2016年10月31日月曜日

GUEVNNA/HEART OF EVIL

日本は東京のロックバンドの1stアルバム。
2016年に3LAことLongLegsLongArms Recordsから発売された。
バンド名は「ゲヴンナ」と読む。2011年にIron MonkeyとBongzillaが好きな人という条件でメンバーが召集されて結成。その後EPやスプリット音源をリリースしてからの今回のフルアルバム。私はこの音源を聴くのが初めて。
とにかくこのペキンパーのインタビューを読んでいただくとこのバンドの大体のことがわかるのではなかろうか。非常に面白くまた手っ取り早くバンドの情報を得ることができる。
非常にこだわりを持ったバンドでデジタル販売はやらない。現物のアートワークや装丁には非常に強いこだわりがあるが、歌詞は非公開。その代わりに曲ごとのイメージを外部のアーティストに描いてもらっているというちょっと尋常じゃなさ。曲があってからのアートワークだからこれは販売物として考えたときは時間もお金もかかりすぎるのでは?と思う。3LAはデジタルにも着手しつつ現物にもこだわり続けるレーベルで、限定マーチやライブとの連動などデジタルとアナログ双方を活かしつついろいろなことをやっている印象があるので、そういった意味では単にやっている音楽以上にミュージシャンとレーベル側でシンパシーがあったのだろうなと思わせる。今作のアートワークは北海道のANÜSTESが担当。カバーアートに加えて全8曲分のバラバラの!正方形の厚紙(素材にもこだわったに違いない)にびっしりと印刷されている。ガリガリした筆致で描かれて直線と曲線に対象が美しくも病的だ。いわゆるアウトサイダーアートっぽい暴力的(で時に会えての稚拙な)なアートを掲げた前述のスラッジバンドに通じるところと、そことは明確に違うところ双方が伺えて面白い。都市の絵が印象的で、退廃的(伝統的)でありつつも密閉感というよりは広がりがある(革新的)イメージ。私はせっかくだからポスターも買ったんだけどこれも非常にかっこ良い。飾りたいので額欲しい。
音の方もそういったアートワークにあっていて、伝統的なスラッジに敬意を払いつつも独自のスタイルで音を鳴らしている。

前述のインタビューではもう「ドゥームやスラッジじゃない」と明確に言い切ってしまっている通りIron MonkeyとBongzillaというスタート地点を考えると結構アウトプットのイメージに驚く。スラッジといったら完全にアウトサイダーで病的でアルコールとタバコと違法薬物に汚染され、アメリカ南部の泥濘のようにズルズルしており、歌詞は暴力と死と厭世観に支配されているイメージが強く、音の方もそんな世界感を反映してか如何にもこうにも暴力的で暗くて、首を絞められるような閉塞感に満ちている。GUEVNNAに関していえば低音が強調された(そんなに低音強調していないといっているが普通のバンドからしたらやっぱよくでてる方だと思う。)音でゆったりめの速度はなるほどスラッジ的だが、どちらかというと伸びやかなリフや饒舌なソロを繰り出してくるギターはロックンロール的だ。ストーナーなんかは明確にヴィンテージなロックと近似性があると思うけど、そんな印象が強い。グルーヴィで首だけでなく腰が揺れるリズム感。隙間が意識されている音作りだと思っており、音圧に関しても低音を強調しつつも物理的な壁のような力自慢さはないし、演奏もスラッジ故の贅沢な時間の使い方をしており音の密度は程よいレベルでだから聞いているこちらとしては呼吸がしやすい。常に気を張っていないといけないバンドも大好きだが、どこか弛緩して聞けるバンドも好きだ。スラッジというかなり特殊なジャンルでこういった視点でやるというのはなかなか珍しいのでは。
陽性のスラッジというとあまり具体的なバンド名が出てこないが、近しいストーナーというジャンルでQueens of the Stone Ageが思い浮かぶけど、しゃがれ声で喚くボーカルもあってかそこまでのメジャー感やQOSTAの最近のおしゃれな感じもないかな。(便利な言葉だけど)新しい可能性という意味ではオルタナティブなスラッジという感じだろうか。レーベルその他では「アーバン」という形容詞で持って語られているみたい。
タイトルトラックの「Heart of Evil」はとにかくかっこよくて4つ打ちのイントロがこれから何か楽しいことがはじめるよ、という期待感に満ちていて良い。ちょっと怪しい何か、というアングラ感がある。あとは速度に緩急があって疾走感が楽しめる「Daybringer」が好き。
伝統的なスラッジが好きな人はこのジャンルの新しい可能性を知ることができると思うし、楽しいロックが好きな人も是非どうぞ。オススメ。

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