2013年9月22日日曜日

ジェームズ・ロリンズ/マギの聖骨

アメリカの獣医師でもある作家の長編。
「アイス・ハント」を読んで面白かったので、全世界で1300万部という有名なシグマ・フォース・シリーズの第1作目となるこの本を手に取ってみた。
竹書房さんからリリースされております。そういやあまり買ったことない出版社ですな。

ドイツのケルン大聖堂で謎の組織にミサ中に参加者が生きたまま感電させられて殺され、マギの聖骨とされるキリスト教の秘宝が奪われた。
高等教育を施し科学者に仕立て上げた軍人によって組織された米国国防総省内の秘密組織シグマ・フォース。シグマの一員グレイソン・ピアースはチームのリーダーとしてヴァチカンと協力して事件の捜査にあたることになる。事件の背後には中世から連綿と続くカトリック系の秘密結社ドラゴンコートとシグマと敵対する国家的犯罪組織ギルドの影が…
マギの聖骨とはなんなのか?シグマは謎を追って全世界を駆け巡る。

というお話なのだが、この話も「アイス・ハント」と同様きわめて視覚的に書かれていて映画を見ているように情景が眼前に浮かぶ。
派手なアクション、恋愛、家族との確執に加えて初期キリスト教の秘宝と謎、世界を牛耳ろうとする秘密結社とくれば、男の子にはたまらないのではなかろうか。
この物語が面白いのはなんといってもインディジョーンズを彷彿とさせる宗教的な歴史に絡んだ伝奇的要素をもつ冒険活劇にリアルな見地に基づく科学の要素を取り込んだことであると思う。一見不可解に見える出来事が読者にばーんと提示されて、物語の異様さも相まって単に「謎の力」となるところを、後から科学的な証拠で実体を暴くというスタイルで謎の提示とその解決というカタルシスが巧妙に取り込まれている。
主人公サイドをただの優れた兵士でなくて科学者にしたことで、説明・解説がとてもスムーズなのがいいね。
はっきりいって「えー」と思うような不思議さもあるのだけど、全部実際の科学的な根拠に基づいているそうだ。恐らくロリンズさんは相当な研究マニアで、オフィシャルサイトで作品内で取り扱っている科学要素を解説しているとのことです。

さてマギといえばキリストが生まれると遥か東方からその生誕を祝って祝福に訪れた3人の賢人であるというのはキリスト教徒ではない私でも知っている。キリスト教にまつわる話は日本人は大好きで色々な作品に取り込まれてきた。エヴァンゲリオンなんかも大胆に設定を取り入れて大人気を博したと思う。
原書の神がかった言い伝えはいわば神秘的且つ超常的なオカルトさがその売りの一つであると思うのだけど、その謎の究明というのはそれだけで人の好奇心をかきたるキャッチーさがある。
そんなオカルト要素に前述の科学的な究明の要素を組み合わせたら面白くない訳がない。
妙に変な結論を付けて謎を曖昧なままうやむやにしたりしないところも、読者としてはすっきりしてグッド。

という訳で超楽しく読めたんだけど、ちょっとだけ苦言をば。
この本原題は「Map of Bones」で直訳すれば「骨の地図」。その名の通りマギの聖骨の謎を追って世界中を駆け回る訳なのだが、敵対する組織と次のヒントをゴールに追いかけっこするんだよね。シグマは科学者であると同時に優れた兵士である訳なんだけど、敵とぶつかると結構追いつめられてしまうことが多い。まあ、追いつめられて絶体絶命!華麗に脱出というのが面白さの一つなのだけど、あまりにもヒント見つけた!敵に見つかった!人質を取られて手も足も出ない!なんかのきっかけで窮地を脱する!という流れが繰り返されるから、それなら人員を補充すればいいのに・・・と思ってしまった。
勿論内通者の存在がちらついているので、本部に対しても箝口令を敷くのはいいんだけど、次の目標地点が敵にも味方にもはっきりしていることが少なくとも1回はあったと思うので、そのタイミングでは応援を派遣しても良かったのかなあと思った。まあそうなるとぎりぎりの緊迫感がなくなってしまうのも分からなくはないんだけど…

とまあちょっと疑問がないこともないのだが、基本的には大変面白く読めました。
現在は2作目の「ナチの亡霊」を読んでいる真っ最中だ!
という訳で退屈な毎日に飽き飽きした!刺激がねえ!エンタメな話が読みたいよ!という諸兄には文句なしでオススメだよ。

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