今年のライブ初めは下北沢Shelterから。
ということで日本のブラッケンド・ハードコアバンドisolateと東京オールドスクールデスメタルバンドCoffinsの2マンライブが真昼間から開催されるということで行ってきた。
両バンドともにライブを見たことがあるのだけど今回は両バンド60分、合計120分という長い尺でのライブなのでじっくりその音楽を堪能できるということで期待に胸が膨らむ。
音楽性は違うのだけれど仲良しということで実現した今回のライブ。この日のためにT-シャツも作ったというバンドの気合の入れよう。
思えばShelterに前に来たのはマイナーリーグの昼ライブだったからまたお昼に来たことになるね。あまり奥行きがないんだけど、ステージが横に広くて結構好き。
今日は遅刻しないで11時40分くらいに到着。お昼だけどお客さんは結構入っている。Neurosisの「Sun That Never Sets」がSEでテンション上がる。
isolate
1番手は東京ブラッケンド・ハードコアバンドisolate。今年で結成10周年!
激情ハードコアをブラッケンドさせた強烈な音楽を演奏しているバンドで私は目下最新音源「ホームシック」、アルバム「ヒビノコト」、「Limitation」を持っている。前回目にしたライブは圧倒されて終わってしまったので今日はじっくり見てやろうと。
テレビの砂嵐を思わせる壁のようなノイズから幕を開け、一転雪崩のように曲が展開されていく。叩きまくるドラム。途切れることなくトレモロリフを奏でる2本のギター。音はもちろん動きも常軌を逸しているベース。そして手話のような身振り、派手なアクションを伴う絶叫ボーカル。音源に比べて圧倒的にハードコアだ。ブラッケンドという形容詞が吹き飛ぶくらいのハードコアだ。まずブラックというには音が強烈すぎる。真性ブラックに見られる退廃的な美しさ、儚さは壁のように塗り込められたノイジーなリフにかき消されている。音的には真っ黒だがメタルの金属質さはほぼなく、ささくれた音が大音量で耳に突き刺さってくる。音を放射しつつも反対にぐうううーーっと内向きに巻き込んで落ち込んでいくような、そんな暗い属性を持っている。ボーカルは日本語で歌っているのだが、バックの演奏がうるさくて歌詞がほとんど断片的にしか聞き取れない。血管がブチ切れそうな形相で演奏に負けじと絶叫している。本当ならこんなことしなくて良いのだ。アコースティックギターに合わせて普通に歌えば良いのだから。それを大出力のアンプでこうもノイズの洪水のようにしてしまうのだから完全にどうかしている。だがそのたまに聞こえてくる絶叫が胸に突き刺さってくる。思い出して欲しいのだが彼らの最新アルバムのタイトルは「ヒビノコト」なのだ。少なくとも私の日常はこの音楽のように劇的ではないが、それでも灰色の日常の中で浮かび上がってくる感情の色がある。それがisolateの異常に激しく、荒涼とした曲の中にビビッドに感じられる。胸に湧き上がってくるのは高揚とそしてジンと沁みる感動だ。この感覚はRedsheerを観るときにも感じる。自分が言葉にできなかった、形にできなかった様々な感情とそれにひもづく出来事が胸に去来してくる。最高だ。私はもう憧れを持ってステージを呆然と見ていた。素晴らしかった。
isolateが激情ハードコアなのかはわからないが、もしそうなら激情というのは内省とそれが導く日常からの逸脱だ。ここにはFromとToの動きがある。(逆にハナから完全に異界的な情景を作り出す世界観のはっきりしたメタルはある意味安定していると言える。)目的地が完全な異界だったとしても、出発点は紛れもなく日常である。よく「〜の向こう側」というがisolateはハードコアの向こう側に行ききってはいない。異常に激しく、病的だが、常に葛藤がある。片足は現実に踏みとどまっている。いわば正気と狂気への逸脱の相克(=移動がある)が曲にあって私はとにかくこのせめぎ合いに心が震える。灰色の日常を過ごす私は、そして逸脱としての狂気に憧憬を感じる私は「わかる」と思ってしまう。isolateには特にそう感じてしまう。真面目故に(私は不真面目極まりないんだけど)悩み、揺れる感情が見て取れる。
楽しいのは楽しいけど、それよりもっと心が動かされた。実はなかなかこういうのはないんだ。
Coffins
2番手はオールドスクールデスメタルを20年鳴らし続けるCoffins。
isolateとは全く違う音楽性でこちらはもう完全に異常者の地獄風景である。(各音源のアート枠のような病的で恐ろしい異世界。)
ところが曲が始まると本当に楽しい。明らかにフロアの盛り上がりが凄まじい。もはやデスメタル界のアイドルか!と感じてしまう。もう曲が止まらない限り無限に首が振れる、体を揺らせる。音的には完全にドロドロしたデスメタルだ。isolateより黒さで言ったら黒い。まさにデスメタルなのだが、なぜこうも乗れるのか?楽しい雰囲気の中で必死こいて考えて見た。
まず圧倒的にリズムがかっちりしている。ドラムのSatoshiさんはタッパを生かした剛腕ドラムでしっかりビートを刻んでいく。曲のスピードもあって手数は多くないが一音一音がでかくて(他の演奏陣が黙っている時のドラムの一撃の衝撃たるや)、くっきりしている。前面にズラッと並べられたシンバルのクラッシュが印象的で、バスドラとクラッシュに合わせて体を振れば良いのだ!また基本的にはこのドラム、つまりビートが安定している(つまりカオティックに目まぐるしく展開を変えていかない)のですごく乗りやすい!とはいえ曲中ここぞというときにはテンポチェンジや転調をしてくるし、何よりドラムの叩き方に曲ごとにバリエーションがあってマンネリさは皆無。個人的には中盤の3拍子(だと思うんだけど違ったらすみません)の曲はカッコよかったな。頭で3拍子取っていると曲も裏切らずにひたすら気持ち良かった。
この精緻なビートにデスメタリックなリフが乗るんだけど60分聞いていると実は刻みまくるメタリックなリフの他にも中音での気持ち悪いデスなトレモロフレーズや、ハードコアばりに引き倒していくようなリフもあることに気づく。バリエーションがすごい。ソロやワウ(ワウはひょっとしてベースかも)もあるし、ボーカルが乗らないパートは扇情的で高揚感が半端ない。
いかつい音楽性だがここまでキャッチーなのはただただすごい。キャッチーといっても歌メロや日和ったわかりやすさがあるわけじゃない。徹頭徹尾真面目にオールドスクールデスメタルを追求し続けた20年の成果が曲に表れているんだと思う。贅沢な60分間でした。
終演後予約者限定受付だったT-シャツが解放されたのでちゃっかりゲット。
Coffinsのベースのあたけさんが「気軽に(ライブに)遊びに来てね」といっていたのが印象的だった。今年はもっとライブに遊びに行こう。
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