2016年10月22日土曜日

The Kilimanjaro Darkjazz Ensemble/Mutations

オランダはユトレヒトのダークジャズバンドのEP。
2009年にAd Noiseamからリリースされた。私はこのバンドが好きでいくつか音源を持っているのだが、すでに解散済みということもあってなかなか集めるのが大変。2016年にドイツのDenovali Recordsから再発されるということで購入した。手っ取り早く聞きたかったのでデジタル版を購入したが、CDでもアナログでもカセットでも良いのでマテリアルで欲しくなっている。

中心メンバーにBong-Raとしてブレイクコアのジャンルで活躍するJason Kohnenがいる。彼はベースとプログラミングを担当しているようだ。もともと彼きっかけでこのバンドを知ったんだっけな。もうおぼえていないが。このバンドにはブレイクコアらしさは皆無。バンド名がその音楽をよく表現しているが、暗いジャズを演奏するバンド。どのくらい暗いのかというと、ジャズといっても色々あるのだろうが、私の頭に浮かぶのは即興要素の強い、ドラム、ベース、ピアノ、あとはトランペットなどの管楽器でかなり激しくも楽しい音楽というイメージがあるけど、このバンドに関しては楽器のメンツというスタートラインは確かにジャズなのだろうが、その音の出し方は全然違う。全てが抑えられていて、静かだ。速度も極めてゆっくりしているし、曲によってはドラムがリズムを作っていなかったりする。ジャズというと踊れたりするイメージだけど、全然踊れる感じはしない。わかりやすく派手なメロディラインもない。オシャレというにはだいぶ陰鬱すぎる。内にこもったような音楽で、個人的には夜霧のようだ。明け方近くに足元にふわふわと巻きついてくる。思わず驚いて足をぶらぶら振ってしまうような小さい驚きと、それから別にじっとしててもいいじゃんととわかってリラックスする感じ。足を止めて目を閉じる。そうしていくと霧がその存在感を増していき、目を閉じている間にすっっぽりと全身を包んでしまっているような、そんな感じの音楽だ。暗い音楽というとメタルやハードコアなどの音楽だとその苛烈な攻撃性で持って「俺VSオマエ」という対立構造になってどんどん陰惨になっていくが(そういうの大好き)、このバンドは内向きにゆっくり沈んでいく、まさにダウンワードスパイラル。ninはひたすら自己嫌悪に落ち込んでいったのだが、こちらはもっとナチュラルだ。自然現象をバンドアンサンブルで持って写し取ろう試みにも感じられる。暗いというのはつまりその写しにかかるフィルターのようなものかもしれない。
Bong-Raらしさというわけではないが、比較的人造的なビートがオーガニックな上物と混じり合う2曲目「Munchen」。そしてラスト「Avian Lung」は「Seneca」(私が一番好きな曲)の別バージョンで初めて聞いたときは本当テンション上がってしまった。こちらは歌が排除されているのだが、その分曲自体の良さを存分に楽しむことができる。

儚いが非常に饒舌な音楽だ。ただそれを日常的な言葉で翻訳するのが大変難しい。あなたの気持ちを文字にすることは非常に困難だが、だからと言って存在しないわけではない。そういった意味では非常に感情的だ。今作も本当かっこいい。是非どうぞ。

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