2013年9月15日日曜日

nine inch nails/Hesitation Marks

2009年に活動を休止したアメリカのバンドの復帰作となる8枚目のアルバム。
2013年にNull Corporationという耳慣れないレーベルからリリース。
私が買ったのは日本版ではなくて2枚組の本のように装丁されているデラックス版。
一貫した公式ナンバリングであるhaloは28である。

非常にビッグなバンドだからご存知の方も多いと思うが、業界のカリスマトレント・レズナー率いるバンド。今回は彼とアラン・モウルダー、アッティカス・ロスといったおなじみの面々に加えてダスティン・モズレー、ジュン・ムラカワ(音楽や映画のクレジットに日系人の名前を見つけると嬉しくなるのは私だけではないはず。)といった面子と組んで作ったようだ。ビルボードで初登場3位というからすごいね。

アルバムの発売に先立ちシングル「Come Back Haunted」が公開されたのが6月頃?恥ずかしながら公開されてから知って超吃驚した。iTunesで買って聴いた。

ここでちょっとした思い出話。
今でも覚えているのだが、中学生の頃友人と原宿に行って恐らくレコファンで「The Fragile」の輸入版を買った。当時Marilyn Mansonを聴いていてバンドのプロデューサーであったトレントのバンドということで興味を持って購入したんだと思う。
CDプレイヤーとMDプレイヤーでもって聴いたんだけど、始めは兎に角全然分かんなくて困った。全然よくねえな、と思ったのではなく、なんだか良く分からなかった。音の数が多すぎてなんだか分かんない。シングルカットもされた「We are in this Together」だけはかっこいいと思って繰り返し聞いていた。
で、何かきっかけがあった訳ではないのだが気づいたらどっぷりハマってた。全曲アホほど繰り返し聴いた。過去の音源も買ったりレンタルしたりして集めた。(「closure」を買いに西新宿のブート(も扱っているCD)屋にいったりもしたなー。)どれも好きだが、一番はやっぱり「The Fragile」。高校生になって、大学生になってもことあるごとに聴いてたし、今もたまに聴く。多分人生で一番沢山聴いたアルバムだと思う。
というわけで何がいいたいかというとnine inch nailsは私にとってちょっと特別なバンドなのである。思春期にドストライクだったから思い入れがあって、以来私は呪われたように暗い曲が詰まったCDやらレコードやらを今に至るまで集めるようになった。

だからまあ活動休止を経てリリースされた「Come Back Haunted」を聴いたときは吃驚したよね。その格好よさに痺れたよね。アルバムのリリースに「これはひょっとしてひょっとするんじゃねえの」と期待も高まった訳だ。(ちなみに「With Teeth」も「Year Zero」も好きであるよ。)

そして待ちに待った8枚目のアルバムは私の手元に届いた。
まずは今までとの音の違いに驚いた。
ninといえばインダストリアル。でロック。インダストリアル・ロックだ。特徴的な機械音。そしてギターを始めとするバンドアンサンブルの融合と。
今作もバンドアンサンブルは勿論ありあり。だが、使い方が前ほど派手じゃない。(曲のスタイルが)The ロックではない。
電子音が、それもビートがかなり前に出ている。具体的にいうとドラムとベースの音。
昔は生っぽかった(実際ドラムを叩いていたと思うし)けど、今回はもうこりゃ機械ですな。多分今の技術だったらデジタルでアナログの質感をほぼ再現できるはずなんだけど、トレントは意図的にデジタルだとはっきり分かるように使っている。ロックというよりはテクノっぽく聴こえる。一音一音が結構しっかりしているものの、細かく反復的である。ちょっとミニマルっぽいのかな?曲の展開はそんなことないんだけど。

ただよく聴くけどなるほどこれはどこまでもninだと気づく。何より歌が曲の中心にある。ストイックでいるけど聴きやすさを意識して作られている。ちょっと暗めの内省的な曲調。てこてこしたようなリズム。妙に金属的なギター音。どぅーむ!って感じの独特の音は健在で嬉しい。「Satellite」なんかはは特に作り方や音のそのものが昔ながらの彼らっぽいと思う。よくよく聴いていると音の数の豊富さに驚く、変な音がいっぱい入っている。妙に民族音楽用なステップや跳ねるようなリズム。ううむ、これは確かにnine inch nailsじゃないか。
聴けば聴くほど格好いいな!「Various Methods of Escape」「Running」「In Two」は本と素晴らしい。
音作りはかなりまじめ。かっちりしている。ninはかなり幻想的な音楽である反面酩酊的な音楽ではないのかもしれないと個人的には思う。トレントはまじめな性格なのかな。
しかしさすがに「Everything」は驚いた。なんじゃこれ!なんか私の中では「散歩行こう」ってイメージ。なんていうのだろうな。こういう雰囲気の曲聴いたことあるんだけどなんていったらいいのか分かんない。

久しぶりの、そしてもうでないんじゃないかという予想を裏切って発売された彼らのアルバムだが、私は素直に楽しめました。し、これからも聴くんだろうなと思います。
確かに「The Fragile」の徹底的な暗さはない。でも苦しくないのに苦しい振りをされるのも嫌だ。このアルバムは何となく素直さが見え隠れするようで、曲の持つ楽しさがすっと入ってくる。これが今のnine inch nailsなんだな、と思った。そしてそれが楽しめてよかったと思う。大好きなバンドの新作に素直に感動できて私はとても幸せだ。
素晴らしいアルバムなので音楽好きの皆様には是非聴いてほしいと思います。
いやー嬉しいな。

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