アメリカの作家によるファンタジー小説。
さてコナンです。ロバート・E・ハワードはかのラブクラフトのお弟子さん(正確には違うのかもしれないですが)というイメージもあって「黒の碑」やクトゥルーもののアンソロジーでその物語に触れてその魅力を楽しんだもの。そしてハワードというとやはりこのコナンものが著名で「剣と魔法」のヒロイック・ファンタジーというのはこの一連のコナンシリーズから始まったという事になっているから文学的な歴史から見ても極めて重要な作品である事は明白。(この英雄王コナンから名前を借りたドゥームメタルバンドもありますね。)アーノルド・シュワルツネッガー主演で映像化された映画も有名。かくいう私も小学生の頃午後のロードショーで見たもの。ちょっと刺激的なシーンもあってドキドキした思い出が。
興味はあるのだけど「剣と魔法」ファンタジーには全く知見が無くて、よもうよもうと思って後回しにしていたんですが、このたびようやっと重い腰を上げて購入。ちなみに何故2巻からかというとすでに1巻が売り切れていたからなのでした…
全部で5編収録されていおり、後に(きっと)英雄王となるはずのコナンも物語によって傭兵だったりならず者集団の長だったりとまだまだ第一線でしのぎを削る一兵士といった趣。黒く切りそろえた総髪に燃える様な青い瞳、盛り上がった筋肉は鋼鉄のよう、手足は長くしなやか、学は無いものの野生の勘は異常に鋭く弁は立ち戦場では指揮官顔負けの采配、大食漢で酒を浴びるように飲む。目上のものに対しても物怖じする事無く、自分の命の窮地でも一切ひるまない男。というまさに男の中の男。これでもかという魅力にあふれた男の一つの理想像なのかも。
ともするとこんなヤツはいないよ、と冷めてしまう様な造形だがこのコナンという男、豪放磊落という事がぴったりで不思議と好感を持てるから不思議で、なんといってもここがしっかりしているから物語が面白い。例えばコナンは英雄の多分に漏れず好色。物語には必ずと言っていいほど美女が登場するのだが、コナンは彼女たちに魅力を感じつつも決して力ずくで意のままにする様なことはない。意外に紳士。じゃあ良いやつかというと決してそうでもない。自分の命を救ってくれた恩人であるならず者集団の長をあっさりと排斥してしまったりする(ただし殺しはしない)苛烈さを持っている。要するに乱世の時代の寵児の様なもので生命力というものがもの凄い。清濁織り交ぜたその躍動する生命に、現代人の私たちが強烈に当てられてしまう。思うにタダの善人ならきっとそこまで好意はいただけないだろうと思う。
そんな男が長剣でもって悪漢ども、罪人どもに加えて、魑魅魍魎どももばっさばっさきっていく。は虫類めいたフリークス、そして鋼鉄の体を持つ異なる次元からおりて来た邪神までもその腕で立ち向かっていく。文字通りの死体の山と血の川を築いていく。コナンに負けず劣らず生命力に満ちあふれた野蛮な世界、主人公を凌駕するくらい魅力的なのがこのハワードの書く架空のハイボリア世界だろう。冒頭の地図を見ただけでワクワクしてくる。地図のほとんどのが未知の未開の世界で、謎があり、その背後には口にするのも恐ろしい名状しがたいものがうずくまっている。ここはラブクラフトも感嘆するのも頷ける闇の領域である。
荒野に剣戟がこだまし、うめき声と血がほとばしる熱い小説。あっという間に読んだ。とりあえず現状買える分は読むつもり。
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