2016年にEpic Recordsからリリースされた。
A Tribe Called Questは1985年に結成され5枚目のアルバムを1998年にリリースしたのち解散。その後も何度かの再結成はあったものの新作の制作はなかった。2015年に作成が開始され、翌2016年に18年ぶりの新作としてリリースされた。制作開始からリリースするまでの間にメンバーの一人、Phife Dawgが逝去。メンバーらはこのアルバムをA Tribe Called Questの最終作としている。ビルボードのチャートで1位を獲得した。
Kanye Wast、Kendrick Lammarをはじめとしてこのアルバムには多数のアーティストが参加している。
私は大学生の時に友達にアルバムを貸してもらってたまにきいてるくらいだけど新作ということで買ってみた。
基本的にジャズを元ネタにしたような生き生きとしたバックトラックがゆったり流れ、そこに自由奔放なラップが乗る。音楽的にはゆったりしてもそこはもちろんヒップホップ。歌詞の内容はメッセージ性に富んでいるし、アルバムを通して聞いてみれば温かい雰囲気の中にも緊張感が感じ取れるだろう。
今作でもそんな雰囲気を継承している。サンプリングと生音両方利用している(参加ミュージシャン達には楽器演奏者もいるので少なくとも完全サンプリングではないはず。)トラックは非常に有機的で耳元で演奏されているように生々しい。どれも素材の音を活かして特徴的だが全体的なトラックは抑えられたトーンで構成されている。さすがの熟練といった感じでソリッドかつシンプルだが、実は同じ曲の中でも結構展開があってラップとともに盛り上げているのがわかる。またラップに変わってバックで非常にエモーショナルなメロディをやはり抑え気味で流したりする。「The Killing Season」はストリングスが非常にメロく、そしてエモい。他にもピアノはもちろん、ブルージィナギターをかなり大胆に使ったりと非常に多彩。そういった意味でもきっと集大成的な作品なのだろう。
何と言ってもQ-tipの声質はちょっと独特でバックトラックもそうだけど聞いたらすぐわかる。鼻にかかった声はやんちゃな子供のようで(Q-tipは46歳)、あたたくちょっと湿っていて、そしてバネが仕込まれているように自由で伸びやかだ。ちょっと悪っぽいけど、すっとこっちの内側に入り込んでしまうような魅力がある。もちろん他のメンバーも負けじと前に出てくるし、客演も豪華でどんどん出てきては曲に花を添えていく。
リズムと呼吸で構成されたこのアルバムは非常に”リアル”だ。これはヒップホップでは重要な要素で、銃で撃ち合うような日常も実際にはストリートで起きているのだからギャングスタラップだってリアルだろう。しかし一般的な日本人の聞き手にとってはちょっと非日常かもしれない。(そしてそこがまた日本人にとっての魅力の一つでもある。私は創作物に非日常性を求めるのでそこはよくわかる。)A Tribe Called Questは日常の華やかさに気づかせてくれるという意味で優しく聴きやすい。アルバムを聞けば切磋琢磨するスキルがその優しさの背後にきっと見て取れるはず。そういった意味では武士的な意味で非常にストイックでかっこいい。気になった人は是非どうぞ。
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