2016年にRitual Recordsからリリースされた。1994年に発表された唯一のアルバムである「IN」(再発にあたりリマスタリングをかけている)を母体にデモ音源やコンピレーションに提供した曲を網羅したものでほぼディスコグラフィーといってもいいのかもしれない。Erodedは4人組のバンドでそれぞれの音源で若干の変遷があるようだが、基本的にはボーカリスト(時にベーシストも兼務)、ギタリスト、ドラマーの3人は不動で中核を担っていたようだ。ボーカリストの山本さんはこのバンドの解散の後、状況しグラインドコアバンド324を結成することになる。
私はそんな情報全く知らずふらりと入ったdiskunionでこの音源が流れているのを「かっこいいな」と思って購入した。やはり実店舗のCD屋さんは良いものですね。
今から20年以上前の作品ということになるのだが(再発前の音源を聴いていないので推測だが)しっかりとしたリマスタリングにより音質は全く古びて聞こえない。重厚なメタリックサウンドが聞ける。重々しいドラム、模糊とした低音で唸る力強いベース、そして重厚な音色の金属質なギターは鋭さとほんのかすかに意図的な暴れが音作りに意識されていてスウェディッシュとまではいかないもののやや糜爛な雰囲気をたたえていて非常にかっこいい。ボーカルは完全にデス声というよりはややパンキッシュな響きが残る力強いもので、ハードコアな荒々しさに無骨な華がある。
音に重厚さがあるので中速以下でもかっこいい。バンド側もそんなことをわかっていたのか同一の曲の中でもかなりのテンポチェンジが挟まれていてブラストする疾走するもさることながら、ややドゥーミィなパートも魅力的。ピュアなグラインドコアにしては長めの曲も凝った展開と演出(例えばギターソロにこだわりがあるみたいで非常に叙情的なものをが結構な頻度で登場する)で薄めることなく濃密かつ重厚に尺を埋めている。ボーカルに一切メロディを入れない潔さだが、ギターがそれを補ってあまりあるほどデスメタルの枠の中で(時にそれをはみ出すのでというくらい)縦横に弾きまくる。前述のギターソロもそうだが、リフ一つとっても漆黒のメタルリフ以外にも中音〜高音まで贅沢にぶち込んだ色彩豊かなリフを披露する。インスト曲である「IN」を聞けばその豊かさがわかる。私はメロデスをほぼ聞かないから別物として考えて欲しいのだが、Erodedは非常にメロディックなデスメタルだなと思った。
そんな要素がありつつもこのバンドの中核は何と言ってもグラインドコアといって間違いのない重さと速さを伴った音の塊だろう。再発にあたってのメンバーがコメントを寄せているのだが、ドラマーの武田さんの言によるとブラストビート(この言葉も当時はなかったみたい。)を叩くにあたり相当なご苦労をされたようで、挫けそうになりながらもなんとか片足ブラストを体得されたようだ。武田さんも書いているように20年経ったいまではグラインドの命だったブラストビートはグラインドコアというジャンルの外でも活躍して結果珍しくはないものになっているわけだけど、黎明期に見よう見まねで挑戦した人がいるからこそだなと本当に思う。いわば一歩以上先を行く海外のグラインドコアに日本の岡山(という東京以外)のバンドが挑戦状を叩きつけたようなもので、そんな気持ちがドラムだけじゃない他のパートにも表れているよう。そういった意味でもグラインドコア/デスメタルの枠をはみ出すオリジナリティ、それも珍奇なものという以上にグラインド/デスの精神に敬意を払った音楽で20年以上たったいまでも聴き手を感動させるそのアツさにただただ平伏するばかり。
爆音で聴くのが最高な音楽。血の通いまくった熱血グラインドコア。聴き手の血も湧き立たせる。ぜひどうぞ。
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