2016年に至福千年音盤からリリースされた。
裸絵札は2005年に結成されたグループで長らくラッパーとトラックメイカー/DJの二人で活動していたが、3rdアルバムリリース「孕」を2012年にリリースしたのちギタリストが加入して3人組になっている、はず。ちなみにグループ名は「はだかえふだ」と読む。
自分は「孕」を持っているが、ヒップホップというジャンルでくくっていいのかわからない面白い音楽性をやっていて結構好きだ。「dance noiz vandalism」を標榜する彼らはクラブシーンだけでなくハードコアシーンとも接近しているように、その音楽と活動は垣根なしに幅広い。
「ノイズ」とあるくらいでヒップホップというにはまずトラックが非常にうるさい。サンプリングもしているのかもしれないが、結構一から組み立てているのではなかろうか。ジャズネタをループなんて伝統は糞食らえとばかりにノイジーで攻撃的な電子音でトラックが構成されている。バキバキに武装されたビートはブレイクビーツ生まれのブレイクコアを経由した(アーメンビートも飛び出してくる)ぶっといものでヒップホップにしては圧倒的に手数も多い。そこにノイズ成分多めの上物が乗っかる。ぶった切ったピアノのサンプリングを用いるのは前作からの流れだがおしゃれさは皆無でむしろ不穏。メタリックなギターが入ることでミクスチャー感も増しているが、ロックかというとちょっと難しい。実はヒップホップでもロックでもなくてインダストリアルなダンスサウンドというのが裸絵札の音を形容する上ではしっくりくる気がする。前作でも薄々感じていたがトラックが間違いなくかっこいい。完全にアングラ思考の音だが、暗闇でギラギラ光る蛍光色のような陽性の響があって、ヒップホップとロックを飲み込みつつも非常に”踊れる”音に仕上がっている。手数が強調されたビートは原始的な響きで持って気分を盛り上げてくるし、これもヒップホップの伝統では珍しいメロディアスさが程よい塩梅(インストトラックだとここが前面に押し出されてかっこいい)でまぶされている。ミニマルというよりは縦横無尽に展開するのも個人的には非常に良い。
そこにラップが乗っかるわけだが、このラップも伝統を意に介さない型破りのものでヤンキー的なオラついた感じに下品なリリックを乗せるえげつのないものでうるさいトラックに全く引けを取らない。生々しいセックスネタをややニヒルに吐き出していくのだが、あまりに具体的なので得体のしてないどっぷり感がある。(前作「孕」もそうだったが割と赤裸々な性がテーマのグループなのかもしれない。)リリックはセックスまみれだがトラックは無慈悲なマシーンって感じなので聴きやすいのも非常に良いと思う。トラックまでエロくされたら正直ちょっときついかもしれない。
ギラギラ派手で下品というと「The大阪」(大阪の人は皆下品ってわけじゃなくて上品ぶらない、くらいの意味でお願いします。)という感じでかっこいい。Vampilliaも大阪だが、きっちりしている印象の東京と違ってとにかくあふれるエネルギーを型破りなやり方でぶちまける、みたいなのがあって非常にワクワクする。
個人的にはトラックのかっこよさがもろに出るインスト曲も多めで大満足な内容。
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