2016年10月10日月曜日

Indian/The Unquiet Sky

アメリカはイリノイ州シカゴのスラッジ/ドゥームメタルバンドの1stアルバム。
2005年にSeventh Rule Recordingsからリリースされた。
ノイズとヘイトに満ちたスラッジを演奏するバンドで私は2ndアルバム「Guiltless」から聴き始め、3rd「From All Purity」で激はまり。後追いという感じで音源を集めていて、一応この音源でフルアルバムでは一通りそろえた事になる。2つのEPをまとめた「Slights And Abuse / The Sycophant」と一緒にレーベルに注文したのだが、なぜか「Slights And Abuse / The Sycophant」が2枚届いた。なんてこった。「おまえにはまだはやい」という事だろう。スラッジなのに速いとはどういうことだという訳でこちらは遅ればせながらデジタルで購入。バンドは非常に残念ながら解散済み、なのだが今調べたら10月11日にライブの予定がある。再結成なら感涙ものに嬉しいのだが、スケジュールにはこの1本しかないのでひょっとしたら単発の復活ライブかもしれない。そのまま再結成して欲しいものです。

汚いスラッジにハーシュノイズをのせるという単純かつ凶悪なサウンド様式はすでにこの1stから確立されており、のっけからノイズをぶちまける4分半でこの時点でろくでもない音楽をこれから聴く事になるという良い予感が漂ってくる。一体このスラッジ+ノイズという手法は昨今では例えばThe BodyやFull of Hellなんかが披露しており、それぞれ日本盤が出るくらいこの極東でも注目されている位の流行のスタイルなのだろうが、それらに先んじてやっているのがこのIndianではなかろうか。(勿論実際にはこのバンド以前、同時期にもそういったスタイルのバンドがいたのだろうが、あくどい音という意味ではやはりなかなか里程標になってしかるべきではと考えてしまうのは私のこのバンドへの愛着故だろうか。流行に乗ってビッグネームにとはならずに解散してしまっているのも報われない功労者めいてなんだか悲しい。)
五月蝿いという意味では大音量低音スラッジにひゅんひゅんごうごう唸るノイズ音をのせるというやり方は、いかにもこってりドロドロラーメンに卵とじのカツ煮をのせた様なくどさで、もういいっすよとなってしまう事もあるだろうが、このバンドの上手い事はバンドサウンドを結構シンプルにまとめてくる事だ。ドゥームというよりはかなり明確にスラッジというカテゴリーに属する音楽性も選択している事もあって、地獄のようにズルズルしているのだが例えばElectric Wizardの様なヴィンテージロックからの影響を思わせる重厚かつテクニカルなリフなんかはあまり用いず、偏差値の低い一撃の重たいリフを反復していく。そういった意味ではよくNIrvanaやSoundgardenのコピーを良くするThouに通じる”オルタナティブ感”がある。しゃがれた声で憎しみをまき散らす歌、というよりうなり声・がなり声・叫び声にまったくポップさがない反面、印象的なリフでもって(やや)親しみを増しているのかもしれない。まあでもあんまり親しみはないかな...ある種の聴きやすさと言うか人を惹き付ける音楽性といえば良いかもしれない。(それもあんまりない様な気がしてきた。)つまりこのバンドも引き算の美学で持って音を削ぎ落とし、「空いた隙間、そこに美学があるね」という小綺麗でオシャレな哲学にクソをぶちまけるように(汚くて失礼)ノイズをねじ込んでくるという底意地の悪さ。スラッジというのは何が良いってその負の感情である。停滞、そねみ、ねたみ、あえての稚拙なアートワーク(いつもIron Monkeyが真っ先に思い浮かぶ)に表現される露悪趣味、そんな底意地の悪さが魅力だろう。この駄目さが特定の人間には「大丈夫、そばにいるよ」と耳元でささやいてくるポップソングに埋めきれない心の隙間を埋めてくれるのだ。実体を伴わない(誰が俺のそばにいてくれるのだ?)同じ空虚なことばなら「せっかくなら俺はこちらを選ぶぜ」とばかりにひねこびた悪言に耳を貸すのである。全くどうかしていますよ、こいつらは。

という訳で一部の人にはバキバキ心に突き刺さる事間違い無し。大変よろしかった。この手の音が好きな人は是非。オススメ。

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