2016年7月18日月曜日

Vatican Shadow/Media in the Service of Terror

アメリカのノイズアーティストによるアルバム。例によってた作のため今作が一対何枚目のアルバムなのかは分からない。活動拠点はロサンジェルスとニューヨークとの事。
2016年に自身のレーベルHospital Productionsからリリースされた。
Prurientを始め様々な名義で精力的に活動するDominick Fernowによる(恐らく)一人ユニット。彼がPrurient名義で今年リリースした「Unknown Rains」はとにかく素晴らしい出来だった。こちらの変名は知っており、今作の印象的なアートワークが気になっていたが何となくスルーしていたが、ヘドホン屋さんの2016年上半期ベストにランクインしていて聴いてみたらかっこ良かったので購入した。

Vatican ShadowだとRegisのアルバムにリミックスが入っていたのを聴いたことがあるくらい。Dominickは実質Pruirent名義を全体から見たらほんのちょっと聴いているだけだから、なんとなくノイズなんだろうなという先入観があったのだが、実際この音源を聴いてみると全く印象の異なる音楽をやっていてビックリした。
ハーシュなノイズ成分はほぼ皆無といっても良いのではなかろうか。特に前述の新作ではドローン的な手法でもって訴えかけてくる、美麗なノイズが溢れ出すという作風でもって、ほぼほぼビートという概念がなかった。一方こちらのアルバムでは緻密なビートがその根底をなしている。5曲目など曲によってはドローン成分もあるのだが基本は確固たるビートが明確なリズムと規則性を構築している。そのビートというのも例えば極端に歪ませたものであったり、極端に手数の多いのもの、極端にテンポや拍子を変えていくものではなくて、割と生々しい音がくっきりとそして極めて規則的に列をなすように空間を埋めていく。そのうえにDominickがお手製のノイズをびゃーーーっとぶちまける、という事には全然ならなくて、Prurientから比べると極めて大人しい音使いで、地味に津に非常に細かく音を追加していく。丁寧にそっとそっと追加される音はなにかのパーツと言った趣でそれ自体は、例えば分かりやすいメロディや印象的なフレーズにはなり得ないくらいの地味さ。Vatican Shadowは少なくともこの音源では徹底的なミニマルさを追求しているように思える。それも感情の一遍すら入り込まない様な冷徹でソリッドなヤツだ。ただし使っている音は金属的ではないからインダストリアルの雰囲気はそんなに感じられない。夢みがちさや幻惑的な浮遊感もない。ひたすら無骨に刻んでいく。しかしこれが不思議ともの凄く気持ちがよい。ある種の反復がもたらすという催眠性をこの音楽も有しているのか知らないが、沈み込むように曲の世界に没頭できる。

Dominick先生の引き算の美学の様な音楽で、前述のように大分印象が違うもので驚いてしまったがこちらも非常にかっこ良い。個人的には「Unknown Rains」もとても良かったけど、それと甲乙付け難い。非常にオススメ。ちなみにBoomkatでデジタル版が買えますよ。

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