イギリスのテクノミュージシャンのベストアルバム。
2015年にBlackest Ever Blackからリリースされた。
私が購入したのは12曲収録されたデジタル版。(8曲収録のレコードもあるそうな。)よそ様の2015年ベストに入っていたのを切っ掛けに購入。
RegisことKarl O'Connorは1990年代初頭から活動しているミュージシャン/プロデューサーでレーベルを運営していたりもするようだ。私はこの音源で初めて彼の音楽を聴いた。色の濃すぎる赤と青が印象的なジャケットだ。
ベストアルバムだが次作の曲は勿論他のミュージシャンの曲のリミックスも収録されている。私は唯一Vatican Shadowだけは名前を知っていて音源を持っている。(Prurientの別名義である。)
私は機械っぽい音は何でもテクノだな、とひとくくりしまうくらいの人間だが、勿論(往々にして間違っている事も考慮に入れても)その範疇には色んな音楽があるものだ。このRegisという男がならすのは流行とは無縁の無骨で暗いものである。基本はビート主体なのだが、例えばなぞりやすいメロディや突出した音使いなどの派手さはない。
金属質的な硬質さが全体を覆っていて、たとえばドローンなどの模糊とした芸術性とは明確に一線を画す。徹底的にミニマルで音の数もそこまで多くないから、極端な言い方をすれば地味という形容詞もある程度当てはまるかもしれない。もっと言えば暗い、潜行する様な内省的な雰囲気をたたえている。ノイズを効果的に用いているが、その使い方はとても繊細で、目を引く分ともすれば曲自体をただの”ノイズ”でしかないものに落とさない。しっかりとその手綱を握って精緻でカッチリした曲作りをする印象。細かい音使いがキラリと光り、例えばミニマルな曲でも後ろの方で儚い追加の音が次第にその勢力を拡大していく事で、微妙に曲が進行するに従いその形を変えていく。あれ?と思うと曲が終わってしまったりして、中々どうして天の邪鬼めいた印象もある。
幻想譚を書くなら確固たる言葉で書かねばとかの澁澤龍彦さんはおっしゃったそうだが、このアルバムに収録されている音はどれも硬質でハードな音、現実的に力を持っている音で構成されているが、ミニマルさもあって暗いトンネルとなってとても不思議な世界に導いてくれるようだ。
とにかく「Blood Witness」がカッコいい。バージョン違いで2曲分収録されているがどちらも甲乙付けがたくかっこいい。ということは曲は勿論、その素材となる音の作り自体が良いのだろうと思う。
一見すると異様さに驚愕する様な無愛想さだが、よくよく聴いてみるとその精緻さに驚くアルバム。ベストってこともあってきっと入門編にも良いのではと。
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