2016年7月31日日曜日

Madvillain/Madvillainy

アメリカのヒップホップグループの1stアルバム。
2004年にStones Throw Recordsからリリースされた。
何と言ってもこの印象的なアートワークが目を引く。ヒップホップに全然詳しくない私でも知っているくらい。勿論中身の音もあって名盤と称される事も多いのではなかろうか。
何となく気になっていたのだがBandcampで購入できることに気づいて買ってみた。
Madvillainは2002年MF DOOMとMadlibの2人によって結成された。特徴的な音でそのあまりに時代に迎合しない音楽性でもって発表当時は異質なものだったとか。(「狂気」と称されたともある。)2人ともMCとプロデュース両方を勤めているようで、MF DOOMの方がなんとも不思議なマスクを付けている。アートワークになっているのも彼。よくよく見てみると近代的というよりは原始的な作りになっていて、普段着でもこれを付けているものだから面白い。ヒップホップには純然たるファッション性があるけど、だからこういった特異な格好をする人は珍しいのでは。

気になる音楽性は(恐らく)サンプリングを主体に作られた堅実な作り。ヒップホップフリークに対してはイカレた音でも門外漢の私には全然まともに聴こえた。(私は後追いで世間に評価されてから聴いているから、勿論この私の評価は卑怯なものであるが。)元ネタは膨大なのだろうが、恐らくジャズやソウルがその主軸となっているのではと思う。ただこれに関しては本当に何とも言えない。出来上がった音は多少まともに表現する事が出来ると思うが、それらは少なくともそれらの片鱗を持っているように私には思える。(慎重になりすぎる故になんとも回りくどい感想になってしまい申し訳ないです。)ドラムは勿論、ベースやピアノホーン、アコーディオンなどのラインは非常に生々しく、まさに生音の用な迫力。逆に分かりやすい電子音やノイズなどのテクノロジーは表層状ほとんど出る幕がなく、全体的には生音で表現され、程よく抑えられたミニマルなトラックがあり、曲によってはそこに流れる様なラップが乗る。主役の2人だけでなく、多彩なゲストを迎えたラップも大変魅力的だが、インストもそれなりに多く音の研究家、探求者たろうという2人の首魁の思惑は見て取れる。
彼らの音の探求とはじゃあどういったものだろうか。
このアルバムには22の曲が収められているが演奏時間はトータルで46分。1曲あたりは平均するとだいたい2分ちょっとで、これはジャンルを問わず一般のポップスに比べると明らかに短い。それから彼らの曲にはフックというかわかりやすいサビはほぼ含まれない。MCは次々と登場しては詩を述べるようにラップを披露し、そして去っていく。私は英語は解さないのだが、どうも歌詞も相当何回というか直接的な表現はないようだ。obscureと評されたりしている。ここら辺が「狂気」という評価をくだされた由縁の一つであろう。映画からとって来た様な大胆で唐突なサンプリングもやはりアングラ臭が強い。(ここらへんはメタルとかもそうかも。)
思うに前衛的な音楽を作るのに手っ取り早いのは真逆に走れば良い。伝統をことごとく無視してやる訳だが、こうなると果たしてそれはそのジャンルの音なのだろうか?という問題が生じてくる訳で、そこをいくとこのMF DOOMとMadlibの2人の作り出す音は紛うことなきヒップホップである。彼らは自分たちの流儀のヒップホップを伝統に則り作ったのではあるまいか。だから私の様な無責任なリスナーには彼らの音楽はカッコいいヒップホップなのだ。反抗のための反抗というのもへそ曲がりなクリエイターにはあるのだろうが、どちらかというと無邪気に好きを突き詰めた様な伸びやかさがある音だと思った。

このMVも作られている「Accordion」という曲はそんな彼らの魅力が本当にわずか2分に込められていて、サビもないのだが、アコーディオンの哀愁のある音に導かれてぽつぽつ水滴にように流れ落ちてくるラップが非常にかっこ良い。比喩じゃなく本当に何回もリピートして聴いてしまう。
カッコいいヒップホップを探している人は是非どうぞ。音楽好きならヒップホップに詳しくなくてもハマるんじゃないかと。私はそうでした。オススメ。

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