少しチープに感じられるくらいテクノ感がある。最近よく聴いているRTJに比べるとただしトラックはかなり音の数が少ない。ぶっといマシンメイドなビートに薄い上物がふわっと乗っているだけで、あとはKamaiyahのラップが取り仕切っていく。彼女のラップはとにかく硬質で、最近はやり(だと思うのだが)ややオフビートな発声の仕方もあり、派手な飛び道具は用いず、ただただスキルのみで安定したラップを途切れることなく飄々と披露する。小節を抑えつつ、縛りのあるルールを飛び出して聞こえるくらい自由だ。この二律背反はヒップホップの醍醐味の一つではなかろうか。

強さが声に滲み出て空間を支配するくらい凄みがある。ただ全体的にはゆったり、飄々としているこのちょっとしたしなやかな複雑さはひょっとしたら女性らしさゆえなのかもしれない。文句なしにかっこいい。ヒップホップ聴きたいという人は是非どうぞ。非常にオススメ。

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