2013年9月28日土曜日

Gnaw/This Face

GnawはGnawでもモーリスさんの舌を引っこ抜く方ではない、元Khanateのねっとりボーカルアラン・ドゥービンが中心になっているバンドの1stアルバム。
2009年にConspiracy Recordsからリリースされた。
実は近々次のアルバムがリリースされるらしいのだが、Khanate大好きな割にはそういえば聴いてなかったぞ、ということで買ってみた。

アランも含めて5人組のバンド(このアルバム発表時は4人だったようだ。)。メンバーの一人は日本人のおじさんです。
なかなかにダンディな感じ。

さて音の方はというとまあKhanateがあれだったしドゥームメタルだろうな〜と何となく思っていたのですが、ふたを開けてみればこれがまたろくでもないノイズでした。
全体的な曲調は遅いのでドゥームの要素はあるし、バンド体制だからビートはドラムが刻み、ベースがうねり、ギターが乗ってくるのだが、所謂インダストリアルなノイズが大胆にフィーチュアされているので通常のドゥームメタルバンドを期待していると裏切られることになる。
ノイズはハーシュなのだが、所謂一ジャンルとしてのハーシュノイズのような混沌性はバンドアンサンブルとボーカルが乗っかってくることである程度軽減されている。ただこのボーカルがまた一筋縄でいかない。Khanateはそのたぐいまれな遅さでもって(他にも魅力は沢山ありますが、)あのジャンルの一つの頂点になった訳なのだが、個人的にはアラン・ドゥービンのボーカルもすごかった。デス声ともイービルな金切り声とも違う。引き延ばしたような、悲鳴のような、明らかに過剰な要素を持った何とも不快な叫び声であった。このボーカルの要素で持ってトーチャー(拷問)スラッジと呼ばれたのではとも思っている。
さてこのバンドでもその不快性は遺憾なく発揮されている。元々は彼のサイドプロジェクトだったそうだからボーカルの占める割合が多いのもうなずける。しゃがれている割に妙にねっとりした叫び声がノイズをバックにわめきまくる。滑舌も良くない。鬼気迫る。必死である。Khanateでも聴けたあの「シィ〜〜」という感じの恨みのこもったつぶやきというかささやきも入っていてとても満足!

演奏の方はリフがないので、全体的にもことしている。ギターもそうっちゃあそうなのだが、この種のノイズは音が波になっていて切れ目なく連続している。だからはっきりとしたメタルのリフに楽しみを見いだしている人にとっては自分がどこにいるのか分からないこのスタイルは戸惑いを覚えるかもしれない。だがまるで渦巻きのようにぐるぐるとらわれるような感覚はこれはこれでたまらない。がつんがつんとしたビートから、ギュギュワした中音ノイズ、高音はぴよぴよしていて飛び道具的な面白さがある。大音量で聴くとけっこうハマる。
アランの声は結構ノイズだから、ヒューマンノイズとマシーンノイズが見事に融合してもはやどこを切ってもノイズでしかない音楽になっております。

というわけでKhanateのファンのあなたなら、音の種類はちょっと異なるものの、似たような不快性を持つこのバンドはきっと気に入ると思う。
なかなかマニアックなのだが是非聴いてみていただきたい。
新しいアルバムも楽しみです。
↓なんといってもこの曲が格好いい。結構ポップじゃない?

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